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宿屋をやりたかったが、精霊になってた。  作者: 佐の輔
本編 第一部~精霊の宿
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 ストロー・オブ・ザ・マリッジ③

ヤバイです。

何がヤバイかと言えば今月の16日に筆者の愛するkingdomの新DLCがリリースされてしまうからです。

オラ、更新が捗らねえぞ!?(笑み崩れた邪悪フェィス)


◤ストロー◢


「まあ、宿は相変わらず意識外の変わり様だが、村の方は概ね?イメージ通りになったなあ」

「こ、これ!ストロー。お主…一体何をしたんじゃ?」


 長老が孫…同じくらいのご老体にしか見えないがミーソスとその息子であるウイナンに抱き付かれながら俺の元まで来てそう言った。


「ああ説明もせずにやらかして済まなかった。皆も驚かせちまったよなあ。さっきマリアードにチョットだけ話したんだがな、ケフィアって路も狭くて段差も酷いから行き来に不便があったろ? 村の外からの利用者も宿に来るまで結構迷ったって話を聞いてたしな。主目的はまあ別何だが…ついでに村の中をちょこっとだけ整理したんだよ。どうだい? 広くなっただろ!」

「ちょっ、ちょこっとだけ!? 流石に無理じゃ、ストローよ! 聖堂以外は何もかも変わってしまっておるではないか!?」

「だって、家がバラバラな場所にあるのも何かと不便じゃないか? あ。それに家は見た目こそ大して変えてないんだがな…」

「あ!若旦那、それを聞きたかったんだよお!」


 長老達に説明していた俺の所にスンジを突き飛ばしてギューが飛んで来た。それに他の女衆も続く。


「どうした?」

「いや旦那がこの辺を綺麗な平らな場所にしてくれたのは感謝するよ? でもさあ、井戸が無くなっちまったんだよ!これじゃあ水を汲めないよ…」

「ああ井戸か、まあ今後は代わりのモノも造れるようになるかもだけど…てか家の外に蛇口がなかったか?」

「「ジャグチ?」」


 女衆だけでなく、周りの男達も揃って首を捻る。面白い。


「ハハハ。そりゃわかるわけねえか!よし、宿の前に先ずソッチに行こうか」


 俺は皆を引き連れてスタスタとスンジとギューの家に向った。

 家のドアの側にそれはちゃんとあった。


「コレコレ、コレだよ」

「ああ!若旦那、これがそうなのかい? わたしゃあ、てっきり鋼で出来たワームかなんかかと思っちまったよ~」


 俺は蛇口の青いワンポイントが付いた方のコックを迷わず捻る。問題なく水が出る。


「うわ!? ワームが水を吐いた!」

「ひゃっこい!?」


 住民達が驚いて目を丸くする。


「コレで井戸は要らんだろう? 捻れば好きなだけ出るぞ。 あ。青い方だけ捻ると冷たい水だが、赤い方だけ捻ると煮えた熱湯が出るから気を付けろよ? 火傷すんぞ」

「ええ!? 煮え湯のブレスまで吐くんですかい!? …やっぱりこのワーム危ないんじゃあ」


 スンジの顔が恐怖で引き攣る。


「イヤイヤ、どっちも半分ずつ捻れば丁度良い温度になるぞ? ん。気持ち良いな…ホレ、触ってみろよ」

「へ、へえ…おっ!コイツはいいや!」

「うわぁ~!温かいよぉ~」


 住民達がひとつの蛇口に群がって騒ぐ。


「てか皆の家にも付いてっから…っとギュー、家の中は問題ないか?」

「そうだよ若旦那!あれだけ揺れても家の中は無事だったんだけどさあ…おかしいんだよ。もう結構寒いだろう? でも火も焚いてないのに家の中が寒くなくて気味が悪いんだよお」

「バッカおめえ、んな訳あるもんかい!(ガチャ。ドタドタッ)………ほんとだぁ」


 スンジが自分の家の中で呆けている。それを見たギューが顔を覆って「バカだねえ」と嘆いている。


「そりゃあエアコンだ。まあ本来は箱型の送風機械を取り付けるもんなんだろうが…その辺はファンタジー。何とかなるもんさ!これで家の中は常に快適な温度に保たれるようになったぞ」


 俺がそう言うと皆してスンジ達の家の中に上がり込んでギュウギュウ詰めになる。…だから自分の家で確かろよ。ほら、スンジが潰されかけてんぞ?


「ああそういえば、取り敢えず家をこの位置で並べてるんだけど…要望がありゃあ好きなとこに運んでやるぞ? 元を言えば俺が勝手に家を移動させちまったからな」

「今…家を運ぶとかって聞こえたんだが…」

「馬鹿!止せって…」


 お? 早速希望者かな?


「おうとも。ゴッボはブルガの方へのアーチ門の門番だから、ここじゃ逆に遠いな。良し、ちょっと待ってな」

「へ、へぇ?」


 ゴッボは俺がこのケフィアの村で最初に会った人間だ。いわゆる第一村人って奴だな。ゴッボは気の良い恰幅のいい男だ。いつも美味そうに俺の宿の飯を食ってくれるひとりだ。どうしてそんなに焦ってるんだ? まあ、まだ混乱しているんだろう。


「ん~場所は……思い切って現在の場所と対角線上の場所…森の方へのアーチ、はもう堀でこっからは見えないけどその近場だな」


 俺はゴッボの家に触れると、ゴッボの家の周辺一角が淡く光る。そして半透明な模造オブジェクトが浮き上がる。後はマス目をスクロールさせてコレを目的地に動かすだけだ。もはや気分は〇ムシティだ。


「い、家が光った!?」

「あ、アンタ…若旦那は家に何をされるんだい?」


 ゴッボの嫁さんの…確かピラだったかな? そう心配しなさんなっての。今ちゃんと移動すっから。


「ほいや!」

「「ええ!?」」


 俺の掛け声と共にゴッボの家が村の東の角へと移動する。慌ててゴッボとピラが家を追いかけていく。これで良し。


「他に家を動かしたい奴はいるかあ?」


 俺が声を掛けるも皆呆けた顔でゴッボの家を見ている。何でそんなに驚いてるんだ? まさか瞬間移動したのがいけなかったのか? でも家を直接浮かして降ろすと…家の中がメチャクチャになっちまうけど良いのか?


 そこへ、ゴッボ達と入れ替えに一団がやって来た。そういや村の間の岩場を新しく住人となった元ブラックトロール達が拓いてるんだったな。もうその必要はなくなったわけだが?


「ハハハ…一体何が起こったのかと思いましたが、やはりストロー様の御力でしたか」


 どこかくたびれた笑顔を浮かべてツルハシを担いでいるのは、現在元ブラックトロール達の代表的な存在の男であるディモドリだ。


「オッス!ディモドリ達も作業中にイキナリだったろうから驚かせて悪かったなぁ。あ、そういやディモドリは確か新しく家を建てる為に岩場を拓いて建材用の石を手に入れるんだったか?」


「いやぁ~もうツルハシを振るわなくともよくなったのは良いんですが。その、貯めていた石も無くなりまして…はい」

「それはすまんかった。あ、でも家は大丈夫だぞ? 早速建てちまうからな」

「え…」


 俺はディモドリ達をに退いて貰うと俺は追加の家を建てる。う~ん…ディモドリ達は確かこの村に残ったキノエの家族を含めても26人ばかしだったか? なら20(・・)棟もあれば余裕だろう。つーか多分それが限界だな。俺の宿のスキルみたいにウインドウが出てくれれば楽なんだろうけどな…よっしゃ!


「ずああぁっ!!」

「「ええっ!?」」


 俺が地面に手を突いて掛け声を上げると周囲から悲鳴じみた叫び声が上がる。喜び過ぎだろう。


「さて見た目は悪いが住むのには問題ないはずだ」

「わ、我々が住んでよろしいので…?」

「もちろんだ」


 俺のイメージが悪いのか、それとも精霊としての力をコントロールできてないのか…新たに現れた20棟の家はいわゆる豆腐ハウスのようなものだ。材質はコンクリートかな? よくわからん。

 ああ、良かったちゃんと窓は付いてる。しかもガラス窓だな。


「す、すげえ…」

「というか俺達の家より良い家じゃね?」

「多分…」

「おい!この窓に嵌ってるの硝子(ギヤマン)だぞ!? …本当にストロー様に甘えてここに住んでも良いのだろうか」


 それからひと通りの家の説明をし終えると、実際に利用される家は10棟だった。つまり、ディモドリ達は10家族ということだろうか? だが、出し過ぎたな。半分余ったぞ…あ、忘れてた。


「よし、じゃあ残りは獣人達にやる」

「ええっ!旦那ぁ、そりゃあ悪いよ…たたでさえ私達をこの村に置いてもらえてるのにさあ」


 もはや獣人達の代表格とも言える女将のメレンが頑なに遠慮するが、現在村にいない者達が戻ったら改めてまた決めるという話に落ち着いたようだ。毛皮のある獣人達は基本野外でも平気で寝起きできるらしいが、流石にこの村の住民であるコイツらを雨風にさらして平気でいられる者は俺を含めてこのケフィアには誰一人いやしない。

 それでもきっと家は余るとのことだった。


「……俺、冒険者辞めてこの村に住まわせて貰おうかな」

「マジかよ…」


 今日、偶然にこの村に立ち寄っていた冒険者が呆然と村の家々を見てそう呟いていた。


「よし、じゃあ家の件は取り敢えずはひと段落だな?」

「…いや、儂としては言いたい事はまだいくらでもあるんだがのう…まあええわい。お主は早く自分の宿をその眼で確かめたいのじゃろう?」


 長老の言葉に俺はニヤリと笑って答える。


「そうともさ! ホラ、皆も来いよ。 俺の宿が本日から新装開店だ!! 約束通り晩飯は奢りだから来なきゃ損だぞ!」


 

 俺はスキップしながら新しい姿となった俺のホテル…まあ宿屋でいいか。(ちなみに俺は宿とホテルの区別がつかんがな。)宿の立派な玄関へと向かう。俺の後ろを慌ててウリイとダムダがくっついてきた。

 …さてさて、グレードアップした宿の中はどんな感じになってるんだろうなあ? 実に楽しみだ。





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