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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゲームの知識で世界最強 ~やり直し人生は推しゲームの世界~

作者: 亀の歩み

ただのお遊びです。本気にされた方は申し訳ございません。

 最近日が沈むのが少しずつ遅くなっているような気がする。


 そんなことを考えながらコンビニに向けて歩を進める。


「たしか、春分だったか?」


 中学の頃に習ったうろ覚えの知識を漁る。


 知っている人が聞けば惜しいと答えただろうがそもそも現在時刻は夜の10時を過ぎている上、ここは片田舎と称するに相応しいような地域である。


 当然そんな俺のつぶやきを拾う存在がいるはずもなく言葉は夜の静寂と冷え切ったアスファルトに染みこんでいく。


 もとより春分は3月下旬を指す言葉であり、現在の3月上旬に使うには少々早いのだが。


 俺の名前は九石淳、十八歳の高専生である。


 珍しい苗字であることは理解している。


 小さい頃から「くいし!くいし!」とよく呼ばれたし、初見で俺のことを「さざいし君」と呼んでくれたのは中学の国語教師が初めてだったぐらいだ。


 まあ、この名字のおかげでできた友人も多いし画数も少ないので自分としては不満はない。


 高専というのは少し特殊で言わば高校と短期大学を足したようなものだ。


 5年制であることや半期制であることも他の県立高校とは違う点だろう。


 他にも春休みが異様に長いことも特徴である。


 2月下旬には既に始まっており、ここから1ヶ月以上休みが続く。


 俺が日中が長くなっているように感じるのもこの春休みを持て余しているからだろう。


 俺は今年留年した。


 これが起業するためだとか家督を継ぐためとかならどれだけいいだろうか。


 俺は遊び惚けていたために純粋に試験で単位を落とした。


 来年度からは後輩だった奴らと同級生に、同級生だった奴らは先輩になる。


 俺の脳内を表す言葉があるとすればそれは憂鬱だろう。


 何に対しても気力が湧かなかった。


 ゲームをしている時だけこの憂鬱を忘れられた。


 モン〇トやオセ〇ニア、秘かなる神ゲーであるかくれん〇オンラインの世界に没頭している時間だけが今の俺の幸福だった。


 今現在コンビニに向かっているのも課金のためである。


 まあ、この生活もいつまで続くかわからないのだが。


 このまま自分はどうなるのだろうと漠然とした不安が脳内をよぎる。


「………やり直したい」


 思わずそんな言葉が溢れる。


 3人兄弟の次男として生まれた。


 小学生の頃は、この歳にしては頭がいいと褒められて育った。


 ゲームがうまくてもともと要領がよかったため勉強も少しすれば平均以上は余裕だった。


 よくこの知識をもったまま過去に戻りたいということをいう人がいるが今の俺が正しくそうだ。


 昔に戻ってビットコインで大儲けしてやりたいと思う。


 そんな現実逃避をしている自分が嫌になってまた現実から目を逸らす。


 家から徒歩5分、そのコンビニが見えてきたところで急な明るさに目を瞑る。


 横を見ると視界一杯に大型トラックが入った。


「えっ?」


 世界が止まったように、ゆっくりトラックが近付いてくる。


 よくTVで人が車にひかれてしまうシーンを見て、それくらい避けれるだろうとか思って舐めていた。


 しかし、このサイズと距離では無理だ。


 トラックは圧倒的重量とスピードを得ているからすごい破壊力だぞ、などと物理の知識を持ち出して想像する。


 運転席には居眠りをしたかなり若い男性がいる。


 おそらく自分と同い年くらいの。


 「彼はもう既に働いているのか、すごいなぁ」


 なんて思っているうちに目の前にまで圧倒的な力をもったトラックがやってきた。


 そんな状況に陥っている最中ふと友人との会話を思い出した。


「トラック転生、異世界チート!」


 なに言ってんだこいつとは思ったが今ではあいつの声ももう聞けないのかなどと考えれば急に悲しく感じた。


 そんな走馬灯とも言えないような時間を過ごした俺は………


 特に何も起こることなくボロ雑巾のように吹っ飛んだ。


◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇


 目覚めると金髪の若い女性が俺をのぞき込んでいた。


 美少女……いや美女と言って良いだろう。


(誰だ?)


 隣には同じくまだ年若い茶髪の男性がいて、勇猛な……いや凶悪な、それこそ盗賊団の頭とかが浮かべるような笑みを俺に向けている。


 筋肉が凄い。頬についた切傷であろう古傷がこの男性の凄みを底上げしていてこの笑みを見れば泣く子も黙るどころか笑ってコサックダンスを踊り始めるだろう。


 ただ不思議と嫌悪感はなかった。


 体を起こして、ここはどこで、あなた方は誰かを聞こうとした。


 別にコミュ障ってわけじゃないから、それぐらいは出来ると思った。


 ところが口から出てきたのは、うめき声ともあえぎ声とも判別のつかない音だった。


 体も動かない。


 指先や腕が動く感触はあるのだが、上半身が起こせない。


(もしかして、事故の後遺症で……?)


 嫌な予感が脳裏を掠める。


 あれだけの大事故だったのだ、何日も意識不明で、今ようやく目覚めたにちがいない。


 全身打撲、内臓破裂、脊髄損傷、半身麻痺って所だろうか。


 後遺症も残るだろう。


 この先どうなるのだろうなど思っていたら男に抱き上げられた。


 ………え、いやマジかよ、確かに細身ではあるが成人男性になった俺をこうも簡単に持ち上げるとか。


 いや、何十日も寝たきりだったのかもしれないし、体重は落ちているか。


 あれだけの事故だ。手足が欠損してる可能性も高い。


 死んだと思って目が覚めたら達磨。


(生き地獄だなぁ……)


 物心ついた初日。


 俺はそんな事を考えていたのだった。


「無職転生」様が本家です。気になる方はそちらをご確認ください。

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