バトル、いや、決着―ミエル
僕はじりりと後ろに下がった。通行人が見てくれていれば異変を察してくれるかもしれないが、如何せん人通りがない。きっと、この時間ここには通行人がいないことも調査済みなのだろう。
「しかし、解せないことがある」
僕が身構えて、どうやって応戦しようかと思案していると、ミエルが口を開いた。彼の視線は相変わらずパソコンに注がれているが、口調から少なくともカレンさんに言っているのだけではないことが分かった。
「何故、四天王を二人も倒せたんだろうな、こんな平々凡々な人間が」
むっ。まるで平々凡々が悪いみたいな言い方じゃないか。僕は少しふてくされて、目の前のチビを本気で倒す方法を本気で考え始めた。
「データからは算出できないんだ、その結果は。これは僕のプログラミングが間違っていたのか?」
彼はブツブツと独り言をつぶやいている。本当にカチンときた僕は、ミエルに向かって突進した。
「とりゃっ!…あれ?」
僕の勢いがついた拳は虚しく空振りした。僕はその勢いのままバランスを崩して足をもつれさせた。マズイ、ミエルの攻撃が来る、と思ったが、実際は何にもなかった。彼はパソコンを見ているだけだ。
「足や体軸、腕の動きや角度で君の攻撃は全て見切れる。君の攻撃は当たらないんだよ」
「…お前はどうやって攻撃するんだ?」
「…攻撃は、しない」
「…何で?」
「そういうタイプじゃないんだ」
ここまで自分の特技を極めるというのもある意味すごいな。僕が感心していると、彼は咳払いをした。
「それよりも。僕が攻撃を下すまでもなく、君は疲れて動けなくなる」
「じゃあ僕が攻撃しなかったらどうするんだ」
「それは…困るな」
「よし、わかった」
僕は腕を組んで仁王立ちした。つまり、こうすればいいんだろう。
「お前っ、卑怯だぞ!」
「お前に言われたくないわ」
「かかってこいよ!」
「嫌だ」
ミエルの顔に汗が浮かぶ。これはデータになかったことらしい。
「じゃあ、こうだ」
「きゃっ」
「!」
ミエルがカレンさんの腕を掴む。そうすれば僕は攻撃せざるを得ない。
「離せっ!」
「離すと思うか」
「離しなさい!離しなさいと…言っているでしょう!」
「ぶっ」
カレンさんが腕を動かすと、それがミエルの顔面にぶち当たった。彼は鼻を押さえている。
「カレンさん、さすが僕の惚れた女性です!」
僕はこれを好機と見て、ミエルに向かって走った。そして彼の両肩をがっしりと掴む。
「!」
「これで避けられないだろう」
ミエルの顔面が蒼白になる。彼は初めて僕の顔を見上げた。
そして僕は、後ろにそらせた頭をミエルの顔面に振り下ろした。




