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奇跡の始まり

 ストラッドの船を見て、僕は絶句した。一人で船旅をしているというから、てっきりヨットのような小さい船だと思い込んでいた。しかし、それは一人で乗るには大きい船だった。立派な太いマストにかかる帆は、彼の筋肉を見た後でなければとても一人で広げられるとは思わないだろう。

 そして、船の損傷の度合いも思っていたより大きかった。ストラッドには悪いが、一言で言えばぼろい。

「この間嵐に遭ってな。そのせいでひどく傷んだ。その修理と、それが終わったら清掃を頼む。勿論、俺も尽力する」

「はあ…」

 船を目の前にして、曖昧な返事になってしまった。僕は頭を振って、切り替えた。金を手にするためには、働くしかない。

「ニルさん、がんばってくださいね」

「はいっ!」

 カレンさんが船の甲板の上から応援を送ってくれる。単純な僕はそれですっかりやる気になった。

「船長!まずは何をしましょう?」

「…すげえやる気だな。結構結構。まずは船の補強だな。トンカチは使ったことあるよな?」

「はい」

 五歳くらいの時に、父親の見よう見まねで。という後に続く言葉は飲み込んだ。


 それから四日間、僕はストラッドの手伝いをした。体はヘロヘロになったが、体力仕事なだけあって報酬は良かった。船の修理、清掃が終了した日の朝、僕はストラッドに礼を言った。

「気にすんない。こっちこそありがとよ、兄弟」

「これでしばらく食べていけます」

「ところで弟よ、お前これからどうすんだ?どこ行くんだよ」

「決まってないんです。また次の国を目指してどこかしらには行きますが…」

「なら、乗ってくか?」

 ちょっとそこまで飲みに行こうぜ、という軽さでストラッドは言った。僕は思わず前のめりになった。カレンさんも同様だ。

「いいんですか!?」

「海を越えたとこのサラアスって国に寄港するんだ。どうせ一人旅だしな。困る奴はいない」

 僕とカレンさんは顔を見合わせて、同じタイミングで頷いた。

「じゃあ、お願いします!」

「よしきた」

 こうして僕達はストラッドの船に同乗させてもらうことになった。尤も、これは奇跡の始まりでしかなかった。



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