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バトル―スコット

「どわああああ!」

 僕は迫り来るライオンから全力疾走で逃げていた。確か体は悲鳴を上げていたと思う。かなり痛めていたはずだったと思う。しかし、今ここで動かない限り僕はこの雄ライオンに食われる。その危機感が、僕の体に鞭を打っていた。

「来るなっ!来るな!」

 僕の喚き声は勿論彼には届かない。地面を揺らしながらやってくる。脚力でライオンに勝てるはずもないので、僕は森の中という地の利を生かして木々の間に逃げ込んでいた。

 そして僕は閃いた。そうだ、ライオンは木に登れなかったはず。僕はまるで猿のようにするすると木に登った。子供時代の遊びも満更捨てたものでもない。

「どうだ、来れないだろ」

 僕が勝ち誇ったように言う。ライオンは木の幹をガリガリと爪で引っ掻いている。

「へへん。…って、あー!」

 僕が木の上に登っている間に、スコットはカレンさんの元に近づいていた。

「カレン姫、これで邪魔者はいなくなりました。どうぞ、お手を」

 スコットが片膝をついてカレンさんに手を伸ばしている。僕は今すぐ飛んでいきたかった。しかし、行けない。何せ、足元にはライオンが僕の肉を貪ろうと待ち構えているのだから。

「私は帰りません」

「帰らない場合には無理やりにでも連れて帰るようにとのお父様のご命令です。無礼をお許しください」

「きゃっ!」

 スコットがカレンさんの細腕を掴む。カレンさんは反抗しようともがいているが、彼の前ではまるで意味を成さない。

「離しなさい!」

「ですから、それはできません」

「コラーッ!今すぐカレンさんから離れろ、このサーカス団!」

 僕が木の上から怒鳴ると、スコットは体をそのままに首だけこちらを向いた。

「サーカス?紳士と呼んで頂きたい。それと、離れはしない」

「このっ…!」

 僕の下ではライオンが涎を垂らして待っている。僕はどうしようもできなくなって、木の上で立ち尽くした。

「カレン姫、行きましょう。お父様がお待ちです。城の者達も心配しています」

「私はっ…!」

「あーああー!」

「!?」

 僕は大声を出しながら、スコットに猛進した。彼がこちらを見ると同時に、僕は彼の上半身にドロップキックを決めた。

「よしっ!」

「ニルさん…?」

「あ、木に蔓が見えたので、それを振り子のようにして戻ってきました」

 僕は笑顔をカレンさんに見せた。スコットの方を見ると、彼は地面に寝転がって伸びていた。遠心力を利用したドロップキックはさすがに効いただろう。

「さ、今のうちに…」

 カレンさんの手を取って逃げようとした僕の目の前に、ライオンが立ちはだかる。そうだ、コイツを忘れていた。

「ニルさん、スコットは猛獣使いです。この猛獣をどうにかしないと…」

 全く、爆弾に猛獣とは一体この王国は何をしたいんだ。



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