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巧妙な狐
3年も同じ職場で相手の顔を知らないというのは、とても異様なことではあるが、そういうご時世なのだからしょうがない、と同僚の志田が言った。
志田は例えるなら、巧妙な狐と言ったところか。
回りくどい言い方をして、相手をけむに巻いたり、そうかと思えばいやにあっさりして諦めたかと思えば、違う方向から攻め入ったりして、そんな志田に一度、「動物占い」でもしてみろよと言ったことがある。
彼は「なんでだ?」と聞いたが、それは単に彼の動物占いの結果が、狐なんじゃないかと思ったからだった。
そんな巧妙な狐と私はあまり似た性格とは言えなかったが、妙に馬が合った。
年齢もたまたま同い年、中途入社の志田とは同期でこそないが、タバコ休憩のタイミングが何度かかぶったとその程度の偶然で、よくつるむような仲であった。






