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平凡冒険者のスローライフ  作者: 上田なごむ
1-6 十人十色
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30話 家族会議


「私、サウドに住みたいの!」

 

「と、突然なんの話よ! あなたそんな事村で一言も……」


「そうだぜメイベル。隠し事なんて水臭い、それに移住って随分唐突な話だぜ?」


 どうやらブランとマーウも初耳だったようで困惑した様子だ。


 当然俺も初耳なわけだが、雰囲気とは違い、メイベルは意外と行動力があるようだ。


「村で話すと私の事止めてたでしょ? だから黙ってたの」

 

「だからって──少しくらい相談しなさいよ!」


「二人は結婚したじゃない? それと私が街に憧れていた事は知ってたでしょ? だからこの機会にあの家は二人に譲って、私は独り立ちしようと思うの」

 

「家は村のみんなでコツコツと建てていく習わしでしょ! なんであなたが家を出る必要があるのよ!」


「それはそうだけど……別に自己犠牲じゃないよ? 私にとっては親友……"お姉ちゃん"だと思ってるブランに──姉妹なんだから何かお祝いしたいっていうのと、街への憧れを叶えるきっかけかなと思っただけなの」


「働き口も無い、住む家もない、ましてやあなたを追い出すような事、私は嫌よ!」


「追い出されるんじゃないよ! ()()するって言ってるの!」


「まぁまぁ、二人共少し落ち着こう。メイベルは街に憧れてたんだ? ブランはメイベルが心配なんだよね?」 

 家族で無い俺が口を挟むのもなんだが、友人として仲裁ぐらいは構わないだろう。


「ホー……? (テキ?)」


「そうだなぁ」


 少し殺伐とした空気に、リーフルが心配しているので頭を撫でてやる。

 

「……そうよ!──もちろん心配よ! この子に街で一人暮らしなんて無理よ!」


「前まではそうだったよ? でも今は"ヤマトさん"っていう友人も出来たの。街への足掛かりが出来た今なら、挑戦出来るんじゃないかって」


「ヤマトさんも迷惑に決まってるわ! 自分のクエストもしなくちゃいけないのに、あなたの面倒まで見てられないでしょ!」


「そ、そうだなぁ。たまに納品するぐらいの俺が偉そうな事は言えないけどよ、魔物退治だけじゃないとは言え、冒険者は大変だからなぁ」


 マーウは登録済みで冒険者証を持ち資格はあるようだが、専門としているわけではない。


 そんなマーウでもやはり冒険者の厳しさは理解しているようだ。


「だったら私も冒険者になる!」


「なっ……」


「ちょ──あなた無茶言わないの! 戦闘なんてしたことないでしょ‼ なんでそう……昔から()()と決めたら頑固なの……厄介ね──実際に冒険者を専門としてるヤマトからも何か言ってよ!」


「う~ん……アドバイスは構わないし、友人として心配もするけど、基本的には自分の人生は自分の物だからなぁ……」


 マーウとブランの心配、メイベルの自立心、どちらもよくわかる。


 俺が結論を出す事は出来ないだろう。


 メイベルにとっての助け船の提案なら出来そうだが。


「──じゃあこういうのはどうかな? 今日一日俺がメイベルの働き口探しに協力する。マーウとブランはメイベルが一人でどこまでやれるか、後で結果を確認する。それから判断しても遅くは無いんじゃないかな?」


「どういう事? メイベルを冒険者に勧誘するって言うの⁉ そんな事許しません‼」


「ち、違うよ。初歩の初歩の仕事(クエスト)を体験──見学でもしてみるのはどうかな? 戦闘はした事無いって話だし、例え"スライム"でも案外怖いから、実際に見てみるのが早いかもね」


「まぁスライム程度なら万が一も無いか……」


 ……すみません。スライムにやられかけた人間なら一人知ってます。


「メイベルの事頼めるの? ヤマト、正直強さはそれ程って噂だけど」


「確かに強さは下位だと思う。けど仮にスライムの魔石の納品クエストだとすれば、場所は街を出てすぐの草原だし、さすがにメイベルの事を守り切る自信はあるよ」


「そうだぜブラン。ギルドでもヤマトの評判はすこぶる良いんだ、失礼な事言うんじゃない」

 

「……ごめんなさい。妹の事だと思うとついカッとなってしまったわ」


「気にしないで、全然大丈夫。身内の事に必死になるのは当然だし、メイベルが羨ましいくらいだよ」


 こうして血の通った話し合いを見ていると、少し寂しい気持ちにもなるものだ。


「ホーホホ(タベモノ)」


 慰めてくれているのか、リーフルは相変わらずだ。

 

(ありがとなリーフル)


 アイテムBOXからラビトーの肉を取り出しリーフルに与える。


 ──んぐんぐ「……ホッ」


 動物のこういう所は本当に癒される。


「ヤマトさんの提案してくれたようにやってみる! いいでしょ? ブラン」


「メイベルが人生を考えるきっかけになったのは、俺達の結婚なんだろ? だったら姉として、義理の兄として、少しは尊重するよ。な? ブラン」


「全然納得はできないけど……わかったわ。でも! 何もダメだったら当然連れて帰るからね」


「うん! 今日一日頑張って、説得してみせる!」


「じゃあとりあえず俺達は冒険者ギルドに移動しようか、詳しい希望も聞きたいし。マーウ達はデート、楽しんでおいでよ。メイベルは俺が責任持って協力するからさ」


「わかった、メイベルの事頼んだぜヤマト」


「この子の事よろしくね、無茶はダメよ……」


 早朝突然の来客に面食らったが、どうやら今回はメイベルがサウドへ移住したいと言う話らしい。


 俺とメイベルは二人と別れ、一旦冒険者ギルドと併設の酒場へと場所を移し話を聞くことにした。

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