コレクション10話目〜戦闘と剥製〜
「・・・・」
太陽が顔を出し始め、トリの鳴き声が朝の装いを強めていく。
集はベッドで熟睡してた。
「ゴトッ!!」
物音により意識が覚醒していく。
「ん?」
そこには、今では見慣れた部屋がある。物音がしたような気がしたがと思うが、意識はまだはっきりしない。
しばらくすると目が覚めてくる。
今日は週に一度の授業の休みである。
ちなみに、暦や月日は歴史の変革前と多少の違いがあった。一週間は10日。一月は30日。一年は360日と覚えやすくなっていた。
「よーし。今日こそはゴブリン退治と洒落込むか。レベルも上げたいしな。」
とりあえず服を着替えようと、服を脱ぐ。
ゴワゴワの黒いズボンに、ゴワゴワの茶色い上着をみにつけ部屋をでた。
その足で食堂に向かい始める。すると、後ろから声を掛けられる。
「おう!おはようシュウ!」
「おはようウッド」
二人はお互いをみる。全く同じ格好である。
支給品は種類も少なく、組み合わせのバリエーションが乏しいのだ。この様な偶然は度々おこる。
「今日は何するんだ?」
「んー決めてないなー。シュウは?」
「俺はゴブリンを狩りにいくよ。スキルレベルを上げたいしな」
ウッドが慌てた様子で声を張る。
「ちょっお前大丈夫か?ゴブリンと言えどもお前のスキルじゃ戦闘の役にたたないだろ?!囲まれたら、怪我だけじゃすまないぞ?!」
しまった!そういえば、普通そう考えるよな。トレジャーボックスしか持っていないなら誰でもそう考える。
「どうしても行くなら付き合うぞ?俺なら、ゴブリン10匹位に囲まれても平気だしな」
「いや、大丈夫。一匹の奴を見つけてフルボッコにするから!ウッドは彼女とデートでもしてきな」
「誰がするか!危なくなったら逃げろよな!」
「あんがと。じゃーな」
集は立ち去ろうと歩き出す。
「おい!朝飯は食べないのか?」
一度立ち止まり食堂に足を進める。
「いくぞ」
ウッドはニヤつきながら、集は不満そうな顔をしながら歩き出す。
ウッドと集は向かい合わせに座り、パンとスープを食べ始める。
ウッドは真剣な面持ちで話す。
「シュウにとっては、最後の晩餐かぁ」
「・・・・」
集は大きく息を吸い込む
「マリーヌ〜。ウッドがデートしたいってよ〜」
「わっバカ!」
「本当ですか!?ウッド様!時間が勿体無いですわ!すぐに出かけましょう!!」
どこからともなくマリーヌが顔を出す。
これ程大きい体をどこに隠していたのだ?と疑問に思うほど、突然現れた。
「ちょっ、まてマリーヌ!くそっ、シュウ覚えてろよ〜」
ウッドは猫のように摘まれ、引きずられていく。遠ざかるウッドの捨て台詞は、効果音の様に遠ざかっていく。
静かになった食堂でそそくさと食事を済ませ南の草原に向かう。
まだ朝特有の爽やかな空気が漂う中、草原に到着する。
「さー今日は2匹のゴブリンでも戦ってみるか。なんたって防御力だけはミスリル並みだからな。」
しばらく草原を歩くと大きな岩を見つける。でかいなぁーと上を見上げてみる。すると、丸めた新聞紙で頭を叩かれたような感覚。それと同時に、金属音が響く。
「キンッ」
振り向くとゴブリンが、長い長剣を手にキョトンとしていた。
「うぉ!ゴブリン!」
急なエンカウントに戸惑いを隠せない集は、反応が遅れてしまう。
「グギャー」
急に長剣を振り回し襲ってくるゴブリン。
長剣が腕に突き刺さろうとした。しかし、当たる数ミリ前で、先程の金属音が響く。
「キンッ」
丸めた新聞紙で、軽く突かれたような感覚が腕に残る。
集は理解し、ニヤリと口が緩む。
「硬化7はこれだけ硬いのか」
訳のわからないゴブリンは、何度も何度も長剣を集の体にぶつける。
その度に金属音が激しく鳴り響く。
しかし、集の体はミスリルと同等の硬度。並みの攻撃では傷一つ付けることはできなかった。
しばらくは弱々しい斬撃を受け続けるが、無敵っぷりに満足すると、思いっきりゴブリンの腹部を蹴り上げてみる。
「バコッ」
ゴブリンは綺麗な放物線を描き二メートル先に吹っ飛ぶ。
「まじか」
ゴブリンは仰向けになりながら絶命していたのだ。
「これはヤバイな。俺の足蹴り✖️ミスリルの硬さだと、ゴブリン位は一撃なのか」
「よし!狩りまくるぞ!!」
ゴブリンが持っていた長剣をコレクションに入れる。
【新しいスキルをコレクションしました。】
あれ?裏スキルじゃないっけ?と思いながらもスキルを確認する。
斬撃Lv3
「お〜。なんかかっこいいな」
すると、更に三匹のゴブリンが現れる。
スキルの確認は後回しだ!とりあえず、今日は狩りまくろう!
楽しくなってきた集は、
その後もゴブリンを倒しまくった。
その数48匹。武器や防具は合計59個。新しいスキルは、4個コレクションした。ダブりばかりのスキルだったが、新しいスキルに集は満足していた。
「そろそろ帰るか」
軽い足取りで街を目指す。
しかしこの時の集は知らなかった。ゴブリンの討伐に賞金が出ることも。そして、討伐確認に耳が必要なことも・・
・・・・
集が初めて倒した仰向けのゴブリンに近ずく影。
「これが記念すべきシュウくん初討伐モンスターですね!剥製にしてもらって、コレクションに加えます!!!」
ブラウンの髪をなびかせながらゴブリンを収納する少女。
彼女のコレクションは方向性を見失いつつあった。