表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

『波紋の種』 〜詩的散文〜

因果律について、自分なりに柔らかい散文詩にしてみたつもりです。


季節は、

兆しを拒んだまま、静かに過ぎていった。

空は曇りでも晴れでもなく、ただ、濡れていた。


その日、

わたしは風の背に身を預けていた。見えない景色の壁に、そっと触れるように。


声にならなかった祈りがあった。

誰にも触れられなかった微笑もあった。


それらは、風の底流に触れながら、果てしない波紋となって広がっていった。


誰にも気づかれないまま、けれど確かに、世界のどこかを揺らしていた。


わたしが踏みしめた影は、誰かの光に触れていたかもしれない。

見過ごした痛みは、誰かの胸に、そっと芽吹いていたかもしれない。


そう思うと、世界は少しだけ、静かに揺れているように見えた。



終わりを孕んだ始まりは、音もなく、確かにそこにあった。


時のほとりに、種のかけらが落ちていくのを、わたしは見た。


それは芽吹くことを急がず、ただ、静かに待っていた。



その徴は、今ではない。



けれど、風の奥へと運ばれていくその気配を、わたしは感じていた。


名もなき音の粒となって、遥かなる耳の奥に滲んでいく。


誰の記憶にも触れずに、ただ、ひとつの余韻として消えていく。



それでも、わたしは知っている。


その余韻が、誰かの静かな午後に、ふと波紋を残すことがあるのだと。



読んでくださった方々、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ