コレクション4話目〜パンツと進化〜
「・・・・」
授業も終わり、集は風呂に入っていた。
男女共に同じ風呂を使用するが、時間帯で分けられていた。集は、男が山のように入浴する光景が嫌いだ。なので、終了ギリギリに入浴することにした。
余り時間がないので、大浴場からすぐさま上がる。
しかし、着替えを確認すると一瞬固まる。
「マジかよ」
学園では科目ごとに寮分けされており、商業科の寮は街の大通りに面している。
とりわけセキュリティが高いわけでわないので、金品の管理には十分に気をつけるよう言われている。
しかし、こんな所まで気をつけるべきなのかと嘆いていた。
「履いてたパンツが無い・・・」
最近、頻繁にモノが無くなっているきがする。実際、学園からの支給品や、捨てるつもりの物ばかりが無くなるので懐は痛まない。しかし、精神的に使用済みパンツがなくなるのはキツかった。
「どうしたシュウ?マッチョな大男にでもパンツを盗まれたか?笑」
身長190はあろうか立派な体格に、真っ赤な髪の男が声をかけてくる。
名前はウッド・バレット。16歳。
クラスメイトであり、寮では部屋が隣。でかい身体にでかい息子。さらに、いかつい顔。初見で友達になるのは難しい出で立ちだ。しかし、お互い目つきが悪いので妙に親近感が湧き、集とは仲が良い。
「冗談でも止めてくれ・・・」
「まじか・・・お前も大変だな・・・」
ウッド・バレットは大商人バレット家の息子である。貴族との繋がりも強く、
古くから王族に品物を卸す名家の家柄である。
しかし、ウッドの才能は戦闘スキルに恵まれたバリバリの武闘派であった。
家を出て冒険者として生きていく事も考えているが、長男と言う責任もあり感商業科に属している。
そそくさと着替えると二人で大浴場をあとにする。
「そ、そう言えば、シュウは明日が誕生日なんだろ?」
話題を逸らしてくれる優しさが、逆に痛い。
「まーな!ようやく15歳だよ!まさか前日にパンツを盗まれるとは思ってもみなかったけどね!!」
ヤケクソ気味にテンションをあげてみる。
「彼女いない、パンツ取られる、友達いないの三重苦か。どんまいだな!」
ウッドもテンションを上げてきた。優しいが、言葉を選べと思う。
「ウッドさま~!!!」
ウッドはびくりと体を硬させる。
振り向くとそこには身長180はあろう女性が疾走してくる。
彼女の名前はマリーヌ・ペテロ・ローズ。17歳
長いブロンドの髪。美しい顔立ちに引き締まった肉体。赤いワンピースをこれでもかと押し上げる胸。見る人を引き付ける美女だ。
「わ、悪い!急用を思い出した!!」
いきなり走り出だすウッド。それを追いかけるマリーヌ。
しばらくすると遠くの方でウッドが後ろからタックルをされいた。
小さくやめろマリーヌと聞こえてくる。
少し前にウッドから聞いた貴族の許嫁が確かマリーヌとかいう名前だったことを思い出す。なんでも、異常なスキンシップを迫ってくるマリーヌが苦手らしい。
しかし集にはいちゃついているようにしか見えない。
ウッドとマリーヌがいちゃついている現場に追いつく。
「シュウ!助けてくれ!!」
ウッドの懇願に、嫉妬のこもった鋭い視線を向ける。
「爆発しろ!!」
一言言い放ちその場を後にする。
「マリーヌやめろぉぉぉ」
ズボンをずらされ、半尻を出したウッドの悲鳴がこだましていた。
リア充め!と呟きながら部屋についた集は、ベッドに横になる。
「あと、一時間程度で15歳か。」
この一週間で様々な記憶が蘇り、変革の前と後、どちらの記憶が本来の自分なのか曖昧になってきていた。
機械に囲まれた暮らしの方が夢ではないかと考えていた。
そんなことを思いながらウトウトしている。
すると、脳内でアナウンスが流れる。
【スキル干渉を受けました。スキル進化が開始されます。】
ビクッと飛び起き周囲を見渡す。すると、ステータスが勝手に開いている。何が起こったのか考えていると
【スキル進化完了しました。
トレジャーボックス(レア級)が
トレジャールーム(ウルトラ級)に進化しました。】
「はぁぁあ?」
集の困惑を余所に続けざまにアナウンスが流れる。
【スキル干渉を受けました。スキル進化が開始されます。】
「また?!」
【スキル進化完了しました。
トレジャールーム(ウルトラ級)が
トレジャーキャッスル(レジェンド級)に進化しました。】
動揺がピークに達した集は唖然とステータス画面をみていた。
そして、再度アナウンスが脳内に響く。
【スキル干渉を受けました。スキル進化が開始されます。】
「・・・・」
【スキル進化完了しました。
トレジャーキャッスル(レジェンド級)が
トレジャーコレクション(ゴット級)に進化しました。】
集が15歳の誕生日を迎えたこの日、歴史上初のゴット級スキルぐ誕生した。
しかし、集はまだ知らない。このスキル進化が三人のストーカーによる奇跡の産物と言うことを。
・・・・
時は集が風呂に入っている時間にさかのぼる。脱衣場に怪しい影が1人。
「あらあら。こんな所にシュウ様のパンツが落ちていますわ。拾って保護致しませんと」
明らかにカゴに入っているパンツを手に持ち、風のように消える少女。
彼女のお宝コレクションも終わらない。