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宿屋をやりたかったが、精霊になってた。  作者: 佐の輔
本編 第一部~精霊の宿
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 個人面接~ダムダの場合


 リビングへのドアが開き、ストローが顔を覗かせる。


「ウリイとの契りとやらは成功したみたいだ。しかし、女神様も身体が光るとかそういう情報も教えて欲しかったんだが? 正直言って驚いたんだぞ。つうか、ウリイの居る部屋に入れなくなっちまったんだが、ウリイは大丈夫なんだろうな?」

『ほう、新たなる精霊はオスとして有能である事が証明されたなンテン! ここは童貞卒業オメ!とでも祝いの言葉を贈るべきかなスタチウム?』


 熱心にダムダに何か教えて込んでいた女神ジアが眼を歪ませて笑う。ダムダはこのやり取りを聞いて顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。


「ど、童貞ちゃうわ!…イヤ、俺が新たにこの世界で精霊とやらとして生まれたんなら間違いじゃあない、か? まあ、自分なりには上手くできたと思うが…そこはイマイチ自信ないなあ」

『フハハハナカマキリ! なに、今後は共にいくらでも同じ時間を過ごせるのだルマオコゼ。仲睦まじく励むが良いぞウザメ? この娘らの心配ならば無用ルシ。そなたの支族となる為に肉体が精霊と近しいレベルまでに変換されているのでなミヘビ。絶対安静の為にそなたが創り出したあの空間が、変換を無事に終わるまでロックされたのであろうよコエビ。愛しい女を案じる気持ちは解りもするが、早くともこの世界の時間で10日は掛かるであろうンナンサクラソウ…』

「そんなに!?」

『まあ、この空間は特殊で地上との時間差は60倍前後ありますからね。実際は早くて4時間といったところでしょう。それでも凄い事なのですがね。実際に地上では数年単位の時間が掛かってもおかしくないのですよ? 平たく言えば、生物としては全くの別物になると言っても過言でもありませんから。まさにあの閉ざされた部屋はサナギなのです。彼女はストロー、あなたの為に現在も生体情報の書き換えが行われているのですよ』


 女神ジアの隣で片眼鏡をクイとやりながら女神ウーンドがそう補足する。


「生体情報の書き換え? まるでSF…いやスペース・ファンタジーだな」

『あなたは本当にその、ふぁんたじいという言葉がお好きなのですね』

「…………」


 ダムダがその場で黙って俯いている。


『―怖いか? 我が愛しいミノタウロス族の娘、ダムダよ―』

「い、いえ!ジア様ぁ…ただ俺ぃ、やっぱりウリイみたいに勇気が出なくって…」


 女神ジアが優しくダムダに問いかけた。そしてフッとまだ眼だけで笑うとストローの方を見やる。


『―ほうれ、そなたに身を捧げる可愛い女がここで困っているではないか。そなたが男を見せてやるべきではあるまいか?―』

「…………」


 ストローは軽く溜め息を吐くと、ダムダに近づくやいなや両腕で抱き上げてしまう。


「きゃあ!?」


 自分よりも一回りは小さいストローに軽々とお姫様抱っこされてしまったダムダは可愛い悲鳴を上げてしまう。それを見た女神ジアは元の男とも女ともつかぬ声に戻って笑い声を上げる。


『フ フハハハナアブ!! そうだ、それでこそ男よルガオ! 女は度胸、男は愛などと地球神の奴も上手い事を言ったものだなデシコ! きっとそなたらなら上手く事を成せるであろうシガエル。では、我はそろそろ帰らせて貰うとするピナス』

『ジア姉様、もう戻られるのですか?』

『知識欲の妹よ、我はこれでも大姉上の治める西ルディアと同じくらいに広い南ルディアを統治しておるのだぞウアザラシ? ケンタウルス族の娘ともども無事に支族化を果たせそうだと我は確信しているのだリア。我が地に戻りて子供らの面倒を見ねばなるまいイダコ。 精霊シュトロームよ、次にまみえる時はそなたらの子供が生まれし時であろうコッケイ。娘らも、困った事があればいつでも我を頼るが良いガグリ。これでも我に子育てや夜の営みで右に出る者はこの世界にはおらぬと自負しておるのでなガスクジラ… ―では、さらばだ。また会う時まで、息災でな―』


 そう言って女神ジアの姿が様々な動植物のシルエットに変化しながら映像から消え去った。


「すごい濃い女神様だったなあ。 …んじゃ、ダムダ行くか?」

「は、はぁい…」


 ストローが自室が連なる廊下へと出ようとすると、後ろ…正確には映像に映る女神ウーンドから話しかけられる。


『ストロー、改めてあなたに謝罪します。あなたの了承を得ずに精霊の核としてあなたの魂を使用したのは私の独断です』

「……もう、いいさ。精霊ってのが未だにピンとこないが。自分でも最近、その精霊の力だか知らんが変な感じはあったんだ。…それに、この世界に降ろしてくらたから、ケフィアの皆やウリイにダムダにもこうして出会えてんだからな っと!」


 そう言ってワザとダムダを抱え直すストロー。ダムダは目を潤ませてギュっとストローの首に抱き着いた。


『そう言って頂けると私も救われます…ですが、それはそれ。私にはあなたに対する非があるのは確か。 ですから、もし今後あなたが願う事があるならば、その時は私ができるだけ要望を叶えるということで…また近い内にお会いすることになるでしょう。…あ、因みにその電話(・・)に私に直通の回線を繋げておきましたので。では…』


 そう言って女神ウーンドが軽く頭を下げると映像が歪み、元のリビングの壁に戻る。黒電話をよく伺うと、本体に"1"のプッシュボタンが出現していた。


 それを見届けたストローは壁に向かって軽く頭を下げると、ダムダを抱っこしたまま3つ目の部屋へと向かった。



 ◆◆◆◆

◤ストロー◢


 部屋へと入ると急にダムダが「お、俺ぃがストロー様を悦ばせてみせますぅ!」とか言って俺を裸に引ん剝くとベッドに放り上げやがった。


「ちょ!? ダムダ、お前そんな事を誰から教わったんだよ!」


 目の色を変えたダムダは恐らく色事には疎そうだったのにとんでないテクニシャンだった。と言っても極度の緊張と興奮が入り混じった物凄い力技だったと言っとくぞ。なにせ15とか冗談のポテンシャルを誇るあのダイナマイッ!ボディだからな。そりゃあ、とんでもない破壊力だった。俺が3回ほど倒されてしまった後で、遂に観念したダムダと契りを交わした。打って変わって大人しくなってしまった彼女はやはりあの真っ黒女神から色々と吹き込まれていたみたいだった。


「いきなりあんな無茶しなくてもよかったのに…疲れただろ?」

「う、うん…」


 その後はイチャイチャってよりは、落ち着いてきたダムダから色んな話を聞いた。ウリイと出会ってからの話や、そして自身が奴隷として連れ去られる前の故郷の話…。最初は懐かしむような顔で話してくれていたが、やはり辛い記憶が勝るのかウリイ同様に泣いてしまった。


「うっ うっ… (トト)(カカ)祖母(ババ)達に会いてぃ…」


 俺はまた背中をさすってやることしかできなかった。 ん? いや待てよ…!


「ダムダ!それ、できっかもしらんぞ!」

「…え。そ、そいは俺ぃが死んじゃうってことですかぁ?」

「馬鹿っ。誰が俺のおん…んん!お前を死なすかよ。女神様がさっき俺の願い事を叶えてくれるって約束してくれたろ? なんてったって女神様だ。そんくらい余裕だろう!」


 俺の言葉に驚いた表情をしたが、泣き止んだ彼女は目を細めて笑った。


「フフッ。流石は精霊様だぁ。そんな事を平気でできると言っちゃうんだなぁ…アレ? 俺ぃ…眠くなってきた、よぉ?」

「安心して寝てくれ。お休み、ダムダ…」


 そう言って俺は彼女の額に軽くキスした。やった後に勢いで似合わない事をやったと後悔したが、ダムダは笑顔で寝息を立てていた。…良かった。恐らく今、俺は物凄く顔が赤くなってる。見られなくて良かった。


 俺はダムダに掛布団を掛け直すと部屋を出る。少しして部屋のドアが輝き出した。


(:対象名・ダムダと精霊・シュトロームとの交接条件をクリア。:対象名・ダムダの精霊支族への適応を開始します。対象は一時的な休眠状態に移行します。)


「よし。ダムダも問題は無かったようだな…しかし、いきなり嫁がふたりもできちまうとはなあ。アレ? 嫁で良いのか? まあ、時間はあるからこれから考えればいいさ。先ずは風呂にでも入ろう…」


 少し、疲労感を感じながらも俺は風呂場へと向かう。



 そういや、宿で皆を待たせちまってるなあ。取り敢えずは二人の説明と適当に飯を出すとしよう。うん、そうしよう。



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