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宿屋をやりたかったが、精霊になってた。  作者: 佐の輔
本編 第一部~精霊の宿
45/103

 νウリイ

タイトルにあるのは小文字のブイではありません(笑)


「いけぇ! ●ィン・●ァンネル!!

あ~スパロボがやりたくなってきたぜ!

◤ストロー◢


 俺はドアの向こうと地上との時間の違いを説明する。助かったのは時間の概念が俺の記憶と同じだったことだな。距離とかの単位もメートルとかで通じるし、もしかしたら上手いこと翻訳や解釈がなされてるのかもしれないな。言葉も普通に通じてるし、日本語で良いのか?


「時間の流れが違うと?」

「ああそうだ。う~んこの世界の暦はどうなってるんだ?」

「季節は300日で一巡致します。30日毎の10節。…始節・雪割節・大地節・花の節・太陽節・嵐の節・収穫節・星の節・枯れ節・終節でございます」


 ほう。この世界は300日で一年なのか。うるう年とかはないのか? まあ、いいや。俺が元居た地球とは色々と違うってことだろう。それでも一日は24時間なのなら今後は何かと考えやすい。


「ならキリが良くていいな。俺が出入りするドアの奥とこの地上?では時間の流れの差が約60倍なんだと思う。極端に言えば俺が1年間…つまりまるっと300日、あのドアの先から出てこないとしてもだ、コッチではたったの5日しか経ってないということになるんだろうな…」

「そんな事が…!!」


 感極まった表情のマリアードがなにか紙のようなものにガリガリと血走った目で書き殴っている。コレは俺が最近、マリアードの必死の訴えを許してしまった故の結果なんだが…。さっきから俺の言葉や仕草を漏れなく記録しようとするのは流石に止めてほしいんだがなあ。


「ちう訳でな、ウリイとダムダがコッチに戻ってこれるまで…俺の支族としての変化が終えるまでは少なくとも10日は掛かると女神様は言ってたんだ。でもそりゃあアッチの空間での話だから、早けりゃ4時間くらいで皆に顔を見せられるかもしれないな」

「そうなんですか!」


 やっとクリーが笑顔を見せてくれたな。他の女達も安心してるみたいだ。よし、さあ料理を並べよう。やっぱりこうやって手伝ってくれるとはかどるなあ~。しかし、こうやって本来お客であるべき者達に進んでやらせることではないよな。早く、ウリイとダムダに戦力になって欲しいものだ。


 野郎共にはジャーキーとレモンサワー、肉料理がメイン。女衆には率先して手伝ってくれたという理由をこじつけてクリームをたっぷりと盛ったブラウニーを追加で出してやった。最初は遠慮していたが、誰かが口をつけた途端に叫び声を上げながら一斉に食い始めたぜ。まあ、在庫に多分限りは無いんだよなあ。この人数でも好きなだけ喰わしてやるさ。…本当のメインはもう少し後にとって置こうか…フフフのフ。


 忙しいながらもこの楽しい馬鹿騒ぎが2時間ほど過ぎた頃だったろうか。急にバタンとカウンター奥のドアが開いた。まさか…!?


「ボクの旦那様ああぁァぁぁ!!」

「何奴!ぅごえ!?」


 俺はドアから光の速度で突っ込んできたものに捕まってしまう。文字通りにこんな一瞬で!? というか俺までとの間にあった人間や障害物をすり抜けたな今!? そしてこの声は…ウリイか!?


「ウリイ! お前まだ5日かそこらしかアッチで経ってないだろ!大丈夫なのかよ?」

「旦那様っ!ボクの旦那様だ!!ボクのだ! ボクの旦那様!旦那様!旦那様ぁァ…!!」


 ウリイの様子が変だぞ…? というか変なのは見た目もだな。まず肌が陶磁器のように白い。元々の肌は少し茶が強かったよな? でもって髪も肩までくらいだったのが尻に掛かるくらいまで伸びているし、元の艶のある黒髪に銀髪が混じってトラジマ模様みたくなってしまっている。長い耳を覆う毛も白く長くなってまるで鳥の翼のような形状になっているぞ。どういう事だ?


「…ウリイ。人の目もある、俺をいつまでベアハッグする気だ? それと俺の首を嗅ぐな!舐めるな噛むな!? くすぐってーんだよ!」

「ハフハムゥ…! はっ!!ボ、ボクとしたことが!? ゴメンねストロー様…」

「しかし、聞いてた話よりも早かったな? まさかお前、無理矢理部屋から出て来たんじゃあ…」

「違うよっ!そりゃあ…直ぐにでもストロー様に会いたかったけど。ベッドから起きたら部屋のドアが勝手に開いたんだよ。その足で真っ直ぐここまできたんだからね? あ、因みにまだダムダは寝てるみたいだったよ。ボクと違ってもう少し時間が掛かるのかも」

「そうか」


 俺はやっとウリイの抱擁?から解放されて床の上に降ろされたので手で首と顔を拭う。メッチャ痕とかついてそうだな。そして気付いたが、恐らくウリイの下半身、スカート代わりに巻いた布から見える脚が耳と同じような純白の毛で覆われている。足の形とかには変化はないようだが…違った。馬の尻尾のようなものが毛で覆われたドラゴンみたいな尻尾に変わっている。…まさか種族自体が変わってしまったのだろうか?


「ウ、ウリ姉なの…?」


 リンと女衆が恐る恐るウリイと近づいていく。


「へ? 嫌だなあ皆してさ。どう見たってケンタウルス族の美少jなんだあぁぁコレ!?」

「……気付いてなかったのかよ」


 ウリイが自分の身体を触りながら驚愕の叫び声を上げやがった。本当に部屋から飛び出てここまで来たのか。


「ボ、ボクどうなっちゃったの…?」

「それが支族ってヤツの姿なのかもな? なあ、ウリイ。それって元の姿に戻れたりしないのか」


 俺の問いかけに困惑するウリイ。


「わ、わかんないよう」

「とりあえず元のお前のイメージを…強く思い出してみたらどうだ?」


 俺もわからないので適当な事を言っておく。ウリイが「う~ん…う~ん!」と唸りながら目をつむって何かを念じたかと思うと、まるで光の欠片が剝がれる様にしてウリイの顔や腕の一部が元の肌の色へと戻ったのだ。


「「おお!?」」

「ウリイ!戻ってる!戻ってるぞ!」

「え!? ホントかい!」


 だがウリイが気を抜いた為か一瞬で変化後の姿へと戻ってしまった。


「「ああぁ~」」

「あっ…」

「まあ、元の姿には戻ることもできるらしいな。そんなに残念がるなよ?」


 しかし、俺の言葉に急にウリイがモジモジし出した。後ろの尻尾で遊んでたリンがベシベシされているが大丈夫か? ダメージ入ってない?


「どした?」

「………ストロー様は、姿が変わってしまったボクでも側に置いてくれ、る?」


 俺より背が高いのにわざわざ上目遣いするんじゃあない。反則だろ!? でも許しちゃう。


「……当たり前だろ!ホレ、ダムダが起きるまでお前も手伝ってくれ。腹減ってないか? 皆と一緒に何か食って飲めよ」

「………ッ!!」


 照れて顔をそらした俺にまた抱き着いてくるウリイ。心なしか先程よりも締め付けが数段強い…折れそう。リンとメレンの奴らが後ろから指笛を吹いている。止めろよな。そこへいつの間にか膝をついて震えるマリアードの姿があった。


「これが精霊の支族の奇跡…!!素晴らしいっ!!素晴らし過ぎるぅ!! し、しかし、私の手記程度ではこの奇跡の光景を満足に書き留めておくことなどできない!くぅぅ無念だ!! ブラザー・ダース!!」


 羽根ペンと紙と金属製のワンドを放り投げたマリアードの叫び声に、テーブルの隅で獣人達からジャーキーを分けて貰って嬉しそうにしていた巨体の覆面神官であるダースが慌てて飛び上がり、マリアードの前にジャンピング着地する。


「ブラザー・ダース。貴方に最重要任務を与えます! 直ちに王都ウエンディに向い、我がガイアの絵師をここケフィアへと招集するように伝えなさい!」


 ダースは腕をクロスさせるとその場から消え去った。 というか絵師って?


「ストロー様、そして精霊の支族となられたウリイ様…誠におめでとうございます。そしてもう一人の妻となられたダムダ様。どうか折を見てストロー様、そして御三方の姿絵を我がガイアの徒によって残す事をお許し下さいっ!これは全ガイアの徒一同からの願いでございます!!どうかっ!!どうか…!!」


 マリアードが物凄い勢いで床に連続ヘッドバッドを放つ。床が凹むだろう。


「凄いよストロー様!姿絵を描いて貰えるなんて。王族やよっぽど偉い貴族くらいしか描いてもらえないんだよ? きっとダムダも一緒に描いて貰えたら喜ぶよ!」

「そ、そうか?」


 まあ写真なんてないだろうし、絵に描くくらいしか記憶媒体なんてないかもなあ。


「いいぞ、マリアード。俺は正直恥ずかしいが…二人が喜ぶってんならそれでも、でも良いのか? 絵を描かせるなんて大へ」

「ぃいえ!! 精霊信仰者(ガイアスター)所縁の者でもなくとも、精霊様とその支族様を描けるなどという偉業はまさに一介の絵師にとっては至高! きっと涙を堪えて咽びながらストロー様達の御姿を描くことになりましょう!」


 食い気味に頭を上げたマリアードは「有難き幸せ!!このマリアード、より精霊様に尽くす所存!」と言ってまた床に何度もヘッドバッドした。丈夫だなあ~…。



 姿絵とか、俺は大袈裟だとは思うがな。ちうか泣きながらちゃんと絵を描けるものなのか? 少し、不安だ…。



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