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エピローグ

 目が覚めた時、僕は宿らしき部屋のベッドに寝かされていた。窓から優しい陽が差し込んでいる。左腕は包帯を巻かれて三角巾で吊るされているようだ。

「目が、覚めましたか」

「カレ…さ、ん」

 掠れた僕の声を聞いて、カレンさんが水を持ってきてくれた。僕は何度か咳き込みながら、それを飲んだ。

「ありがとうございます」

 上体を起こすと、部屋の奥にストラッドの姿が見えた。彼も包帯を巻いていたが、少なくとも僕よりは元気だった。

「宿までストラッドさんが運んでくれたんです」

「えっ、怪我してたのに?」

「なに、軽い軽い」

 豪快に笑って見せる彼は、本当に逞しく見えた。僕は自然と笑顔になって、彼に礼を言った。

「ところで、何でストラッドさんがあんなとこに?」

 僕は疑問を彼にぶつけてみた。何故、僕が斬られそうになった時彼が身代わりとなって間に入ってきたのか。彼は今航海中のはずだ。

「それがよ、聞いてくれよ兄弟。俺はお前さん達と別れた後、北上する予定だったんだ。だがその途中で嵐に遭ってな。それがすげぇ嵐でよ。今こうして生きてるのも不思議になるくらいの、デカいやつだ。勿論船はボロボロ、この街の港に命からがら辿り着いたってわけよ。そんで、宿を探そうと街を見回ってたら、兄弟を見つけたってわけだ。遠くからあの銀髪の言葉が聞こえてよ、何か腹立ったからそのまま突っ込んでったらお前さんが斬られそうだったから、止めたって寸法だ」

「そうだったんですか…」

 いくつもの奇跡が重なり合い、新たな奇跡を起こした。

「さて、兄弟が目を覚ましたなら、俺はメシ食いに行ってくるぜ。後は若いもん同士、な」

 ストラッドが気を利かせて部屋から出て行く。そう、僕はカレンさんに気持ちを伝えなければならない。

「カレン、さん」

「はい」

「あの…僕、色々考えたんです。でも僕、頭悪いので、どんなことを考えたかってあんまりうまく言えないんです。でも、一つの答えが出たんです。…僕は、あなたが好きだ。夢想でも、妄言でもない。僕は、一つの確固たる事実として、あなたが好きだ。僕はあなたのことを守っていきたいし、僕が弱っている時は、あなたに守られたい。でも、これは僕の我侭なんです。本当に都合のいい、どこまでも勝手な我侭です。だから、カレンさんが僕の我侭を聞いてくれれば、なんですけど。もし僕を受け入れてくれるのなら…これからも、僕と一緒にいてくれませんか?」

 カレンさんは、少しの沈黙の後に僕を見ながら口を開いた。

「私、王女として今まで生きてきたので、私自身、とても我侭なんです。だから、今も正直、私の我侭な気持ちがあります。…ニルさん、私と一緒にいてくれませんか?」

「勿論、お供します」

「ありがとうございます。それなら、私もあなたの傍に」

 僕達はお互いに顔を赤らめ、自然に顔を近づけた。そして、ようやく唇を重ねた。



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