四天王―ルーク
馬とカレンさんを休ませるべく、森の水辺で休憩した。少しずつだが、隣国への国境が近づいている。僕はきっと、心のどこかで慢心を抱いていた。このまま行けるだろうと。四天王が近づいてきても、愛がある限り僕達は負けないと。そしてそれは、突如にして崩された。
ドガァン!!
「!!」
僕とカレンさんが一斉に振り返る。何だ、今の爆音は。馬が嘶いて、前足を上げる。僕はそんな馬をなだめて、音のした方に注意を向けた。音の源はここからすぐ五十メートルほどのところだった。そこから灰色の煙が上がり、小さな火がパチパチと音を立てて燃えている。
「みぃーっけ」
煙の向こうから、一人の男が現れた。細身で、肩につくぐらいの金髪が所々カールしていた。目の周りをメイクで黒くしていて、パンクロッカーのように見えた。細い目は猛禽類を思わせた。
「姫、お迎えに上がりましたよ」
「ルーク…」
「お名前を覚えていただき光栄です」
ルークと呼ばれたその男は、紳士的に礼をした。彼の目には僕は映っていないらしく、カレンさんだけを見ている。
彼の動きはどこか人間らしくない所があり、しいて言えばおどけているピエロのような動きだった。僕と年はそう変わらないであろう若い男だが、こんな状況にも落ち着いた雰囲気を持っていた。僕は直感で理解した。彼こそまさに、四天王の一人だと。
「さ、姫、帰りましょって。お父上も国民も、みんな心配してますぜ?」
四天王というのがどのくらいの権力があるのかは知らないが、彼は馴れ馴れしい口調でそう言った。これは彼の人間性かもしれない。
「帰りません」
カレンさんはきっぱりと、だが怯えた声でそう言った。ルークは困ったように頭をぼりぼり掻いた。
「参ったなぁ。姫をお連れしないと、俺がお父上に怒られちまう」
ルークはさして参っていないようにそう言った。
「私は帰りません」
「それはまかり通りませんって。そこの優男のどこがいいんですか。そいつはどうせ今から死にます。諦めて俺と来てください」
僕は今ひしひしと感じていた。ルークから発せられているのは、ただ純粋な殺気。僕を殺そうとする気持ち。でも僕はそれに、憤りを感じていた。何故好きな人と一緒になるのに殺されなきゃいけないんだ。お前に何がわかる。
「カレンさんは帰らない。僕と一緒に来るんだ。お前に邪魔はさせない」
「おいおい、何言っちゃってんだ、テメーは。それこそまかり通らねぇって。っつーか、お前は今から俺に殺されるんだって」
「カレンさん、少し目を瞑ってくれますか?」
「は、はい」
僕はルークの眼前に近づいた。そして思い切り―ルークの横面を殴った。
「僕はカレンさんを守る。お前になんか屈しない!」




