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獣王の息子  作者: 日向夏
8/32

8、巣窟 前編

 

 なんでこんなことをしているのだろう。


 自転車で三十分、遠いと言えば遠いが、思ったより近かった。


 『古床』と書かれてある表札は、閑静な住宅街の一軒にかかっていた。モダンな感じのデザイナー住宅だ。


「いいとこ住んでるねえ」

 

 そう言って、颯太郎少年は近くの公園に自転車を駐輪する。紅花も同じく真似る。


 そろそろ、若ママが、紅花の帰りが遅いことに気づくかもしれない。どうしようかと思いつつ、携帯をみる。


「貸して」


 颯太郎少年は紅花の携帯でメール画面を開く。

 なにやら打ち込んでいて、それが終わると紅花に返す。


「これ、もう少ししたら、おねーさんに送って」


 画面を見ると、メール作成画面になっていた。タイトルと宛先は入っておらず、本文だけ今の状況を書いていた。


 少年はじっと古床家の玄関を見ている。

 すると、玄関から虚ろな目をしたゆるふわがでてきた。デニムジャケットにシフォンのミニワンピを着ている。白いエナメル靴を履いていたが、踵があるため余計ふらふらしているように見える。


「なんで出かけてるの」

「そりゃあ、古い吸血鬼はそれくらいの催眠術使うよ。昨日は、さすがに両親が家にいたから出ることはできなかったみたいだけどね」

「それって……」

「人外の存在を知っていても、その能力を迷信って思う人多いんだよ。まさか操られて出て行くなんて思わない」


 人外の能力の半分くらいは、科学的根拠で実証されている。しかし、残り半分はまだオカルトめいた部分が多く、使っている当人たちも原理などわかっていない。

 

 ふらふらのまま歩き続けるゆるふわは途中、バスに乗った。それに、紅花たちも一緒に乗る。わかりきった尾行だが、ゆるふわはそんなこと頭にないだろう。ただ、どこからともなく聞こえる声に言われるがまま、そこへと向かうだけだ。


 バスから降りると、そこは隣町だった。少し静かな雰囲気の場所で、紅花は急に帰りが不安になる。


 携帯を見ると、若ママから着信があった。知ってる、バスに乗っている間、ずっと携帯が震えていた。メールの返信も来ていて、誤字から慌てた様子がうかがえる。


「携帯かして」


 颯太郎少年に言われるがまま携帯を渡す。


「ねえ、おねーさんってミニブログとかやるタイプ?」

「やらないけど、ネットはけっこう見るよ」

「そう、ならこっちのほうがいいかな?」


 颯太郎少年は自分の携帯を見ながら、なにやら打ち込んでいる。


 返してもらうと、何かのアドレスが張ってあった。


「送って」

「うん」


 返信する。アドレスをたどると、まだ作って間もないミニブログにつく。

 颯太郎少年が電柱にある住所を撮影している。それからしばらくすると、ミニブログにその写真が上がってくる。


 つまりこれで一方的に実況しようという考えだろう。


 なんかいろいろ思いつくなあと感心する。


 そうやって歩きスマホなるマナーの悪いことをしながら、到着したのは少し雰囲気の悪い通りだった。日暮れということもあり、街燈がちかちかと光り、それに少しずつ虫が集っている。


 だらだらと通りを歩いている人は、ちらちらと紅花たちを見ている気がする。


 ゆるふわはそんな中、雑居ビルの一階に入っていく。三階までテナントはゲームセンターになっていた。レトロなゲームが並び、中はどことなく薄暗い。雰囲気からして古臭い感じがするが、ビル自体は比較的新しくわざとダメージ加工をしているタイプの凝った店だとわかった。

 その上は空いているのか、四階、五階と黒い幕がかかっていた。向かって右側に非常階段がついている。


「紅ちゃん、中、先に入ってくれる?」

「ちょっ! それ、ずるくない? なんで、私だけ」


 正直いやだ。

 ゲーセンなんて一人で行ったことない。なにより、この独特の雰囲気がどうしても受け付けない。


「うん、少しやっておきたいことがあって。そうだ、いいものあげるね」


 颯太郎少年は背負っていたリュックからごそごそとなにかを取り出す。ビニールに詰められた粉のようなものと、ライターだった。


「これもいる?」


 そして殺虫剤が差し出される。


「何をしろと?」

「なんとか工夫して」


 無茶言うな、と紅花は思った。

 

 なんでついてきたんだ、どうしてここにいるんだ、もう一度自問自答し、そして後悔する。


 この間、学校裏についていったのは、自分には害がないとわかっていたからだ。たとえ、あのとき自分も井戸に落ちていたとする。他の子たちは即死している高さでも紅花は生き残っていただろう。


 そして、あの井戸の直径だったらなんとか登り切ることができただろう。


 それだけの力が紅花にはある。


 だけど、この先には、颯太郎少年の言葉を信じる限り、人間を餌とする捕食者がいる。そして、その捕食者にとって紅花は特にご馳走に見えるだろう。


「無責任じゃない?」

「そうかな。心配する必要がないから、言ったまでだよ」


 颯太郎少年は、軽く笑う。


「吸血鬼は日光に弱い、ニンニクに弱い、火に弱い、流れる水に弱い、銀に弱い。それは、科学的根拠もある立派な弱点だよ。対して、僕たちにはいくつ弱点がある? 少なくともあいつらほどない?」

「ねえ、あいつらって複数形が気になるところなんですけど」


 紅花の質問に、素知らぬ顔をしてそっぽを向く。ぐぬぬっと顔を近づけると、観念して話し始める。


「古い吸血鬼は食事にこだわる。いくつか手順を踏んでいただくけど、その間邪魔されないから配下をつける場合が多い」


 その人たちから定期的に血を吸い、弱ったら捨てるという。少年の言っていた血清というのは、その捨てられた人たちから作られたものだ。


「基本、単独行動だから、純粋な吸血鬼はいないと思う。配下って言っても、すでに血を吸って操っている人間だろうけど。場合によっては屍鬼グールって呼ばれるかな。末期になると味覚が変わり、血を食らうために墓荒らしさえする」

「怖いこと言わないで」

「怖い?」

「うん」


 少年は笑う。


「僕は、クラスメイトがミイラで発見されるほうが怖いよ」


 笑っているからこそ、その言葉にぞくっとした。


「なにがミイラよ。全部、吸い尽くされるわけじゃないんでしょ!」

「時と場合による、保健室で見た痕は多分、マーキングだと思うから」


 紅花は眉間にしわを寄せる。なんだかんだで、颯太郎少年は紅花よりずっと吸血鬼に詳しい。


「ええっとなんていうか、ご馳走だと我慢できずに全部食べちゃうんだよね。そういう性質さがというかなんというか。非常食はキープするけど、それとは別格なんだよ」

「じゃあ、マーキングの際、全部飲まなかったのはなんでよ?」

「血を飲みやすくするために、唾液を入れるんだ。蚊と同じだね。全身に行きわたるには数日待つ必要があるけど」


 蚊と同じレベルで考える問題じゃないと紅花は思いながら、疑問をぶつける。


「どういうのがご馳走なわけ?」

「古い吸血鬼は基本、一角獣教なんだ」

「……」


 紅花の顔が歪む。


「たぶん紅ちゃんもかなりおいしそうだよ」

「肋骨、もう一本折っとく?」


 一角獣とは幻獣の名前である。その習性に、穢れなき乙女の膝を好むというものがある。そして、それと同じ嗜好を持つ男性陣は世界各地にいる。


 紅花は、殺虫スプレーもろもろを持つと、女の敵に立ち向かうことにした。






 からんっと入口を開けて店内に入ると、独特の空気に早速飲まれそうになった。


 レトロなゲーム筐体が並んでいる。対戦しているのだろうか、一人というより数人で固まって同じ画面を見ている。


 散り散りにいる人たちを合わせて、一階では八人ほどだろうか。二人だけ女の人がいる。


 皆けだるそうな顔をしているが、その中でも比較的元気そうなのが近づいてきた。


「お嬢ちゃん、ここで遊ぶの?」


 若い男だった。二十歳こえたかこえていないかというところだ。髪にメッシュを入れていて、ヴィジュアル系気取りだろうか。


「やめておいた方がいいんじゃないかな?」


 下卑た笑いを向けられた。


 紅花はどうすればいいかと思う。紅花の役割が囮だとすれば、どうしようか。


「友だちがここにいるんですけど、知りませんか?」


 嘘をつけるほど器用じゃないので、真正面から行く。


 後ろにいた男たちがぴくっと反応した。重い腰を上げ、紅花に近づいてくる。濁った眼球がぎょろぎょろ動き、品定めするように見ている。


「友だちのところに行きたいのかい?」

 

 ぬるい息がかかる。見た目のチャラさの割に清潔なのだが、その纏う空気が病人じみていた。青白い肌と目のくまのせいだろうか。


「連れてってあげようか?」

「えっ、いいんですか? 邪魔するなって言われますよ」


 なんだろう、このメッシュ野郎。邪魔しなくていいのに、と紅花は思う。


 不健康な男はメッシュ野郎の背中を小突くとあっちへ行けと指示する。メッシュ野郎はへらへらと笑いながら、また古いゲームで遊び始めた。


「行こうか」

「はい」


 外の非常階段とは別に、室内にも階段があった。階段を上っていくと、天井に丸いものが付いているのに気が付いた。火災探知機かと思ったら少し形が違う。スプリンクラーだろうか。


 そう言えば、この独特なすえた雰囲気なのに、煙草の臭いがしなかった。たぶん、これが反応しないようにだろう。


 二階に上がると、こちらは少し雰囲気が違っていた。ビリヤードとダーツが並び、遊技場といった雰囲気だ。


 さらにその上になると、今度はカジノの雰囲気を醸し出していた。ルーレットとポーカーのテーブル、スロットが大中小並び、バーカウンターがフロアの角に見える。


 気だるい雰囲気はさらに濃くなる。


 一階、二階と上がってきてわかったのが、ここにいる人間たちの特徴だ。


 どれも不健康な顔色をしているが、平均以上に整った顔だちばかりだ。それに上の階に上がるほど、女の人の比率が増えている。


 カウンターで笑う女性は、ワイングラスを揺らしていた。その赤い色にぞくっとする。


 寂れた通りの雑居ビルの中とは思えぬ雰囲気だ。

 天井からきらきらとシャンデリアが光っている。明かりといったらそれくらいで、バーテンダーがしゃかしゃかとカクテルを作っていた。


 一階から連れてきてくれた男は、少し居心地が悪そうでバーテンダーの男になにやら話すと、紅花を置いてまた降りていった。


「これでも飲んで、待っててくれ」


 バーテンダーの男は、小さなカクテルを紅花に渡す。しゅわしゅわと炭酸が入ったものでさくらんぼがちょこんとのっていた。紅花はそれを受け取ると、ソファにちょこんと座る。

 

 テーブル越しに座ったスレンダーなおねーさんがこっちを見ている。また、品定めするような目だ。


 きれいな赤いカクテルだったが、それを口に含もうとは思わなかった。


 すんっと鼻を鳴らす。

 鉄の臭いと、薬の臭いがした。


 ああ、やっぱり。


 鉄の臭いの元は、このカクテルではない。それと一緒に作られていたものの原料が混じったのかもしれない。


 スレンダーなおねーさんのワイングラスから濃く漂ってくる。


 ぞわりと全身に鳥肌が立った。

 

 聞いていたはずだ。吸血鬼に噛まれると、体質が代わり、嗜好も変わると。


 当人たちは自分たちも本物の吸血鬼になると信じているのだろうか。それとも、知らずに操られているだけなのだろうか。


 もし、自分が別種になったと信じて、それを飲んでいたとしたら、その真実を知ったときどう感じるだろう。


 震える中、おねーさんが紅花に近づいてくる。タイトなドレスを着ていて、真横に座る。

出るところは出た胸が急に目の前にあったので、びっくりした。


「ねえ? 血液型は何型?」

「……O型です」

「そうなの、いいわ。私、O型好きよ」


 妖艶な笑みを浮かべて紅花を覗き込んでくる。

 肩にかけたショールの隙間から、青黒く変色した噛み痕が見えた。


 赤い唇のむこうに白い歯が見える。八重歯は少し尖って見えたがそれは人間のものだ。


「ちょっと味見させてもらいたいなあ」

「だめですよ。そんなことをしては」


 バーテンダーが中にはいる。


 おねーさんは口を膨らませると、紅花から離れた。


 それにほっとしながら、紅花はバーテンダーを見る。


「あの、友だちがここに来ているって聞いて」

「ああ。ここで待っているといいよ」

「いえ、すぐあいたいんです」

「それは無理だよ」


 紅花が子どもだからだろうか。宥めるように言い聞かせる。ただ、それは聞かせ慣れた台詞のようで、どこか薄っぺらかった。


「どこにいるんですか?」

「ちょっと、用事があるんだよ」

「どのくらいですか?」

「もうちょっとだよ」


 吸血鬼に食われるまで待てというのか。それまで待てるわけがない。


 不思議な感じがする。

 ぞわぞわと全身に鳥肌が立っているのに、いつものアレは見えなかった。こんな状況なら、アレが見えてもおかしくないのに。


 もしかして、颯太郎少年にくっついてしまったせいだろうか。


 それとも、自分にはまだ危険でないということか。


「ねえ、君」


 バーテンダーが目を細める。


 少しいら立っているようにも見える。


「そのカクテル、飲まないの?」


 薄く開いた目から、血走った眼球が見えた。

 その瞬間、紅花は思わず後ろに下がった。


 紅花を押さえこもうとしたのか、バーテンダーの手がソファにめり込んでいた。


 後ろから、おねーさんの手が伸びる。咄嗟にしゃがみ込んで、持っていたポーチの中を漁った。

 財布と携帯と、それから颯太郎少年がくれた粉袋が入っている。


 なにに使うっていうのよ!


 紅花がそれを持った瞬間、おねーさんの長く伸びた爪が袋にかすった。


 その瞬間、周りの空気が変わった。

 異臭が袋からこぼれ出した。


 なにを怖がるの?


 弱点はたくさんあるよ。

 

 颯太郎少年の言葉を思い出す。


 紅花はむっとする。ならば、袋の中身をなにか伝えておくべきだろう。


 紅花は、袋に爪を引っかけると、そのまま引き裂いた。乾いた粉が宙を舞う。

 思わず鼻を押さえたくなる臭いだ。多少なら食欲をそそるソレだが、これはちと濃度が違う。


「っ!?」


 げほっ、げほっと咳をするのは、バーテンダーとおねーさんだった。臭いで鼻をやられたわけでなく、ぽつぽつと極端なくらい赤い発疹ができている。


「な、にすん、のよ」


 涙目でこちらを見るおねーさんには悪いが、紅花にはそんな余裕はない。残りの粉をしっかりつかみ、周りの他の大人たちをけん制する。


 袋の中身はにんにくパウダーだった。


 血の味を好むほど、吸血病に侵されたなら、このにんにくパウダーはひとたまりもないだろう。

 

 ゆるふわはどこにいるのだろうか?


 周りをくまなく見るが、ゆるふわがいそうな場所はない。ただ、フロアの一角にパテーションで区切られた場所があった。下の階と同じ配置なら、そこには階段があるはずだ。


 それに気づいて近づこうとするが、下の階から騒ぎを聞きつけたのか、どんどん人がやってくる。


「おい、なんだ、これは」

「そいつ、そいつを捕まえろ!」


 紅花にどんどん襲い掛かってくる。

にんにくパウダーを振りまいて追い払うけど、すぐに切らしてしまう。

 

 囮と言ったが、これはちょっと困った状況じゃないだろうか。


 紅花は、すれすれで何度も避ける。伸びた手に掴まれたが、思い切り振りほどくと、掴んだ本人が吹き飛んだ。


 やりすぎた。


 そう思うが加減できようもない。そんな真似したら、こっちが捕まってしまう。三人ほど振りほどき、そのうち二人を投げ飛ばしたが、まだフロアには十人以上いる。いつのまに、バール状のものを持っている人もいた。


 これは当たったら痛い。


「……こいつ、もしかして人外なのか?」


 ぼそっと漏れた声が聞こえた。


 うん、そうだよ。


 だったら、諦めようぜ、と思ったが、続いた言葉は、


「どんな味がするんだ?」


 だった。


 思考まで吸血鬼になってしまっている。いや、古い吸血鬼と言っておかないと、善良な穏健派吸血鬼に失礼だろうか。


 投げ飛ばした二人も両手をだらんとさせて、幽鬼のように近づいてくる。


 これはやばい。


 にんにくにやられた最初の二人も立ち上がっている。

 その目はどろりと濁り、焦点が合っていない。


 一人、ふらふらと出て行くゆるふわの目にそっくりだった。

 催眠状態というやつだろうか。


 冷や汗をかきながら、紅花はいつのまにか壁へと追いやられていた。

なんとか、一点突破しようと考えるが、二人、三人ならともかく十人をこえるとさすがに取り押さえられるだろう。

 

 そうなれば、躊躇なく噛みつかれ、血を吸われる。


 いや、そんなことにはならない。ならないはずだ。


 まだ、紅花には見えていない。

 不気味で気持ち悪いアレがでてきていない。

 

 アレがでてくると、紅花の身になにか起こる。怪我をしたり、襲われたりするなにかが起こる。

 今も、襲われているが、同時に妙に落ち着いていた。


 アレが出てこない限り、なにか逃げ出す方法があるという、根拠のない自信が生まれていた。


 なにか、なにかがある。


 ふと、天井がみえる。丸いスプリンクラーだ。そういえば、ここも禁煙だ、煙草の臭いがしない。


 腰にぶら下がったポーチを見る。颯太郎少年からもらったライターと殺虫剤がまだ中にある。


 いちかばちか。


 紅花は腰のポーチから、ライターと殺虫剤を取り出す。そして、ライターに火をつけ、それに殺虫剤を噴射した。


 ボワッと言う音とともに、噴射した炎に一番驚いたのは紅花だった。そのまま、天井まで炎が届く。


 吸血鬼もどきたちは、一歩ひるむ。

 吸血鬼は火に弱い、それはこのもどきたちにも適用されるらしい。いや、こんな火炎放射器みたいな炎をつきつけられたら誰だってひるむだろう。


 でも、狙いはそれではない。


 炎に、スプリンクラーが反応した。


 水が天井から流れる。

 炎を消すために流れるそれは、殺傷力があるとはいえない。でも、彼らには効いていた。

 

 吸血鬼は流れる水を苦手とする。


 迷信めいたものだが、それも本当だったようだ。


 狂犬病の予防接種みたい。


 それを思い出した。狂犬病は水を怖がるというが、吸血病にも似たような反応があるようだ。

 にんにくほどじゃないが、動きが鈍くなった奴らをかいくぐる。びしょ濡れのまま、苦しむ吸血鬼もどきたちを避けて、パテーションの裏の階段を上った。


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