寝すぎる事は良くある。
家に着きすぐさま自室へと向かい倒れるようにベッドに横たわった。
さっきの醜態を思い出し枕に顔を埋めるがどうも七宮さんのあの視線を忘れられなかった。
なぜか嬉々としていた
そんな事を思いながらスマホを開きエネコネを起動しようとするが先程の大音量を思い出し慌てて音量を下げる。
むしろ小さすぎる位の音を出しながらスタート画面が表示される。
もしかしたらこれが最後のログインかもなぁ、なんて思いながらローディングを待つ。
少し待っていると見慣れたメインメニューが映し出される。
それと同時にメッセージに通知が来る。
差出人は——ウェザーだった。
『とやみくんやっほ!また会えたね!』
『よくよく考えたら今日いっぱいまではゲーム出来ますね』
『というか、ウェザーさんは仕事なのでは?』
『ん、今きゅーけー中なの。』
大人ってそんなもんなのか、なんて少しそんな事を思う。
ウェザーさんとの付き合いは長くてもこの人の事は大人ということしか知らない、と言うか俺自身の事もあまり教えてないからお互い様ではある。
『どう?新しく友達できそう?』
『そんな親みたいな…心配しなくても大丈夫です』
『本当かな?とやみくん意外と淡白なところあるから心配だな〜』
『だから大丈夫ですって、むしろウェザーさんこそ仕事サボりすぎてまた怒られないようにしてくださいよ』
なんてそんな話をしていると疲れからかいつのまにか寝てしまっていた。
目を覚ますとさっきまで明るかった空がいつの間にか真っ暗になっているのに気づき急いでスマホをつける。
1時24分と映し出されるのを見てため息をついて
もしかしてと思いエネコネを起動する。
「やっちまった…」
4月3日をもちましてエネルギーコネクトのサービスを終了します。プレイしていただきありがとうございました。
スタート画面に映し出された文字はウェザーさんとの別れを暗示していた。
最後くらいはちゃんと別れの言葉くらい言いたかったな。とそんなふうに自分を呪ってしまう。
2度目の別れを経験し、明日の学校に向けてもう一度眠りにつく。
朝学校に着き、前の扉から入ろうとしたが昨日の帰る前の事を思い出しドアに手をかけていた右手を左手で押さえ、後ろのドアから教室へ入る。
昨日より周りに集まっている人は少ないがそれでも何人かは七宮さんの周りに集まっていた。
自分の席につき今日の授業の準備をする。
「おーい、みやとみやー」
準備をしている途中に肩を軽く叩かれ声のした方へ振り向く。
「お前もいたのか、っていうかその呼び方やめてくれ…」
上原遥斗は小中から続く唯一の友達だった。
同じ高校とは知っていたが昨日居なかったから正直違うクラスかと思ってたのだが昨日体調崩して休んでいたらしい。
「にしても珍しいな、お前が休むなんて。気をつけろよ。」
体調不良で休んだ事は小中通して1回も休んだことの無い皆勤賞常連の遥斗が休んだのは意外だった。
「それにしてもあの、七宮さん?って人めちゃくちゃ可愛くないか!」
そう言い遥斗は七宮さんのいる方向に指を指す。
「昨日はこの席からじゃ見えないくらいに人が集まってたぞ」
そんな事を話しながら七宮さんの方へと視線を向けた。
「え…」
目が合ってしまった。七宮さんと。
怖いものを見つけた時に目が離せなくなると言うけどその気持ちを初めて知った。
怖いもの、では無いけど女子とそういう経験がないからって言うのもあるのかもしれない。
頑張って視線をずらそうとした時、彼女が何かを言いたげに口を動かしていた。
距離もあり全く何を言ってるか分からない。
頑張って理解しようとするが先生が教室に入ってきた。
「ホームルーム始めるぞー、席につけー。」
それじゃあな、と遥斗は自分の席に戻っていった。いつの間にか七宮さんも前を向いていて疑問だけが募っていった。