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四天王―ミエル

「んじゃ、縁があったらまたな、兄弟」

「ありがとうございました。お元気で」

「おうよ。カレンちゃんも、またな」

「はい。ストラッドさんも」

 サラアスという国の港で、僕達は別れた。ストラッドはここで補給を終え次第新しい国へ出発するらしい。僕達はとりあえず陸地を進むことにした。新しい馬を借りて、それに跨る。

「とりあえず北に向かいましょう。北に行ってまた新しい国に入ります」

「わかりました」

 この国はコの字に折れていて、北にはまた別の国がある。僕達は北を目指して、南の港を出発した。


 馬を駆って半日、僕達は小さな街に到着した。この街は木製品が特産物らしく、至る所に木でできた工芸品やそれらを売る店がある。家々も木造で、街には木の独特な匂いが充満していた。

「お疲れ様でした。ご飯を食べに行きましょう」

「ええ、そうしましょう」

 僕達は陽が落ちてしまう前に夕飯を済ませることにした。森の中に馬をつないで、街へ繰り出す。

 この時間、あらゆるところからいい匂いが漂っていた。夕飯時、それぞれの家が腕を競うように香りを醸し出している。

「何を食べましょうね?」

「そうですね…。いつも私が決めていますから、たまにはニルさんが決めたらいかがですか?エスコート、してください」

 悪戯な笑顔の裏に照れを隠してはにかむカレンさんがとても可愛い。僕は「肉にしましょう!」と言おうと口を開いた。しかし、それは結果として発声されることはなかった。

「午後五時十二分、予定通り到着」

 僕達はしばし沈黙した。今、確実に、誰か、僕達の会話の中に入ってきた。

「反逆者ニル・サラタイル、王女カレン・シトラスブルク様、四天王第三使者ミエル・カカと邂逅。予定通り」

「―!」

 四天王。出た、やつらだ。僕は目の前にいる小柄な男を見た。身長はまだ子供と言っても差し支えないほどの大きさだった。百五十センチくらいか。その割には小太りな体型をしていて、例えるならマトリョーシカのようだ。

 黒縁の四角い大きな眼鏡をかけたその顔はいかにも実戦タイプではなかった。七三にぴっちりとわけられた黒髪は撫でつけられて、少しの乱れも伴わない。

 格好はグレーのパンツに白いYシャツ、黒いジャケットにポケットチーフ。パーティーにでも出れそうだ。そして何より目を引くのは、彼が持っているパソコン。ノートタイプの最新型だった。彼はさっきからそれを見ていて僕達のことなど一瞥もしない。

「…本当に四天王?」

 僕は気が付いたら言っていた。いやだって、すっごく怪しい。どっかのオタクみたいだもん、この人。

「失礼な!ぼくは四天王の一人、ミエル・カカだとさっき言っただろが」

 憤然として言うが、やはり顔はパソコンの画面しか見ていない。

「えー…」

「ニルさん、油断しないでください。彼は本当に四天王の一人です。彼ほど優秀なパソコン使いはいません」

 成程、パソコン使いか。そうきたか。でも、なんだろう。コイツになら、すごい余裕で勝てる気がする。

「君、今『僕になら楽に勝てそうだ』と思っただろう?」

「!」

「『何故わかった』という顔だな。言っておくが、君のデータはすべてこの中に入っている。油断していると、痛い目を見るぞ」

 成程。油断はできないようだ。



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