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宿屋をやりたかったが、精霊になってた。  作者: 佐の輔
本編 第二部~雷の精霊シュトローム
86/103

 銀毛のリレミッタ

一応、前もって言っておきますが。

この小説は主人公が逆レイ〇される事を旨としているものではない事を強く言わせて頂く!

そう、同意ありきの話なんだからね。健全なんだからね!

この世界にその手の法律があるかは兎も角として(笑)


「「がっはっはっはっは!」」


 ブドウ色の髪の斧使いと小柄な割に巨大な鉄球棍棒を軽々と操る半獣人の少女が笑い声を上げながら互いに手にルービーとレモンサワーが並々と注がれたグラスをガチンとぶつけ合う。

 ストローはその光景に過去のまだこの宿がワンルームの手狭な空間で嬉し気に食事を楽しむまさに理想の冒険者像であった者達の記憶が浮かんで思わずニヤけてしまう。


「相変わらずいい飲みっぷりだな?」

「そらそうよ!藁男さんよぉ。ここの宿の酒に比べたらよその酒場が出すものなんて、なあ?」

「飲み物だけじゃない。というかほんの半年も離れてない内に宿が砦になってて驚いた。それなのにお酒の種類も料理の数も数え切れないくらい増えてるのに変わらず銀貨たった1枚で飲み放題の食べ放題…もうむしろ驚愕を超えて恐怖しかない」


 彼らはかつてストローの宿を訪れた西方の王都ヴァンナのトレント級冒険者パーティ"暖かい色彩"のリーダー、ワインとその仲間のキャロットだった。他のメンバーには心優しい冒険神官のサンドとスケイルフォークの女性のローズがいるのだが、今日久し振りにケフィアにやって来たのはワインとキャロットのみだった。


「俺達もわざわざこの宿に来たくてこの近くの街…たしかブラウンソックスだったか。そこまでの商隊の護衛なんて似合わねえ依頼受けたからなあ」

「そりゃ、ありがたいね。あの神官さんと鱗が綺麗な美人さんはどうしたんだい?」

「…二人は忙しい。というかラブラブ?」

「西の外れの村に小さな家を建ててみてえでな。ここ最近は別行動してんのよ。まあ…他にも色々あるんだけどな。忠告しとくが、今年から来年にかけては西方には来ない方が良いぜ。最近はキナ臭くなってきてどやっても一波乱ありそうなんだわ。まあ、アンタがここからよそに移らない限り心配することでもないんだがよ? ……もし、その騒動であの二人も無事なら晴れて一緒になるんじゃあねえかと思うんだわ。そうなったら、うちのパーティも一時解散ってところかね。へへっ…」

「そりゃあ、めでたいな。……そういや、かく言うアンタ達こそどうなんだよ? ん?(ニヤニヤ)」


 テーブルに身を乗り出したストローに思わずワインが顔を赤くし、照れなのかキャロットがワインの腹を小突いてワインが咽る。


「ストロー…それ以上は野暮だにゃ~」

「うごゅ!? リレー…だから急に後ろから飛びつくなってんだろ。それと今は仕事中なんだ、構ってやれんぞ」

「あ~そういうこと言うのナァ~? いいんニャよ~アタイは? ウリイとダムダにストローが毛の無いスベスベ鱗肌のそのスケイルフォーク女を美人(・・)なんて呼ぶほど気に入ってたって教えてやってもリャア~♪」

「おいやめろ!? 洒落にならんだろうが! お前の能力もヤバイけど、あの二人はもっとヤバイのはお前だって訓練場で知ってるだろう…。どこまでも通り抜けて追って来れるウリイに俺を強制的に身動きできなくさせることだってできるダムダを本気にさせたら、俺に逃げ場が無い事くらい…」


 ストローは顔を青くして背中のリレミッタに懇願する。


「アタイは美人かニャ?」

「え」

「ん?」

「…ハイハイ、美人で自慢の俺の嫁さんだよお前は。勿論、ウリイもダムダもな」

「ニャフフフフっ!」

「だから止めろってば!」


 より強く抱き付いて頬ずりするリレミッタを振りほどこうとするストローを眺める周囲から生暖かい視線が向けられる。一部、リレミッタの素性を知る男獣人からはまるで戦慄するかのような視線も混じっていた。微かに震えてそれ以上見ないように酒や肴に無理矢理視線を落とす者まで居たことを加筆しておく。


「ゴホッゴホッ! …そういう藁男だって俺達が離れたほんの半年で3人も嫁さん貰ったって話じゃあねえか? 俺は見てねえけど。キャロットはさっき誰かから聞いてなかったか?」

「私はさっきメレンって女将から聞いた。なんでもケンタウルス族とミノタウロス族らしい。去年の終節の最終日に挙式したって。ふたりはもうだいぶお腹が大きいからあんまり仕事に出さないようにしてるんだって」

「藁男よお…随分と手が早いじゃねえの。まさか無理矢理手籠めにしたんじゃあるまいなぁ~?」

「うっ…確かにふたりには断り辛い選択を強いた事は確かかもしれんな。成り行きとはいえ、出会った次の日にふたりとも手を出しちまった事には違いないしな…」

「おいおい…あんま褒められたことなんじゃって、キャロットさっきから食わずに何を見てんだよ?」

「…………」


 キャロットが見ていたのは1階のダイニングに飾らていたショーケース。その名の淡い黄色の結び衣装だった。


「気になるニャ? アレ…アタイが着た結び衣装だリャ。ストローが挙式間近に押しかけたアタイの為に急いで仕立ててくれたんだリャ。そういえば、あの針子のビイってエイの妹にまだちゃんと礼を言ってなかったニャ」

「そういや、ビイもウリイ達の靴を作ってくれたナルカン達もさっきワイン達が言ってた街に普段いるとかってマリアードが言ってなかったか? 明日からのパン祭りで来てくれればいいんだがな…。 あ、そうだ。リレー、そこの恋する娘さんにお前の衣装をもっと近くで自慢してやったらどうだ? ウリイとダムダは自分の部屋に飾ってるしな」

「わかったニャ!」

「え。いいの?」


 ストロー達の言葉を聞いたキャロットは眼を輝かせ、ワインは「すまねえな」とストローに軽く詫びた。


 ストローはやっとリレミッタが背中からどいてくれると期待したが、リレミッタは結び衣装を取りに離れる様子がない。ふと、最初に気付いたはキャロットだった。


「……? アレ…? 尻尾が増えてる…私の眼の錯覚?」

「…いや俺も2本あるように見えるぞ? まだ、3杯目なんだがもう酔っ払っちまったかな…」


 そうリレミッタがフリフリと揺らす尻尾が2本に増えていた。そして、ややむず痒そうにその身をプルプルと震わせる。


 スポンッ!


 小気味よい音と共にリレミッタからもうひとりリレミッタ(・・・・・)が抜け出ると、何事も無いかのようにスタスタと壁まで歩いていき、ショーケースから結び衣装を大事そうに取り出すとキャロットの席まで歩いてきた。


「はいニャ」

「「…………」」


 ワインとキャロットは呆然としていた。が、嬉しいことに同じように目を開けながら夢を見ていたのは他の客も同じだったようで、中にはルービーをズボンにゴクゴク飲ませてやっているズボン思いの男もいたようだ。


「まあ、普通は驚くよねえ」

「リレー姉はオッパイはないけどメチャクチャ凄いニャ!」

「リ、リンちゃん!? それは絶対言っちゃダメだって教えたでしょ…!」


 半ば呆れてはいるが、それを平常心で見ていれられるのはメレン達、ストローの宿で働いてそれなりに長い女衆と一部の所縁ある者達だけだ。


「どうなってんだよコリャ? 獣人はいつからまやかしの魔術を使うようになっちまったんだ…」

「分裂、した…?」

「アハハ。いやいやそんな可愛いモンじゃないから」

「アタイは可愛いニャ!失礼なダーリンだリャ!」



 そう、リレミッタもウリイとダムダと同じくストローの支族となった。オレンジがやや強い金色の毛皮は白銀に変わった。そして、最も変わったのは支族としての能力、“強く増えゆく隣人(ランページ・ワン)”と名付けられた能力。厳密には高等魔術にある分身や分裂などの奥義とは全くことなる別次元の力だった。

 

『何だか…増えるほど強くなってる気がするニャ』


 初めてこの能力を使ったリレミッタの言葉通りの能力。強いて言えば自分のコピーを創り出す能力なのだが、特徴は数に比例して尾の本数が増える。…そして、最も壊れているのが“オリジナルとコピーの戦闘能力は尾の本数の倍数に等しい”ということだ。

 つまり、増えた分だけ弱くなるとかではなくその逆。増えれば増えるだけ途方もなく強くなっていくのだ。

 2体なら2倍の能力で人数も2なので4倍の戦力。3体なら9倍。4体ならば16倍。5体ならば25倍…6体なら…もう書くまいが、戦力を二乗倍にできるのだ。


『ん~…多分、この身体にまだ慣れてニャいけど…本気出せば9体は出せそうリャ!』


 元の身体能力がほぼカンストしていた為なのかウリイ達ほど支族化の補正が底上げされなかったものの、この能力にはストロー達ですら戦慄せざるを得なかった。


『クックックックロアリ…。増えれば増えるほど身体能力も倍化するなどとウモロコシ! 全く、妾も永くこの世界を見てきたがこんな面白い良い女達はそうはいまいンゲンマメ!』

『いやいや姉上…笑い事ではありませんよ?』


 支族化したリレミッタを事後承諾となったが鷹揚に迎え入れた女神ジアと女神ウーンドの反応すらこんな感じであったことを加筆しておく。



「ハア…この能力があればアデク共を皆ごr」

「おい。リレーさん…?」

「都に居る悪い奴らをやっつけてやることも簡単に出来るのにニャ~」

「駄目だぞ? 女神様達にも念をおされただろう。その力はこのケフィアや家族を守る事以外には使わないって。ちゃんと約束したろ」

「みゅ~…わかってるリャ!」


 …既に支族となったリレミッタであったが、あれほどに今年あるやもと囁かれる西方の大戦に執着していた彼女が何故にストローに支族になってしまったのであろうか。



 ◆◆◆◆



 リレミッタは後世に名を残すほどの稀代の獣人族の戦士であることに間違いない。しかし、そんな彼女でも逆らえないものがあった。それは自然の摂理。そう、一節に2度昇る月の夜であった。メレンほどの年齢に達した女獣人であれば問題はないが、成人して子をもうけることができるようになった若い女獣人であればその夜だけは理性を完全に失ってしまうのだ。特に人間の側で暮らさない生粋の獣人達であれば尚更だ。


 終節の末日に晴れてストローの結びの義を遂げたリレミッタは耐えた。全ては女戦士を名乗るほどの誇りの為。アデクに害され殺された仲間達の無念を晴らす為。必死に耐えた。

 支族ではないリレミッタはストローと既に支族であるウリイとダムダが過ごす奥の空間、通称Pゾーンへと立ち入る事はできなかった。なので、半ば伴侶でありながらリレミッタだけ寂しい思いをしていた。それも手伝って月が昇る日が近付くと心配して止めるストロー達の手を振り払って山へと逃げて泣いた。そして、月が昇るとヨーグの峰の奥から響く若い女獣人の嬌声と相手の悲鳴が聞こえる中、リレミッタは単身ブルガの森へと下山してひたすらに憂さを晴らす為にモンスターを狩り散らした。数日後にはストローの宿があるケフィアの広場に肉の山ができており、それを始めて見たストローは腰を抜かしそうになった。


 年が明けてから始節の2度。雪割節の1度目の夜を鋼の精神力で耐えたリレミッタだったが…顔を出す度に心配するストローに申し訳なくなって本格的にケフィアに近付かなくなっていった。


 そして雪割節の半ばも過ぎてだいぶ雪が浅くなり、苔や草の新芽の緑が強くなってきた夜だった。かつてストローの道案内で立ち寄った彼女らスナネコ獣人の見張り小屋で膝を抱えて鼻を啜るリレミッタの下を訪ねる人物の姿があった。


「おっ、お前!なんでこんなところにきたんだリャ!?」

「それはコッチのセリフだっての…ウリイもダムダも心配してたよ。今日はメレン達に宿を任せてあるから心配すんな、よっこらせっと」


 ストローは焚火の前で驚くリレミッタの隣に腰を降ろす。


「ホラ。飲むだろ? 新作のサンドイッチもあるぞ。今日は…まあ、多分ゲテモノの肉じゃないと思う。青い水玉模様もないし泡立ってないしな。あ。ちゃんと魚のジャーキーもあるから心配すんな!」


 ストローは背中の背嚢からワインを2瓶とサンドイッチや他の肴が詰まったバスケットを取り出すと、木のコップを2個取り出して片方をリレミッタに手渡す。


「…コレ。顔が彫ってあるのかリャ? もしかして、アタイかニャ」

「ああ。ゴッボが彫ってくれたんだ。本当は式を挙げた日に俺達に贈る予定だったんだと」

「ゴッボって…あのブルガの方への家に住んでる、木彫りばっかりやってる男かニャ」

「木彫りばっかって…ありゃマリアード達が仕事を押し付けてるだけさ。可愛そうにすっかり痩せちまってよ。俺がマリアードに暫く無理をさせてやるなって言ってやったら泣いて喜んでコレをくれたって訳さ。今夜は奥さんのピラと一緒に宿屋に泊まってるよ。明日になればすっかり全快さ」


 リレミッタはストローの顔をジィっと見た後に手に持ったコップを見る。確かによく見れば自分の横顔が見事に彫られている。


「アンタの持ってるヤツにはアンタの顔が彫られてのかリャ?」

「そうなんだよ見てくれ、リレー!なかなか二枚目に彫ってくれてんだろ」


 嬉し気に見せるストローのコップを無言で引っ手繰るリレミッタ。


「な、何事…?」

「今夜だけ交換、するニャ…」


 焚火のせいか若干赤らんで見えるリレミッタがグイと手に持ったコップを押し付けるので、ストローは苦笑いしながらも栓を抜いたワインをそのコップに注いでやった。


 暫くの間、たわいない会話と暫しの沈黙を繰り返しリレミッタにとっては幸せな時間が流れていった。


 

 バスケットの中身も空になり、ワインの瓶も2本共に軽くなった頃合いになった。相変わらずリレミッタはムッツリと黙っているのだがストローは今夜何度目かの同じセリフを言うのだった。


「……なあ? 皆心配してるぜ。リレーの気持ちは尊重するし、なんなら宿の部屋じゃなく村に新しく家を建ててもいいしさ。いい加減に戻ってこいよ? それに…ホラ…一応、俺達は仮にも夫婦なんだしさ…俺もその心配して…(ゴニョゴニョ)」

「…………」


 答えてくれないリレミッタに溜め息を吐いたストローがふと夜空を見上げる。


「寒い季節ってのもあるんだろうが…この世界の月はホント綺麗に見えるなあ。なあ、リレーもそう思わないか? ……にしても今日はやけに明るいっていうか…月が近いような」

『…クスクスクスッ…』

「……幻聴だ。そうきっと幻聴なんだ。俺はもう酔っぱ」


 ストローが思わず過去のトラウマから耳を塞ごうとした瞬間、何かがガバリと覆い被さってきてストローを押し倒す。手放したコップが地面に落ちてコロコロと転がっていく。


「(ゴンッ)痛え!? な、なんだ! ……ってなんだろこの既視感(デジャビュウ)

「フーッ!フーッ!…ど、どうしてだニャア…!? 月が昇る日までまだだいぶあるはずリャのに…も、もう我慢ができない…できないニャアアアアアッ!?」

「落ち着け!リレミッタ!? それでもスナネコ族の誇りある戦士なのぉ!?ってヤメテェェェ!脱がせないでぇ~! ああっ!? 破くのはもっとダメぇええ!! …はっ!?」


 ストローが金色に瞳を輝かせて首筋を噛んでくるリレミッタの背後でニヤニヤと笑みを浮かべる存在にやっと気付いた。


「クルァアッ!! 何しとんじゃお前はぁ! この覗き魔! 変態金粉まみれ全裸幼女っ!!」

『先輩精霊に向って失礼じゃないか君は~? ルナーは女神ジア様から3人目の番となかなかくっつかないヘタレの様子を見てこいって言われたから~? 仕方なく~?』


 フワフワと宙に浮かんで月明かりの中でキラキラと輝くのは月の精霊ルナーであった。恐らくリレミッタの急変振りもルナー(つまり月そのもの)が直接近づいてきたのが原因であろう。


「早くリレーを元に戻せ!じゃないと俺が物理的に食われるだろがっ!」

「無っ理~♪ まあ精霊なんだし死にはしないよお。ま、とにかくほどほどに頑張ってね~♪ ルナーは月の上から楽しく鑑賞…じゃなかった見守ってあげてるからね~バイバイ~♪」

「ルナあァああ~!? 許さんぞぉ~!! …あ。リレミッタ、ね? 落ち着こうよ、ね?」

「フーッ!フーッ…!」


 ルナーが離れた一瞬、リレミッタの瞳に理性が戻った気がしたストローは何とかそれに懸けようとした。


「も、もう寝る時間だよ…? ホラ、あそこのテントでもう寝ようよ、なあ! そして朝になったら一緒にケフィアに戻ろうよ! お、おお! わかってくれたかリレー。流石は…え?」


 ストローはテントをチラリと窺って頷き、立ち上がって上から退いてくれたので安心したのだが、残酷にも衣服を全て脱ぎ捨てたリレミッタがこの星空の下で最も美しくも恐ろしい捕食者となった雌の貌を浮かべる。


「違う!そうじゃない!? 別にテントでって話じゃないんだああ~! だ、誰か!デスぅ!マリアード! 助けてくれえ~!! せ、せめて手加減してえぇぇえええ~!!」


 哀れにも器用に服を脱がせられながらテントへと引きずられていく男の悲鳴が上がる。


 そして、その数分後にはヨーグの峰々に女獣人の溜りに溜まった嬌声とも絶叫ともとれる声と波濤が響き渡り、ケフィアの宿以外の家屋から驚いた住民達が飛び出してきてしまった。


「ま、マリアード様!まさか精霊様に何かあったのでは!」

「ぐうう…まるで凄まじい哀しみのスピリットの津波が山全体を覆っているようだ…!とてもではないがこれが治まるまで我々は村の外へ出れないでしょう。…ストロー様、どうかご無事で…!」


 声が響いてくる方に祈りを捧げるマリアードだったが、事の顛末は無残な結果となってしまった。


「……おいたわしや、ストロー様。」


 翌朝、捜索に出たマリアード達によって発見された時には、見張り小屋で半裸になってベソをかいているストローとテントの中で発光しながら大イビキをかく全裸のリレミッタの姿があった。


 ストローはマリアードと神殿戦士達に優しく保護されて半日ほどウリイ達が迎えにくるまで聖堂で過ごし、リレミッタは大急ぎで宿へと運ばれることになったのだった。



 ◆◆◆◆

 


「結局…戦には出られなくなったリャが、女としての幸せは手に入れたニャ! 後悔はしてないのニャア!」

「…………」

「まあ、なんだな。藁男も苦労してんだな…あ、そこの嬢ちゃんルービー追加してくれ。…旦那の分も頼むわ」

「は、はい!」


 注文を承ったクリーが厨房への扉を叩いてオーダーのメモを読み上げる。


「了解ですぅ」

「ねえ、クリー。リレーはちゃんとボク達の代わりに働けてる? サボってるんじゃないのかい?」


 ウリイとダムダは最近厨房でも仕事がメインになっている。厨房へと続く大扉の横にある窓から料理や酒を取り出せるようになっているのだ。これならば、最低ひとり厨房に居れば問題ない。なにせ、厨房内の時間は外の1分が1時間に等しい。この窓が実装されてからは内外で時差がでない様に不思議と調整されているのだが…そも、調理の時間もほぼ必要ないので、忙しい時間帯でもウリイとダムダ的には好きにお喋りしたり、リビングで寛いだりとやりたい放題なのだ。


「…なるほど。私の父のように時には無理矢理攫っていけばいいのか」

「おいっ!よくわからねえが、あんまり怖いこと言うんじゃあねえよ!?」


 リレミッタの結び衣装を見つめて何かを決意したキャロットがワインを見やってそんな事を言ってのけるので、思わずワインも逃げ腰になるのだった。



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