3 就職活動
俺とパチューカはなんとか一人と一匹で森の奥深くから生還した。
幸い、森のモンスターは大した強さではなく、俺たちは大きな怪我は負わなかった。
しかし、それでも冒険の大変さと、仲間の大事さを思い知った。
一人旅は心細かった。
治療薬はあったが回復魔法はない。
毒を持った魔物に会えば解毒方法もない。
呪いをかけるような敵と遭遇すればもっと危ない。
もしも致命傷を与えられたりなにか特殊な魔法をくらったら助かりようはなかった。
俺は自分の未熟さと、そして今までいかにパーティーに守られていたかを思い知った。
だから山から下り、近くの街へと帰還するとすぐに仲間を募ろうと決めた。
俺は自分の能力には自信を持っていた。
何しろ勇者の一行の一員だったのだ。
ドラゴンの使役ならばなかなかのものだ。
魔物は特殊なアイテムによって小型化出来るので、何頭かは同時にパーティーとして動向出来る。
俺とパチューカが辿り着いた街は比較的大きかった。
ここはカルストという名前の街であり、どうやら城下町と隣国へ至るちょうど中間点にあたる、要衝として栄える都市のようで、人通りはたくさんあった。
行商の集落らしく行き交う人たちはみんな肌の色や顔の造作が異なった。
いろんな人種がいて、貧富の差も様々のようだった。
金持ちそうな人間もいれば浮浪者のような格好の人もいた。
ここならギルドのメンバーを募っているバルもたくさんあるだろうと俺は思った。
俺は安いホテルで一泊し、パチューカを休ませて、次の日から早速バルへと通いつめた。
街で一番大きな酒場へ行くと、思った通り、壁一面にメンバーを募集しているギルドの貼り紙が貼られてあった。
人気職はやはり魔法系だった。
特に回復や補助が出来る僧侶や神官は人気だった。
一人での戦闘を経験し、これには内心で深く同意した。
俺がパーティーのリーダーだったら、いの一番にここを押さえておきたい。
探してみると、いくつかテイマーを募集するギルドもあった。
調教師というのはあまり人気が無かったが、しかし、テイマーは大型の魔物や動物を使えるため、戦闘だけではなく物資の運搬などにも役立つ。
さらに俺たちは職業柄、魔物の特徴や生態系に詳しいため、新しいモンスターに出会ったときの対処方法など機転が利き、安全な旅がある程度保証できる。
優先順位は低くとも、決して需要が無いわけでは無かった。
俺はいくつかのギルドをメモして、夜、再び酒場へと向かった。
そこでこのバルで登録されているギルドを差配している店主に話をして、希望するパーティーたちとの面会をとりあえず3組、取り付けた。
面接は明後日、夕方からということになった。
宿に戻ると、そのことをパチューカに報告した。
もちろん彼女(パチューカは雌なのだ)に言葉は通じないが、なんとなく俺が前向きになっていることが分かったのだろう、パチューカは嬉しそうにキューンと鳴いた。
晩飯を食べ、シャワーを浴びてベッドに横になった。
思い返せば、今日はなんと長い2日だっただろうか。
別れ。
失恋。
怒り。
そして奮起。
いろんな感情がありすぎて、疲れているはずなのに全然眠れなかった。
俺は一人前のテイマーになってからずっと勇者のパーティーに所属していた。
だから仲間を探すのはこれが初めての体験だ。
明日はどうなるだろうか。
良き仲間に出会えるだろうか。
天井を見上げながらいろいろと考えていると、パチューカがベッドに上がってきた。
パチューカは俺に寄り添うようにして、首を胸の上にもたげ、そのまま寝息をたて始めた。
俺はなんとなく心が落ち着いて、いつの間にか眠りに落ちていた。