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 僕達はなるべく人目のつかない森の中を移動していた。だが体力にも限界がある。かといって交通機関を使えば簡単にアシがついてしまう。僕は思案した。そこで思いついたのが、馬という手だった。

「馬、ですか」

「古風でいいと思いませんか?カレンさんは、乗馬は?」

「嗜む程度ですが…」

「大変結構。僕が今から馬を借りてきますから、あなたはここで身を隠していて。すぐに戻ります」

 僕はまるで騎士の如く、馬で颯爽とこのピンチを乗り切ろうと考えたのだ。下手に自分達の足跡を残すよりもいいと思った。

 僕が厩にて馬を借りる申請書を書いていると、周囲の人間達の話し声が聞こえてきた。僕はそれを特に聞くつもりはなかったのだが、皆の声が大きいため嫌でも聞こえてしまう。そしてその内容は、僕にとって決して好ましいものではなかった。

「おい、シトラスブルク様のカレン王女、今不在らしいぞ」

「不在ってのは、どういうことだ?」

「誘拐されたんじゃねぇかって噂だ。けどよ、もう一つ噂がある。それが…駆け落ちだっていうんだよ」

「駆け落ちぃ?まさか。王族と駆け落ちしようってのはどんなバカだ?」

「知らねぇよ。ただ、どっちにしろ王宮は今大混乱だ。あの王様のことだから、国民に火の粉が降りかかることはないだろうが、それでもこんな噂が流れてると知ったら、誘拐だか駆け落ちだかをしてる奴は、もう終わりだな。今日追手が放たれたらしいぞ」

「マジかよ。もし駆け落ちだったら、相手の男はかわいそうだな」

 僕は自分が唾をゆっくりと飲み込むのがわかった。恐らく、間もなくカレンさんを連れているのは僕だということがわかるだろう。そうしたらフォールにも迷惑がかかってしまう。それに、成行きとはいえ相手の両親に誘拐の心配をさせているのも気が引けた。そしてそれ以上に、追手というのが気になった。カレンさんが言っていた四天王というやつだろう。

 僕は馬を二頭借りると、カレンさんの元へと戻った。

「ニルさん、どうしました?顔色が悪いですよ?」

 カレンさんが心配そうに僕を見つめる。僕は考えたことをカレンさんに話した。

「手紙を出しましょう」

「…手紙、ですか?」

「はい。ご両親は今回のことを誘拐だと思っているらしいのです。そこで、これは駆け落ちなんだ、安心してくれという旨の手紙を書こうと思うんです。僕が言える立場ではないですが、ご両親の心痛を少しでも軽減させたい。真実を述べてください。僕の名前は伏せてほしいですが、まぁ、もう割れてるでしょうね」

「…そうでしたか。わかりました。父と母宛てに手紙を書きます。心配しなくても大丈夫だと」

「しかし、それでも追手はやってくるでしょう。だから、手紙を出すのにも細心の注意が必要です。僕を友人宛てに手紙を書きます。別々に出しましょう」

 カレンさんは両親に宛てた手紙を書いた。これは駆け落ちで、自分の意思でやっていることだから心配はしないでくれ、できたら追手も放たないでくれ、と。だが、最後の願いは聞き入れられないことを僕もカレンさんも知っていた。だから、カレンさんの手紙は鳥を使うという、これまた原始的な手を使って送った。

 僕はフォールに暗号で手紙を送った。もし、もう彼が僕についての追及を受けているとしたら、そんな中で僕からの手紙が届いたところで検閲されるのがオチ。一見して彼の母からの手紙だと見せるための文章を拵え、その中に暗号で本当に言いたいことを書いた。

『フォール、君には多分とても迷惑をかけていると思います。ごめんなさい。もし、僕のことで拷問を受けるようなことがあったら、その時は僕のことを話してください。勿論、フォールの助けを受けたということは伏せて。僕は例え捕まっても、フォールのことはしゃべらない。約束する。君に大したお礼もせずに出てきてしまって申し訳ない。逃げ切ったら遠い地から手紙を書く。それまで、また』

 僕はその手紙をポストに投函した。そして僕達は馬を駆り、ひたすら東へと向かった。国境は、まだ遠い。



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