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決着―スコット

「くそっ…」

 僕が歯軋りをする間にも、ライオンは一歩ずつ僕達の方へ近づいてくる。勿論、カレンさんには噛みつかないように飼育されているだろう。

「そうだ…」

 僕の脳裏に、ある閃きが浮かぶ。だがそれは、実現が可能か不可能かもわからない所業だった。

「カレンさん、ライオンが突進してきても安全な場所まで離れてください」

「でもそれじゃあニルさんが…」

「僕なら大丈夫です。さぁ、早く」

 僕はカレンさんを促して、彼女をライオンから遠ざけた。そして僕は、ライオンを挑発してみた。

「おい、こっち来いよ。百獣の王だか何だか知らないけどな、人間様に勝てると思うなよ。お前なんてな、今に僕がけちょんけちょんにしてやるからな。覚悟しろ」

 果たして人間の言葉が通じているのかどうかは定かではないが、きっと動物は僕の挑発を感覚で受け取っているはずだ。その証拠に、ライオンの鳴き声が険しくなる。

 僕は少しずつ横に移動した。そして、僕の真後ろに木がある場所で止まった。

「ほら、襲いかかってこいよ。べろべろばー」

 僕が舌を出して挑発すると、ライオンは猛々しく突進してきた。猪じゃあるまいし、という僕の思考が追い付かないくらいの速さだった。

「とうっ!」

 ライオンが僕に向かって一直線に進んできた時。僕は、跳び箱の要領でライオンの背に手を置いてライオンを飛び越えた。ライオンは僕の後ろにあった木に激突して、伸びている。うまくいくかわからなかったが、どうやらそれは成功したようだ。

「どーだ!」

「ニルさんっ!」

「へ…」

 ガツンと頭に衝撃が走る。頭から地面に叩きつけられ、視界が揺れる。何が起こった?

「紳士にドロップキックとは、礼儀がなっていませんね」

 ふわりと着地したスコットが燕尾服を翻す。彼の跳び回し蹴りが僕の側頭部を捉えたのだと気が付いたのは、その時だ。

「紳士が蹴り入れるか普通…」

「紳士たるもの、武術には長けているものです」

 本当かそれ。

「ぐっ…」

 僕は何とか左腕を支えにして立ち上がろうとする。しかし、その左腕をスコットの鞭で打ち据えられて再び地面に沈む。

「猛獣を倒したことは褒めよう。だが、姫を誘拐するというのは褒められたものではないな」

「元々褒められないような人生送ってきてるんでね」

「そうか。では褒められないまま死ぬといい」

 スコットが短刀を振りかぶる。僕は目を見開いた。ヤバイ。

 僕は反射的に、そう、これは反射的にとしか言いようがないのだが、脚力だけを使ってスコットの左足にタックルをした。

「何っ!?」

 バランスを崩したスコットは、短刀を落として尻餅をついた。僕はすかさず彼に馬乗りになって、短刀を手に取った。

「くっ…」

「これで、終わりだっ!」

 僕は短刀を振り上げ、彼の額にそれをぶつけた。

「ニルさん…?」

 カレンさんが心配そうに僕の方にやってくる。

「大丈夫。剣の柄で頭を打っただけです。殺してはいません。軽い脳震盪は起こしているでしょうが」

「そうですか…」

 カレンさんに安堵の表情が浮かぶ。いくら追手とはいえ、王国のために動いてくれる者に変わりはない。

「今のうちに逃げましょう」

「はい」

 僕はカレンさんの手を取って歩き出した。




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