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魔術特殊部隊  作者: 未来
第1章 風紀委員会
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第六話 拳と結衣とときどき治癒魔法

「魔法……ですか」

 結衣は両手で持っていた颯太の足を無造作に手から離しバダンッという音をたてて落とし春香の方を見た。

「そう。魔法。鴨里は治癒系の魔法持ってるんでしょー?」

 桜花高校では入学試験の時、魔術力検査を受ける。その内容はどの魔法が使えるのか、その魔法のパワーはいくらなのか。といった内容である。その時に結衣も検査を受けていた。その際の検査結果を検査の担当教員だった春香は覚えていた。治癒魔法を扱える人はとても珍しいのである。

「えぇ……まぁ。私は治癒魔法使えますけれども……」

 どことなく春香のペースに乗せられていきそうな結衣である。パニックの後に来るどうしようという不安が到達していた。こういう時の他人からの指示はありがたいものである。

「わかりました。やってみます」

 結衣の目は決意に溢れていた。


 治癒魔法というものは虚現物理魔法などと違ってプロセスが異なる。

 虚現物理魔法の場合は数学などで用いられる方程式を考えると分かりやすい。現で100ニュートンの力を起こすためには虚で100ニュートンの力を減らす。というように虚と現で等しくなるようにするのが基本である。

 一方で、治癒魔法の場合は治癒対象者が保有している痛みなどを一度引き受けるのである。引き受けた痛みなどは虚現物理魔法のように虚に移す。構造を見れば簡単に見えるかもしれないが、このような処理を行うことができる魔法保有者はとても少ない。結局のところ才能なのである。

「いいー? とりあえずさー集中するんだよ。手をかざしておけばそのあたりに注目できるから楽にできると思うよー」

 春香は未だに髪をぐるぐるとして遊びながらも的確なアドバイスを行う。

「わかりましたっ楠先生!」

 そう言うと颯太の右側に座り、手をかざす結衣。どことなく空気の流れが颯太から結衣へと動いている感じがしている。治癒魔法を行った際の現への影響である。ただ単純に治癒対象者から治癒を行う者に痛みを移すのではなく細菌の空気感染かの如く、魔法により空気を介して治癒対象を移しているのである。

 春香はふと腕時計を見ていた。すると驚いたような顔をして言い放った。

「もうこんな時間じゃんー。職員会議あるからさー、掃除終わったら鍵閉めて職員室まで返しに来てねー。あとよろしくー」

 そういい残すと、教室から足早に去っていった。結衣は、とてもマイペースな性格であるとこのとき改めて思ったのである。

「と、とりあえず落ち着いてやればなんとかなるよね……。っ……やっぱり治癒魔法は辛いわ。だけど私がやらかしたんだもの責任を持って処置をしないとダメだよね。そうよ、あくまで落とし前をつけるだけなんだからっ!」

 結衣は何を考えていたのか左手を挙げて、勢いよく颯太の腹部へと直撃を喰らわせていた。結衣は「あ……」という声を出していた。結衣の顔からは血の気が引いていった感じが他の人から見てもわかるようであった。しかし、この攻撃が効いたのか颯太は「うぉっへっ」という声を上げ、目を覚ましたようであった。

「よ……よかったぁ……。なんともなさそうで」

 颯太が大して問題なかったことに正座していた状態から崩れるようにして座り方を崩し、胸をなでおろして安堵を表す結衣。一方で颯太は今までに起こった一連の災難なんて知らないかのように……しかし痛みだけはあるという状態を抱えムクリと上半身を起こした。

「うあー……なんか左側の頭とお腹が痛いなぁ……」

 それもそのはず速度だけが落ちたものの、強いエネルギーで頭に激突した箒と、腹部への殴打の2連撃を喰らったのである。痛いのも当然である。とはいうものの治癒魔法によりある程度痛みが緩和されているだけ現状はまともであるのが幸いである。

「ご・・・ごめんね? 痛いよね?」

「ん? あれ・・・? なんのことなんだ? ゆいにゃん」

 やってしまったことに申し訳ないという感情を出している結衣に対して、颯太は一連の事を覚えていないがためになぜ結衣が謝っているのかがわからなかった。そしてゆいにゃんと言う余裕がある程に既に颯太は通常営業に達していた。

「きょ……今日はゆいにゃんって言うの……ゆ、許してあげます……。と、特別ですからねっ!」

「え、本当!? ゆいにゃんゆいにゃんゆいにゃん!」

 ゆいにゃんと呼ぶことに許しを受けた颯太は調子に乗ってゆいにゃんを連呼していた。しかし、やってしまったことがやってしまったことだけに大目に見ている結衣。しかし、どことなく耐え切れないような感じである。

「ゆいにゃんゆいにゃん……あ、やばい。頭がくらくらしてきた……」

 やはり箒のダメージが大きかったのか颯太は倒れてしまった。それも不幸なのか幸運なのか結衣の方向へと上半身が傾き、頭が結衣の太もものあたりに落下した。つまり膝枕の状態である。その状態な上に右手が結衣のふくらんだ緩やかな双丘……女性が持っている上半身のアレを触るような形で乗っかっていた。

「ど……どこ触ってるんですかっ!!! ゆいにゃんと言っていいの取り消しますーっっ!!!」

 意識があればある意味幸運なのかもしれないが、意識がまたもや飛んでしまった颯太にはとても不幸であった。


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