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Trinitasシリーズ

Bar ロックハート 「思い出のジョニー」

作者: 愛山 雄町

 トリア大陸のとある街にある一軒のバー。

 そこには様々な客が訪れる。そんな客たちの他愛の無いエピソード。


 Trinitasシリーズ「ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~2」発売を記念して、Trinitasシリーズの設定を使ったスピンオフ短編をお届けします!

 とある街の小さな路地。

 同じような石造りの家屋が立ち並ぶ狭い路地。L字型に曲がった、その先にある風雨にさらされながらも重厚さを失わない無骨な木製の扉。

 扉の横には注意していなければ見逃すほど小さな木のプレート。そこにはこう書かれていた。

「バー ロックハート」


 夏至祭が終わって間もない七月のある日、私ロバート・ラドフォードはいつもの席、一番奥の席でギムレットをゆっくりと味わっている。いつも通り、私が一番の客で七席しかないカウンターには誰も座っていない。とは言っても、まだ午後六時の鐘が鳴ったところで、外は明るく茜色に染まり始めてもいない。

 常連客である“親方”が来るまで貸し切りになる。親方は悪い人ではないが、ここの落ち着いた雰囲気を味わいたい時には賑やか過ぎる。

 若いマスターがグラスを磨く中、外の喧騒とは無縁のこの場所でゆっくりとギムレットを傾けていく。


 一杯目を飲み切り、二杯目を何にしようかと悩んでいたところで、ドアベルのカランカランという音が響く。

「いらっしゃいませ」というマスターの声に、初老の男性が「久しぶりだね」と落ち着いた低い声で応える。

 その男性は六十に差し掛かったくらいの年齢で、仕立ての良い服から裕福な商人か、大手の工房の経営者に見えた。


 マスターが「何になさいますか?」と尋ねると、「ジョニーのレッドをシングルで」と慣れた感じでオーダーする。

 私は僅かに違和感を覚えた。

 ジョニーのレッド、すなわち、ウェルバーンのスコッチ、“ジョニー・ウォーター”の“レッドラベル”だが、高級酒とは言い難く、この紳士に相応しい酒とは思えなかったのだ。

 ジョニー・ウォーターはウェルバーンを含む“ローランド”と呼ばれる地域の代表的なブレンデッド・ウィスキーだ。その中でもランクがあり、上からブルーラベル、ブラックラベル、レッドラベルとなっている。他にもゴールドやグリーンといったラベルがあるが、定番はその三種類になる。

 そのレッドラベルだが、“ジョニー・ウォーター”を手軽に楽しんでもらいたいと作られたものだ。ウェルバーンでは若手の鍛冶師が最初に飲むスコッチと言われ、二十代前半まで若い世代が好んで飲む大衆酒というイメージが強い。

 一方のブルーラベルは最高のブレンデッド・ウィスキーを目指して作られ、ハイランドのラスモアやスレイサイドの名酒と並び、非常に高い評価を受けているウィスキーだ。この紳士ならブルーラベルが相応しいと私は感じたのだ。


「お待たせしました」というマスターの声で我に返る。そして、「もうこんな季節でしたか」と言いながら、マスターは磨き上げられたカウンターの上に、琥珀色のウィスキーが注がれた細めのショットグラスを置く。いつもなら、チェイサー――蒸留酒などを飲むときに一緒に出される水――がすぐに用意されるのだが、全く同じグラスを横に並べていた。


「ありがとう」と紳士は言い、グラスを一つ手に取る。そして、愛おしそうな表情を浮かべ、グラスを小さく掲げ、何かを呟くと、ゆっくりとグラスに口をつける。

 そこで何か曰くがあるのだろうと感じたが、初対面の相手に聞くわけにもいかない。

 そんな視線を感じたのか、その紳士が私に話しかけてきた。


 柔和な笑みを浮かべた紳士に「グラスを二つ並べておかしいと思ったのでは?」と言われて、僅かに答えに窮する。

「いえ……」と小声で言った後、「何か思い出でもおありなのかと」ということしか出来なかった。

 紳士は「ええ、昔の……遠い昔の思い出がね」と昔を懐かしむように、カウンターの向こう側に過去の思い出が映っているかのように見つめていた。

「年寄りの思い出話ですが、聞いていただけますか?」と言われ、私は小さく頷いた。

 そして、紳士はゆっくりとした口調で思い出を語り始めた。


「もう四十年以上前のことです。貧しい農村に生まれた私は十歳になると、ウェルバーンに奉公に出されたのです。私の奉公先は食料品を扱う大手の商会でしてね、特に麦などの穀物を多く扱っていました……」


 訥々と話す紳士の声とマスターがグラスを磨くキュッキュッという音だけが聞こえている。


「……最初は倉庫の掃除や馬の世話ばかりで本当に詰まらない仕事でした。今なら僅か十歳の子供にできる仕事など、その程度しかないと当たり前に思うのですが、その当時はその仕事が嫌でしてね、自分にはもっとできることがあると考えていたのです……」


 私は「そうですね。十代の始めには私もいろいろ考えた記憶があります」と知らず知らずに口を挟んでいた。紳士は話の腰を折られたにも関わらず、にこりと笑い、「あなたもですか」と言ってから話を続けていく。


「騎士団に憧れました。北部総督府軍には軍属から従士になれる制度があると聞いたのです。そこで商会を辞めて騎士団に入ろうとしたのです。その時、十四歳になったかならないかという歳でした……」


 そこで私に「話が長くてすみません。退屈でしょう」と言ってきた。

「いえ、その先が気になりますよ」と答えると、紳士ははにかむような笑みを浮かべ小さく頷く。


「では……何の訓練も受けていない十四歳の子供でした。今なら騎士団に入れるわけはないと分かるのですが、その時は何も考えていなかった。いきなり騎士団の詰め所に行って“軍属にしてほしい”と直談判しにいったのです。結果は言うまでもないですね。後で聞いた話ではこんな子供はたくさんいるようで、騎士団も慣れていたのでしょう。未成年が軍属になるためには親の同意がいると言って同意書を渡してきたのです。もちろん、親の同意など取れませんから、そこで諦めるしかないのですが、幼かった私はどうしても諦められませんでした。詰め所の兵士に何度も頭を下げて頼んだのです……」


 彼の言う通り、帝国軍に入るためには身元の保証がいる。特に北部総督府軍は定員が限られているから、身元がしっかりしていても剣術などの技能がなければ採用されない。


「……それから毎日、詰め所に行きました。どうしても騎士団の制服を着るんだと、それしか考えなかったのです……その時、店を勝手に飛び出していまして、帰る所がないというのも必死になった原因なのですが」


 そう言って笑う。


「十日間、通い続けました。夜は詰め所の近くの路地で眠り、なけなしの金でパンを買い、それをかじりながら……兵士は毎日変わるのですが、責任者である騎士は同じ方でしてね、十日目になって、その方が私の前に現れたのです。そして、どれだけ粘っても規則は変えられないから諦めろとおっしゃったのです。諦めの悪い私でも騎士様に言われれば諦めるしかありません。ですが、私には帰る所がなく、お恥ずかしい話ですが、その場で泣き崩れてしまったのです……」


 そこでグラスに口を付け、喉を潤す。私もそのタイミングで「マスター、ソルティ・ドッグを」と二杯目の酒を頼む。

 マスターは「かしこまりました」と応えると、大きな黄色い柑橘、グレープフルーツを取り出し、絞り始めた。

 その紳士に「失礼しました」と頭を下げ、「その先はどうなったのですか」と先を促す。


「その騎士様は私のことを不憫に思ったのでしょう。一晩詰め所に泊めてくださった上、鍛冶師ギルドに紹介状を書いてくださったのです」


「鍛冶師ギルドですか? 確かにウェルバーンは鍛冶師の街としても有名ですが」


「ええ、鍛冶師の工房はどこも人手不足だったようで、そのことを知っておられたのでしょう。ですが、翌日ギルドに行ったのですが、読み書きのできなかった私は工房で働くことができなかったのです……」


 鍛冶師の工房ではドワーフの鍛冶師が武具を作り、人間の事務員が受注や材料の仕入れを行う。当然、読み書きと計算ができなければ務まらない。


「騎士様からの紹介状があった手前、どこにも採用できないとは言えなかったのでしょう。そこでウェルバーン近郊の蒸留所の仕事を斡旋されたのです。以前の仕事が麦を扱っていたからちょうどいいだろうと……」


 そのタイミングで私のカクテル、ソルティ・ドッグが完成した。

 グラスのふちに塩がまぶしてあり、スノースタイルと呼ばれているらしい。それを舐めると仄かに苦味のあるグレープフルーツが一気に甘みを増す。

 爽やかなグレープフルーツの酸味を感じながら、紳士の話の続きを聞く。


「……結局、同じような仕事に戻ったのです。いえ、更に力仕事になったかもしれませんね。最初のうちは倉庫の掃除や樽の洗浄だったのですが、そのうち、フロアモルティングと呼ばれる麦芽をかき混ぜる作業も入ってきましたから……」


「酒造りに携わっていらっしゃったのですか。私も蒸留所を見学したことがありますが、あれは大変な作業ですよ。よく我慢できましたね」


 私の言葉に「ええ、最初はそこからも逃げ出そうと考えていました」と答える。


「ですが、ある人とであったことで考えが変わりました」


「その人はどのような?」と聞くと、それまで以上に顔を綻ばす。


「私と同じ下働きの先輩です。歳は二つ上の十六歳、境遇も良く似ていました……」


 私は同じ境遇で歳も近く、そこで友になったのだろうと思った。しかし、彼の口から出た言葉は予想を裏切った。


「たまたま同じ部屋だったのですが、最初はとても仲が悪かったのです。彼は酒を造るということに情熱を燃やしていましたが、私はそこから逃げ出すことしか考えていませんでしたから。当然、私の仕事は雑でした。ある日の夜、彼はそんな私に怒りをぶつけてきたのです」


「何を言われたのですか?」


「今でもはっきりと覚えています。彼はこう言いました。“俺たちが造っている酒を待ち望んでいる人がたくさんいるんだ! そんな人たちに手を抜いた、いい加減な酒を売るつもりか!”と……私も若かったですから反論しました。私の仕事で手を抜こうが、大した影響はないと。しかし、彼は納得せず、私の手を強引に引き、ある場所に連れていったのです」


「どこへ?」と聞くと、「酒場です」と静かに答えた。


「ここのような静かな酒場ではなく、気の置けない仲間同士が集うパブのようなところでした。そこの売りは揚げ物料理、つまり“ドワーフ料理”が看板料理だったのです。特に鶏の揚げ物が人気でしてね、ドワーフの鍛冶師たちがたくさん集まっていました……私たちは険悪な雰囲気のまま、ドワーフたちに近いテーブルにつき、店の様子を見ていました……その店は安かったのでしょうね。若い職人たちが集まる店でした。そこで若い鍛冶師たちは美味そうに麦酒や葡萄酒を飲んでいました」


 彼はそこでジョニー・ウォーターのレッドを口にする。


「その頃の私は酒など飲んだことがなく、何が楽しいんだと不貞腐れていました。何度か帰ろうとしましたが、彼がそれを許しません。一時間ほど経った頃でしょうか、若いドワーフたちが突然立ち上がり、“三年物じゃない、いいスコッチを飲むぞ!”と叫んだのです」


 何年前の話かは分からないが、今でもスコッチは安い酒ではない。三年物でもジョッキ一杯で十(クローナ)(=一万円)はする。若い鍛冶師にとって、三年物ではないスコッチは高嶺の花だったはずだ。


「どうやら、鍛冶師の一人が別の町に修行に行くらしく、その送別会だったようなのです。その時、出てきたスコッチがこのジョニー・レッドでした……一本のスコッチを十人ほどで分け合い、乾杯の合図とともに飲み干したのです……」


「凄いことになったのでは?」と笑いながら聞くと、「ええ、あの叫び声で耳がキーンとなり続けましたね」と笑い返す。


「それはもう美味そうに、本当に幸せそうに飲んでいました。その時、先輩はこう言いました……」


 そこでグラスを持ち上げる。


「“あの酒の中に俺たちが働いている蒸留所の酒が入っている。確かに俺は雑用しかしていない。だがな。誰かがその仕事をしなけりゃ、あの人たちはあの酒が飲めなかったんだ。俺はこの仕事に誇りを持っている。いつか、伝説の職人、スコット・ウィッシュキーを超えてみせる。そのためには今の仕事を完璧にやらなければならないんだ”と……」


 彼はグラスを掲げ、カウンターの奥の間接照明に透かしていた。


「先輩は蒸留酒が作られ始めた頃の話をしてくれました。ジョナサン・ウォーター氏がウェルバーンで蒸留酒を作るために大変な努力をしたこと、ロックハート家が決めた三年間の修行とその意味について最も理解していたことも……そして、私にこう言いました。“辞めるなら三年我慢してから辞めろ”と」


「三年ですか。確かにラスモア村での修行は三年間と決まっていましたね。それで三年とおっしゃったのですか?」


 私の問いに「はい」と答える。


「先輩は三年前に同じことを言われたそうです。三年経てば自分が関わった酒が売られる。その時に酒場に行け。それでも辞めたいなら、その時に辞めろと。そして、自分の目でドワーフたちが美味そうに飲む姿を見たそうです。その時、自分の仕事が役に立っていると感じ、今の仕事をやり遂げようと思ったそうです」


「いいお話ですね。その先輩は今どちらに?」と何気なく聞いた。


 彼は悲しげな瞳で首を横に振る。私は二つ並んだグラスに目をやり、自分の迂闊さを呪う。


「先輩はそれから十年後に病気で亡くなりました。まだ、二十五を越えたばかりだったのですが……その先輩が最後に飲んだ酒がこのジョニー・ウォーターのレッドラベルだったのです。そう、彼の蒸留した原酒が入った、初めての“ジョニー”でした……」


 しんみりとした空気がバーを覆う。私はその空気を変えようと、「それであなたも蒸留酒の職人に?」と尋ねた。彼は「ええ」と頷く。


「先輩にパブに連れていかれてからも納得したわけではありませんでした。ですが、何となく辞める気にならなかったのです……先輩の遺志を継ぐというほどの気概は持っていません。先輩はあのスコット氏を超えると常々言っていましたが、私はそこまで大それたことは言えないですから」


 そう言って笑うが、その寂しそうな笑顔が妙に心に残った。


「私にとってジョニー・レッドは今でも最高の酒です。私の人生を変えてくれた最高の酒……これに優る酒はありません……」



 しんみりとした雰囲気の中、その紳士の話は終わり、ゆっくりとグラスを傾けていく。私もソルティ・ドッグがなくなったことから、ジョニー・レッドを頼んだ。

 私の手元にグラスが置かれると、マスターがジョニー・レッドのボトルを置いてくれる。独特な四角いガラス製のボトルに赤いラベル、そのラベルには名前の由来となったジョナサン・ウォーター氏の大またで歩く姿が描かれている。美しい琥珀色と赤いラベルが見事に調和し、スマートなスコッチ・ウィスキーを飲んでいるという気にさせる。


 私が一口飲んだところでドアベルが鳴る。

 マスターが「いらっしゃいませ」というと、「いつものを頼む」というドラ声が響く。常連客であるドワーフの鍛冶師、“親方”が入ってきたのだ。

 親方が入ってくるとしんみりとした空気が一気に消える。

 親方はおしぼりを受け取ると、いつものようにマスターにジョッキを渡しながら、「何を飲んでおるんじゃ?」と言って、私の前のボトルに目をやる。

「ジョニー・レッドか! これはまた懐かしいものを……」と豪快な親方にしては珍しく目を細めて黙っている。


「あなたもいかがですか? 私が奢りますよ」と紳士がいうと、親方は「こいつを飲んだらありがたくいただく」とマスターが手渡したジョッキを掲げる。

 紳士は「さすがはドワーフの鍛冶師ですね」と笑う。

 親方は確かにドワーフだが、鍛冶師だとは言っていない。その姿も作業服は着ているものの、他の職人と区別はつかない。

「どうして親方が鍛冶師だと思われたのですか」と尋ねると、「三年物のスコッチをジョッキで飲むのは鍛冶師ギルドの流儀ですから。ウェルバーンで散々見ていますので」と笑いながら答える。

 他のドワーフも同じではと思ったが、それは口に出さなかった。


 親方が三年物のスコッチを一気に飲み干すと、「それじゃ、遠慮なくいただくとするか。マスター、シングルで頼む」とジョニー・レッドを注文した。

 親方には珍しく遠慮したのかと思ったが、「昔はこうやって小さなグラスで少しずつ飲んでいたもんじゃ」と若い頃の飲み方で頼んだようだ。


 親方の前にグラスが置かれると、その太い指で小さなショットグラスを持ち上げる。


「それでは何に乾杯するかの」


 その問いに紳士が「若き日の思い出に」とすかさず答える。親方も「うむ。そうじゃな」と言って頷くが、私の方を見て「ロバートには似合わんな」と笑った。

 紳士も「確かに」と言って笑みを浮かべるが、「それでは、若き日の思い出に。乾杯」とグラスを掲げた。私たちも同じようにグラスを掲げる。


 いつの日か、ジョニー・レッドが若い頃を思い出す酒になるのだろうかと思いながら、グラスを傾けていた。



■■■


 評論家のロバート・パーマー、本名ロバート・ラドフォードはワインに関する著作が多いが、蒸留酒についてもいくつかの著作を残している。

 その一つに「ジョニー・ウォーター:ローランドの蒸留酒を作った男」があり、鍛冶師ギルド職員であったジョナサン・ウォーターの軌跡を追いながら、銘酒ジョニー・ウォーターについて記していた。その一節に以下のような記述があった。


『ジョニー・ウォーターは数多くの原酒をブレンドしたウィスキーであり、年々進化している。その原酒を造る者たちは自らの名は出なくとも、ジョニー・ウォーターに自らの酒が使われることを誇りにしている……ジョニー・ブルーは少なくとも十八年以上熟成させた最高のモルト・ウィスキーと、それと同等の品質のグレーン・ウィスキーがブレンドされており、芸術品と言ってもよい名酒である……ジョニー・ブラックは力強く、それでいて繊細なスコッチであり、世界中の多くのファンの舌を唸らせている……ジョニー・レッドはそれら上位レーベルと比較すると荒々しく、香りの豊かさや繊細さに欠ける。しかし、このレッドに郷愁を感じる者も多いのではないだろうか。特にドワーフの鍛冶師たちが最初に飲む高級スコッチがジョニー・レッドであり……』


 そして、その章の最後にこう付け加えられていた。


『私はジョニー・レッドに郷愁を感じることないし、決して美味い酒だとは思わない。しかし、若い職人たちが夢を語りながら飲む酒であり、人生の中で最も輝いていた時代を思い出させる名酒であることは間違いない……その甘酸っぱい思い出がこの酒に特別な魅力を与えているのだろう。私も五十歳を過ぎた頃から、ジョニー・レッドを飲むようになった。昔を思い出しながら……』

 出版されるたびに「Bar ロックハート」シリーズを書いていくのもいいかなと思い、7月10日のドリーム・ライフ2の発売を記念して、書いてみました。

 と言っても、7月7日、8日の二日で書き上げた物で、特に7日は飲み会があったため、酔っぱらって書いており、文章が乱れている気がします。

(8日に推敲した時に直したつもりですが……)


 今回のお酒はドリーム・ライフ第3章で登場した“ジョニー・ウォー()ー”です。

 スコッチ・ウィスキーの銘酒“ジョニー・ウォー()ー”のパロディとして登場させた酒ですが、ジョニ黒とかジョニ赤という響きは郷愁を誘うなと思い、今回の主役としました。

 私自身が郷愁を誘われるウィスキーはカティ・サークですね。入社して間もない貧乏な頃に無理して買ったスコッチで、本当に少しずつ大事に飲んでいた記憶があります。その後はバランタインやグレンフィディックなど安いスコッチをいろいろ買いましたが、あの帆船のラベルを見ると入社当時を思い出します。

 今はまだ飲みたいと思いませんが、もう少し歳を重ねたら飲みたくなるかもしれません。



 TOブックス様のTrinitas特設サイトもリニューアルしています。

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ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~
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[良い点] この小説シリーズ、魔法とかステータスよりもお酒に絡んだお話がものすごく面白くて物語に吸い込まれていく。たまにお酒関連の話だけ更新されていないかなと悪い覗きをしている… [気になる点] お酒…
[一言] 昔、先輩にお高いBarで味見と称して様々な銘柄(バラン、マッカラン、R・S、etc)をごちそうになりました。『旨い酒は高い。だけど金がある時には酒代をケチるな』と言いつつその先輩が飲んでいた…
[良い点] 良い話でした。私だと先輩とよくのんだいいともでしょうか。よく悪酔いして地獄を見た覚えが有ります。
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