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魔術特殊部隊  作者: 未来
第1章 風紀委員会
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プロローグ

 雪が溶け始めた頃の京都魔術都市。純白の雪による装飾を受けたコンクリートの外壁はひんやりとしていて触った感じは気持ちよさそうである。そんな外壁に覆われた施設の中で一発の銃声が響いた。

「ハロー、俺達ぃテロリストだよーん。撃たれたくなければぁ手を頭の上にのせてぇ向こうに行けよぉ」

「シャッターをしめろ! おまえらはこっちにこい! 携帯電話とかを早く出せ! ……遅いっ! 早くしやがれ!」

 人によって異なる銃を所持し覆面マスクを被った集団が突如として暴れだした。

 集団のうちの一人が持っていたM500散弾銃が火を吹き、天井に向けて鉛玉が打ち出された。打ち出された鉛玉は空中に飛び出ると放射状に広がり白い天井にいくつかの穴をぶち開け、パラパラと漆喰が落ちていった。

 散弾銃が発砲された後まもなくして、入り口の電動シャッターが降ろされ、外部との接続が断たれた。これにて"京都先端技術研究所付属病院"はテロリストと宣言するものに占拠されてしまった。


 京都魔術都市の上空に多用途ヘリコプターUH−60JAが空気をローターで切り裂きながら轟音を立て飛行していた。

「はるにゃん!私達の部隊は屋上から突撃しますよ」

「えー、本当にやらなきゃダメなのかー。仕方ないなぁー。ひめっち! 早く終わらせてビールでも飲もうよー」

 ヘリコプターのキャビンの中にいる跳弾から保護するゴーグルや防弾チョッキにヘルメットなどなどの装備を身につけた女性二人は風紀委員と書かれた腕章をつけた少年少女の装備を確認していった。


 突如に起こった病院の占拠に小さな子供達は怯え、泣き出す者もでてきた。あまりにも高い声で泣かれるもので耐え忍ぶことができなかったのかAK47を構えた覆面マスク男は怒鳴り声をあげていた。

「おい、そこのガキうるさいっ! 黙らせろ!」

「別にさぁうるさいならぁ殺しちゃえばいいんじゃなぁい」

 そう言った日曜日の朝にやっているような魔法少女のお面をつけた男は拳銃の銃口を泣いていた子供に合わせた。

「さぁて引き金を引けばこんなうるさい病院がぁ静かになるよねぇ?」

 男の右手にある人差し指は重厚感のあるP228拳銃の引き金にかけられゆっくりと手前へと押されようとしていた。

「や、やめなさい!」

 いきなり現れた声に驚いた男は驚いた反動で拳銃を撃ってしまった。だが、幸運なことに照準もずれたようで天井の蛍光灯に弾が当たった。

「俺達ぃの邪魔をするのはぁあなたですかぁ?邪魔者は排除しちゃ……」

 男がそう言っていた時にヘリコプターのローター音が聞こえた。室内にいても聞こえる体の中から抉るような大きな音。

「あれぇ?携帯の着信音かしらぁ? やけにぃ大きな音」

 この男を除いた覆面マスクを被った集団は「言われてみれば……着信音にしては大きいなぁ」と思いつつも銃の安全装置を外していった。

「……。撃ちたいなら撃てばいいじゃない!」

 声をよく聞くと可愛い少女のような声だった。そして、挑発に乗った男は銃口を栗色の髪をポニーテールにしたセーラー服の少女へと向けた。

 向けた瞬間であった。吹き抜けの構造になっている外来受付ロビーの天井が一部崩落した。崩落と同時に崩落して出来た穴にUH−60JAから降ろされたロープを伝い何人かがリペリング降下を行っていた。瓦礫の大部分が落下するのとリペリング降下をし終えるのはほとんど同時で差を言うのであれば刹那の瞬間。降下した人たちをよく見ると89式小銃を構え、特殊部隊で採用されているような黒い戦闘装備に包まれた身長的に凸凹な女性2人と彼女達のような黒い戦闘装備に「風紀委員会」と書かれた腕章をつけた少年少女が複数人であった。彼らはまるでプログラムされたロボットのように即座に展開していった。それぐらいまでに訓練されているということなのだろう。

「治安維持委員会です」

「早いうちに投降したほうが身のためだと思うけどなー」

 そう言った凸凹な女性2人は互いに合図すると89式小銃の引き金を引きノズルから銃弾と火を噴き出させた。

「あれぇ? 治安維持委員会とか言っときながらぁまったく当たってないんですけどぉ? ぜぇんぶ外れちゃってますよぉ」

 男の言うとおり、弾丸は男を囲うように、天井が反射して見えるほど清潔感のある床に当たっていた。これでは驚かすことしかできない。当たらないというわけだから男は煽ったのである。 

「そうだよねー。ひめっちが外すわけないもんねー。ちゃんと狙い通りに当たってるんだよねー」

 ニヤリと微笑んだ身長が低い女性は走りながらも銃で撃たれた所を凝視するように見ていた。

 すると、銃で撃たれたあたりが浮き始めその衝撃でバランスを崩した男達は盛大に転んでしまう。その際に生じた隙をつき制圧にかかる。彼女達の制圧は順調に進んでいった。


 セーラー服の少女はパニックの末にただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。この短い間に起こったことを処理しろといわれても出来るはずがない。日常から非日常に突き落とされてしまえば当然だ。

「桜花高校の風紀委員会や! そんなところに突っ立ってたらあぶないやないか。とりあえず、うちにつかまっとき!」

 関西弁混じりでそう言った風紀委員会の腕章をつけた少年は、セーラー服の少女を背中に掴ませた途端に瞬間移動を行い少しでも危険な場所から遠ざけていった。彼の能力では瞬間移動は短距離しか行えないため何度も繰り返していた。

「あかん! これ以上は能力使えん! 誰かカバー頼む!」

 少年が背中に掴ませているセーラー服の少女を庇うように後ろ歩きで後退していく。銃弾が飛び交っていたので低姿勢で後退せざるを得なかった。

 後退していく少年を目指して走る音が聞こえてきた。走る音を出していた主はプラスチック製の、高さが1メートルはあるかと思われる盾を持ち、長さは腰ほどまでありそうな薄い桜色の髪をなびかせて全速力で少年へと接近していった。

「困っているようですわね。ここは私がカバーいたします。早く要救助者を安全な場所に後退させてください」

 桜色の髪の風紀委員は盾に身を隠しながら腰に装着していた9mm拳銃を取り出し発砲すると注目を彼女に集め、少年達を後退させた。


 そんな銃撃と魔術の戦闘が始まって30分経った頃、セーラー服の少女は赤十字の腕章をつけた人達に応急処置をしてもらっていた。

「あ、あの。中で戦っている人達って……どんな人達なんですか?」

 セーラー服の少女は勇気を持って包帯を巻いて処置をしていた赤十字の腕章をつけていた大学生くらいの男に聞いた。

「あー、あれは治安維持委員会と風紀委員会だったと思うよ?」

「風紀委員会ですか?」

 男の答えに問い返す少女

「そう。風紀委員会。確かー・・・市立桜花高校魔術科の風紀委員会だったはずだけどー」

「そうなのですか。ありがとうございます」

「ちなみにね、そういう人達を総称して京都魔術都市では魔術特殊部隊って呼んでるのよねー。もしかして知ってるかな?」


 戦闘を終えた治安維持委員会の隊員や風紀委員らは顔に疲労感と使命感を持たせた面持ちで「治安維持委員会」とキャビンのドアに書かれたUH−60JAに乗ると轟音を響かせて大空へと離陸していった。飛んでいく機体は太陽からの光と被さり眩しく見えた。

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