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残量水濁

バケツに入っている水は少し濁っていた。

そんなものを手に持ってどうするのかと考える間もなく後ろから頭を掴まれ無理矢理顔をその中へ押し込まれた。

苦しい。中途半端な呼吸の時にこんな仕打ちはやめてほしい。


「アスフィリア!」


辛うじてナツの声が聴こえる。

まだ彼女には危害は無いだろうか。

抵抗も余儀無くされた状態でこの拷問は中々厳しいぞ。


「……っ、はぁ……」


髪を引っ張られ、水から引き離される。解放かと思った瞬間にまた押し込まれてしまった。ちゃんと息をしていないのに。

頭上で嘲笑うは冒険者ギルドの男達だ。

先日、メイメイと共に要請を受けて一緒にダンジョン攻略へと向かった人達の関係者だろう。

この冒険者ギルドの人間達は大抵、荒い。喧嘩っ早い奴もいれば無差別で切り刻む者もいる。アスフィリア達が一緒になったのは戦闘に愉しみを抱いている者と自身の能力に自惚れている者だった。

終盤のラスボスに苦戦し、一人はメイメイの制止も聞かず死に急いだ。もう一人は恐怖におののき、治癒してくれていたメイメイを盾にして逃げようとした。その態度にラスボスが苛立ち、結局握り潰されてしまった。

ボトッと落ちた首を拾い上げながらラスボスは高笑いする。

「人間なんてのは愚かで醜い。だからこそ殺す甲斐がある。」

暴れ回ってスッキリしたのかダンジョンは自然消滅し、その場に残されたのはアスフィリアとメイメイだけ。冒険者達は亡骸すら置いていっては貰えなかった。

その後、長い道程をどうにか乗り越えギルドに帰還出来たのは奇跡に近い。失われたメイメイの右眼と右腕は二度と還って来ない。ぐしゃぐしゃだった内臓はライスの治癒能力で元通りにはなったが、昏睡状態が続いた。

その間、アスフィリアは冒険者ギルドへの報告をしていた。

事情説明と謝罪。冒険者ギルドのマスターは静かに受け入れていた。

それなのにこの仕打ちか。

怒りを向けられるのも解る。

仲間を見捨てたと糾弾きゅうだんされても仕方ない。

ありのままを伝えただけだ。

何の役にも立たなかった。

そう受け取られても否定しようがない。

今日は久々にナツと二人だけで食事が出来る好機だったんだ。

サノエの酒場でゆっくり疲れを癒したかった。

そこに現れた冒険者ギルドの男達。

怖い表情でアスフィリアとナツを囲み、有無を言わさず連れ出され、今に至る。

何処かの廃れた建物だった。

壊れかけたトタン屋根の間から月明かりが射し込む。


「もっと苦しめ」


何度も何度も水攻めされ、呼吸の浅さから頭が呆けてきた。

目眩がやばい。視界が歪んで意識も飛びそうだ。

解放された瞬間に水滴が服に流れ込んでくるのが気持ち悪い。


「おい。もう、水ねぇじゃん」

「なんだよ、終わり?」

「次どーする?」

「女の方は?強姦?」

「丁度良いじゃん!美人さんだし」


床に蹴り飛ばされ、変な咳が出た。

呼吸の仕方を一瞬忘れた。

彼らはナツの方へと向かっていく。

今すぐ助けに行かなければならないのに、身体が重くて起き上がれない。

頭のクラクラも治まらず、視界が揺れていく。


「恨むんなら、あんたの彼氏を恨んでね。俺等はトーゼンの仕打ちをするだけなんだから」


卑しい笑みを浮かべながら男達の手が伸びる。

ナツ一人に多勢とは卑怯にも程があるだろう。何より冒険者と名乗っているクセにやっている事は下衆以下だ。

ビリッと乱暴に服を引き千切られ、お洒落なランジェリーがチラ見した。けれどナツの反応は薄く、男達の期待を空振った。


「あっれ……?怖くて声も出ねぇ?」

「大丈夫だよ。優しくマワしてやるから」


ケラケラと零れ落ちる笑いが癪に障る。


「ナツ……!」

「うるせーな」


一人がアスフィリアを蹴飛ばす。

その瞬間、抑えていた感情が爆発した。


「ほら。楽しいコトしよーぜ……」


伸ばしてきた男の手をガシッと掴み、ナツは無表情で顔を上げる。


「……な、なんだよ」

「あたしね、こういうの慣れてんだ。だから怖くも無いし、ヤりたいなら勝手にすればいい。でもね、仲間を足蹴にされて黙ってる様な女じゃないんだよ」


いつもとは違う低い声。見慣れた笑顔の面影すら無く、冷たい空気を纏っている。


「はぁ?何言っ…」


ボキッ、と鳴ったのは恐らく骨が折れた音。

ナツが手を放すと男の手首はあらぬ方向に曲がっていた。


「ぅああぁ……!」

「先にアスフィリアに手を出したのはお前らだよ。これは正当防衛かな」

「……調子に乗ってんなよ」


掴み掛かってきた男の金玉を思い切り蹴り上げ、その後ろから殴り掛かってきた拳を交わし、その背中に肘打ちした。


「アバズレが」


カラカラと引き摺っているのはバールだ。

見慣れた道具があるのは良いことだ。

ナツは口元に笑みを含んだ。


「抵抗出来ねぇようにしてや」


言い終わる前にしゃがみ込み、下から腹を突き上げる様に殴ってやった。

男のクセにそれだけで倒れてしまうとは。


「調子に乗ってたのはどっちだろうね」


残った一人に呟く。

転がっていたバールを拾い上げ、ナツは静かに近付いていく。


「ひっ……」

「これから抵抗出来ない位に殴り潰して泥水吸わせてあげるから」

「や、やめ……」


男は泣きながら手を挙げている。

それでもナツは構わずにバールを振り上げた。



悲鳴の先に聴こえたのはカン、という小さな音。

男は無傷だった。けれど、股下には水溜りが出来ていた。


「襲われる気持ち、分かった?」

「……っ、あ……」

「情けない。まぁ、仕方ないか。転がってる仲間に伝えておいてよ。うちらに手出したら今度は確実に殺」

「わかった!分かったから!もう関わらない!酷い事して悪かった!ほんとにごめん!だから……!」

「……だから?ん?なんだよ、言えよ」

「……ゆ、許してくれ……」

「違うだろうに」


ナツはガシッと男の頭を掴み、引き摺りながらアスフィリアの元まで連れてきた。


「何でアスフィリアの報告を信じなかったの?お前らの仲間は勝手に莫迦して死んだ。相当な自信家だね。そういう奴はすぐに死ぬ。助かるのはいつだって臆病な人間ばかりよ」

「……あ、あの……」

こうべを垂れて謝罪だろう?お前らの言う誠意ってやつを見せてご覧よ」

「……す、すいませんでした……」


びくびくしながら男はナツに言われた通りにした。


「謝罪だっつってんだろ。脳天引き裂くよ」

「ひっ……。も、申し訳ありませんでした!」


ナツの圧に負け、男は大きな声で謝罪した。


「……アスフィリア。許さなくても良いからね」

「え、なんで……」

「は?」


問いかける男に突き刺さるような視線が向けられた。


「うちらの仲間もひっどい怪我したの、お前らの仲間の所為で。どうしてくれんの?あんたの右眼と右腕貰っていい?元はと言えばお前らの仲間がした事だもんね?仲間の罪を償うのは当然の義理じゃないかな」

「……い、いや……それは……」

「冒険者ギルドってもっと気高いイメージあったんだけど、これはちょっと幻滅だわ」


ナツが何を言っても男はもうビクビクしてしまい、会話が成り立たない。


「仲間連れてさっさと帰れよ、バーカ」

「ひぃっ……」


男は恐怖のあまり転がっている仲間達の足を掴んでバタバタと出ていった。


「……ナツ」


訪れた静寂を早目に破り、アスフィリアは彼女に歩み寄った。


「アスフィリア。ケガは……」

「大丈夫。打撲程度だよ」

「良かった。ごめんね、あたしが枷になったよね……」

「ナツは悪くない。オレの所為で巻き込んだんだから、謝るのはオレの方だ。嫌な思いさせてごめん」

「何言ってんの。こんなの全然大した事ない」

「でも……素肌なんて他人に見られたくないだろう」

「……んー……まぁ、以前にもあったし……辛うじて下着だったからセーフ…」


ふわっと肩に上着を掛けられ、彼の温もりに安堵を覚えた。


「ありがとう……」

「服は弁償するから」

「いいよ、他のもあるし」

「させて欲しい。二人で出掛ける切っ掛けになるでしょ」

「あ、そうだね」


結局、今日の食事も台無しになってしまった。

また二人きりになれるのは嬉しい。


「遅くなっちゃったね」

「そうだねぇ……」


身形を整えていると遠くから此方に走ってくる足音が聞こえてきた。先程の奴らが出戻って来たのだろうか。何度来ても打ちのめしてやるつもりだけれども。


「ナツ!アスフィリア!」


登場したのは酒場の店主と常連客だった。二人とも心配そうな表情で息を切らせている。


「サノエ……」

「無事……ではなかったみたいだな」

「もう解決したよ」

「あの連中は……?」

「あー……なんかバタバタしながら行っちゃった」


態々ぶっ飛ばした事を説明する程自信家ではない。適当に誤魔化し、サノエの気を逸らす。


「生きていて良かったよ。あの冒険者ギルドの奴らは以前から気に入らなくてね。丁度ナツ達が連れて行かれた後にカオルが来たから急いで説明して一緒に来てもらったんだ」


サノエの隣にいた見慣れた常連客は【歌い手ギルド】の舞い手であるカオルだ。高身長で華奢な身体つきをしており、一瞬女性かと見紛う程の綺麗な顔立ちをしている。女役の舞い手とあって髪も長く、クールビューティーという印象がぴったりだった。


「服が汚れている……。彼奴等に何かされたか?」


ナツを支えるように手を取り、静かな声で訊ねる。


「まぁ……砂埃もあったし……」

「酷い事とかされてない?」

「うん。あたしよりアスフィリアの方が……」

「あんなの大した事ないよ」


カオルと距離の近いナツにモヤモヤしながらアスフィリアは冷たく言い放った。


「アスフィリア。ナツを危険な事に巻き込まないで欲しい」


意外と物言いがハッキリしているカオルは周りから疎まれる事も多い。敵が多いと不安ではないのかと以前聞いた所、「構っている方が時間の無駄」だと営業スマイルで跳ね除けられた。


「……次は無い様にする」

「お前は、もっと人を頼った方が良い」

「……努力するよ」


アスフィリアは態度を変えずに答えながらカオルからナツを抱き寄せた。


「サノエ。今日はごめんね。店にも迷惑かけた」

「気にするな。日常茶飯事だから」

「心配だからギルドまで送っていく」

「構わないけど」


そう言いながらアスフィリアにそっと手を握られ、ナツはドキッとしてしまった。

こういう不意打ちは好きになってしまう。


「ズルいな」

「えっ……」


もう片方の手もカオルに握られ、両手に花状態だ。

態度からも察するにカオルはナツに好意的だ。それはナツも感じていて好感を持っている。


「青春だねぇ。いいなぁ」


若者を見ながら呟くサノエにナツが然りげ無く困惑の視線を向けた。


「大事にしろよ、ナツ。若い時は一番楽しまなきゃ損だ。恋愛も仕事もプライベートも、やりたい内にやっておけ」


にこやかに諭され、ナツは取り敢えず頷いた。

そのまま四人で帰り、サノエは店に戻り、カオルは律儀に治癒能力者ギルドまで送ってくれた。


「ありがとう、カオル。帰り、大丈夫?」

「あぁ。久しぶりにナツに会いたかったから」

「あら。ありがとう」

「近々、披露する演目があるから見に来て欲しい」

「行く!カオルの舞い、凄く綺麗だし」

「そうか。ナツの為に張り切って舞うよ」

「絶対見に行くね!」

「あぁ。待ってる」


カオルは手を振りながら帰っていった。

治癒能力者ギルドから歌い手ギルドまでの距離はそんなに遠くない。


「アスフィリア、うちらも中に……」

「ナツ」

「ん?」


アスフィリアはナツから手を放し、言葉を選んだ。


「……カオルと仲良いね。そんなに親しかったっけ?」

「そうだねぇ……。以前に少し歌い手ギルドでお手伝いした事あってその時に色々教えてくれたのがカオルだったから、まぁそれで距離感は縮まった感じかな」

「……そうなんだ」

「……ごめんね、馴れ馴れしく見えたかな」

「いや……気になっただけだよ……」

「そっか」


まだ何か言いたげだったアスフィリアに今度はナツが声を掛けようとした瞬間、ギルドの扉が開いた。


「あぁ、良かった。ちゃんと帰ってきた」


出迎えてくれたのは意外にもメグだった。

献身的にメイメイのケアをしていたので姿を見るのは久々だ。お店も1週間程休みにしている。


「……あ、サノエから聞いた?」

「さっきね。あの店の常連客が慌てて駆け込んできて教えてくれた。でも、カオルがいるなら大丈夫だってメイメイが言ってたから待ってた」

「……メイメイは?具合、どう?」

「大分、明るくなってきてるよ。まだバランス感覚が危ういけど」


明るい、という単語を使ったのはメグなりの気遣いだろう。

メイメイは元々明朗快活でいつも笑顔を放っていた。時に大げさなリアクションもするが、それが彼の長所だと皆捉えている。

右眼は失明し、右腕も元には戻らない。内臓の方はライスの流石とでもいうべき治癒能力で元通りになったが、目覚めてからは受け入れるのに時間が掛かったらしい。立ち上がろうにも上半身のバランスが取れないので歩くのも困難を要した。加えて片目だけの生活にも慣れるまでに苦労したという。そんな状態のメイメイをメグは四六時中ずっとケアしていた。文句の一つも言わず、弱音さえ吐かず、メイメイに邪険にされても見離さず、今日まで1日も欠かさずに側にいた。他の治癒能力者達も入れ替わり、ケアを施してはいたがメイメイの機嫌に振り回されて諦めた者や面倒になってメグに押し付けた者も居たそうだ。それでもメグは愚痴すら零さず、誰に対しても変わらない態度だった。

しつこさを通り越して笑えてしまえる位の優しさだとメイメイは受け取り、とても感謝をしている。


「アスフィリア。メイメイが会いたいって言ってる」

「……オレに会ってどうするの?」

「お礼を言いたいって」

「……言われる様な事なんてしてないよ。それに、嫌な事思い出しちゃうでしょ……?」

「お願い。ずっと会いたいって言ってるんだよ。アスフィリアのお陰で助かったんだって。毎回話してくれるんだ」


メグが言うのなら本当なのだろう。けれど、アスフィリアには会う勇気が持てなかった。ギルドに帰還してからメイメイと会っていないのも事実。会った所であのダンジョンでの出来事がフラッシュバックしてしまうんじゃないかという不安も大きい。


「あたしもメイメイに会いたいし、一緒に行こ」

「……分かった」


まだ表情は曇っていたが、ナツに手を引かれてはアスフィリアは断れない。そのまま3人でメイメイの部屋を訪れた。


「……ぅわっ……」


ドアを開けた瞬間、奥からドタンバタンと倒れる音がしたのでメグがすぐに駆けていった。


「メイメイ、ケガは?」

「……いやぁ、済まないね。少しはまともに歩ける気がしたんだけど。やっぱり、以前みたいにはいかないものだね」


聞こえてきた声にナツは安堵する。


「足は?捻ってない?」

「そんなドジな事しないよー!ナツとは違うもん」

「先輩も来てるよ」

「……おやまぁ、それはそれは嬉しいね」


メグに呼ばれ、ナツとアスフィリアも部屋の中へとお邪魔した。


「メイメイ」


ベッドの上に座っている彼の姿を見て、アスフィリアは俯いた。


「やぁやぁ、ナツ!久しいね!」


片腕を広げながらメイメイは大いに歓迎した。

以前に両手を広げて待ち構えてくれる姿を思い出し、その右腕が無い事を思い知らされる。


「上機嫌?だね」

「そうだねぇ。落ち込んでても何も変わらないしねぇ」

「具合も良さそうだ」

「メグのお陰さ。ずっと寄り添ってくれていたからね。本当に感謝してるよ」


褒められてメグは嬉しそうに微笑む。謙遜しない所がメグらしい。否定も肯定も相手の言葉を素直に受け取る姿勢にはナツも尊敬していた。


「アスフィリア」


メイメイに呼ばれ、彼はビクッと肩を揺らした。


「ボクをギルドまで運んでくれたんだって、メグから聞いたよ。正直、右腕が切り落とされた時は死んだと思った。ショック死してもおかしくないってライスに言われちゃったよ。ボクが今生きているのはキミのお陰だ、アスフィリア。感謝してもしきれないな」


真っ直ぐにお礼を言われ、アスフィリアは戸惑っている。

感謝される程の事はしていないのに。


「……オレは、メイメイに謝らないといけない……」

「え、何かあったっけ?」

「……守れなくてごめん。あの時、オレが出遅れなかったら右腕はなくならなかったかも知れない……。右眼だって……あいつの動きさえちゃんと捉えてれば」

「アスフィリア」


名を呼ばれ、アスフィリアは続ける言葉を噤んだ。


「守れてたら、とか、そういうのはもう良いんだよ。起きた事は戻らないし、タラレバ言っても言うだけ無駄な話だよ。アスフィリアは何も悪くない。ボクが周りを見れてなかったから、あの人達に盾にされただけ。生き残ったのはボクらだけなんだろう?馬鹿な冒険者達は自業自得だと思うけどね……って、他所のギルドの人達を悪く言っては駄目だね。今のはナシで」

「……メイメイ……」

「それよりさ、アスフィリア!具現化して欲しいものがあるんだけど」

「……なに?」

「眼帯。包帯だとヘアセット大変なんだよー。すぐ解れちゃうし。お洒落な眼帯欲しいなぁって」

「……分かった」


すぐに具現化し、現れたのはミストグリーンのシンプルな眼帯だった。それをメイメイに渡す。


「お洒落感は……?」

「メイメイはお洒落だから、シンプルなものの方が似合うと思う」

「……あ。メグ、付けて貰ってもいいかな?」


眼帯を眺めた後、自分で付けようとして片腕では無理な事に気付きメグに頼んだ。慣れた手付きでメグは丁寧に装着した。


「どおかな?」

「すごく可愛いよ、メイメイ。ファッションみたいでお洒落!」

「ありがとう、ナツ!」


意外にも喜んでいるメイメイにアスフィリアは内心ほっとした。


「ありがとう、アスフィリア」

「どういたしまして。何かあったらまた言って」

「助かるよ」

「……そろそろ、帰ろうかな。ね?アスフィリア」


彼の様子を窺いながらナツが促した。


「そう、だね……。夜更かしは良くないね」

「もうそんな時間か。二人とも、気を付けて帰るんだよ」

「ありがとう、メイメイ」

「メイメイの事、宜しくね。メグ」

「うん、大丈夫。ナツとアスフィリアも、ゆっくり休んで」


メグはメイメイに付きっきりの為、メイメイの部屋に泊まり込みでお世話をしている。メグ自身が進んでやっている事なのでナツに口出す権利は無い。だから何も聞かないし言わない。


「……ナツ」


メイメイの部屋から出るとアスフィリアに手を握られ、ナツはドキッとした。


「……アスフィリア?」

「……今日は疲れたでしょう?折角、付き合って貰ったのにバタバタしちゃったから、また一緒に出掛けよう」

「……うん!アスフィリアとならいつでも何処でも行くよ!」

「良かった……」

「明日はお仕事?」

「あぁ……そうだね。ウィユの付き添い」

「そっか」

「休みの時は必ず伝えるから」

「うん。楽しみにしてる」


嬉しそうにナツは微笑んだ。


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