個人面接~ウリイの場合
タイトルに特に深い意味合いはありません(笑)
連休中はなるべく更新に専念したいと思う所存。
◤ストロー◢
コンコン コンッ。
部屋の外からドアをノックする音が聞こえる。それからドアの前から中に入ってこれずにまごついている雰囲気を感じるぞ。
…仕方ねえなあ。
「ウリイ、入ってこいよ?」
ゆっくりとドアが開く。そこには顔を赤らめて俯いたウリイが立っていた。
「し、失礼します…」
ウリイがおずおずと部屋へと入ってくる。俺はすまし顔でベッドに腰かけているが、心臓はバクバクで破裂寸前だった。手汗がヤバイ、ポッケに突っ込んどけ。
「ほれ。突っ立ってないでお前も座んなよ」
「は、はい」
ウリイは俺の隣に腰を掛ける。なるほど後ろの足は女の子座りのようにしてベッドに腰を掛けるのか。こうして見るとウリイは脚が長いだけで上半身は本当に女の子なんだなあ。それとも俺がやや胴長の短足なのか?
「あ、あの…」
「どした?」
ウリイが俺の顔をじっと見ている。
「その…ボクからストロー様に触っても良い、かな?」
「え。散々ダムダと一緒に俺を押し潰しといて今更かあ? 好きにしなよ」
ウリイが、「じゃあ…」と言って俺の顔や髪、腕や腹や足を撫でるのでかなりくすぐったい。そんなに男の身体が珍しいのかね?
「……不思議だな。精霊って言っても身体は単なる人間の男の人みたいなんだね」
「そりゃ、精霊つってもなあ。俺も実感はないんだよな、コレが」
俺は好きなように身体を触らせてる内に変な気分になってきちまった。拙いな… なんて思ったら隣から衣擦れの音が聞こえる。ウリイが上着を脱いでスカート代わりの布を解いた。俺は思わずゴクリと喉を鳴らしたのがバレなかったかと焦る。俺も服を脱ごうとするとウリイがそっと手伝ってくれた。正直、死ぬほど恥ずかしかった。もう、我慢できなかったのでウリイをベッドに押し倒すと小さな悲鳴が上がる。
「わ、悪い…」
「ボクも驚いただけなんだ、でも…怖い事はしないでね?」
頑張った。俺はベストを尽くした。正直言ってウリイの期待と不安とか色々な感情がないまぜになった表情を見た瞬間、理性が軽く飛んでしまったが。ああ、何故に女性経験の体験記憶が俺に無いのか? その精霊とやらになる過程で消去されてしまったのか? まあ、俺のアニキが隠し持っていたアダルトビデオの記憶があって正直助かったな。まあ実践するのとは別次元だがな。なんせ実家にはリビングにしかビデオデッキがなかったから、俺も家族に隠れて満足に見れたのは1、2回だけだったな。とかそんな余計な気苦労の記憶しか残ってなかったのが悲しい。
「……まだ痛いか?」
「…ううん。でも、もうちょっとだけ…こうしてたいんだ」
俺はベッドの上でウリイと繋がったまま捕まっていた。背中に腕を回され、彼女の4本の足でガッチリと俺の背中と腰がホールドされてしまって俺は身動きできないでいた。傍から見るとクモか何かに捕まってしまった獲物にでも見えるのではなかろうか?
「んぁ!? ボクの中にッ ストロー様の熱いのがイッパイ入ってッ きてるよ…!」
「………ウリイ。それは、俺から精霊的なパワーがお前に与えられているって解釈でいいよな?」
「ええ? ボクそもそも始めてだし、よく…んんッわからないよぉ」
「イヤ、文章的に重要な解釈だから。そういう事にしといてくれ、頼む」
それからしばらくの時間が経ったが未だ彼女は俺を離す気配がなく、俺も同意の上でイチャついていた。突然、ウリイが俺から視線を外して口を開いた。
「ねえ、ストロー様。ボク、お願いがあるんだ…」
「ん? なんだよ」
「ボクの頭を撫でてくれないかな…」
「…いいぞ」
俺はウリイの頬を撫でつつ、彼女の綺麗な黒髪を優しく撫でる。
「……ボクの家族は、代々東の王族クーに使える騎士だったんだ。だから、家族は騎士道とか色々と厳しかったけど。…あの内乱で死んでしまった父や二人の兄は歳の離れたボクの頭をよくこうして撫でてくれたんだ。…グスッ でももうこうして撫でて貰えなくなってしまった。あ、あの頃は子供扱いされてるみたいで、嫌だった、けど… ま、また頭をなで て 欲し いん だよぅぅう うぅぅぅぁ~!!」
徐々に鼻声になっていったウリイは遂に俺の胸に顔を突っ込んで泣き声を上げ始めてしまった。そりゃあまだ17だろう? 戦で身内を殺されて。しかも奴隷にされて死ぬまで使い潰されかけていたんだよなあ。ダムダとか他にも仲間がいたってのもあるんだろうけどさあ、そりゃあ辛かっただろうなあ。
「安心しろ。俺が代わりにお前の頭を撫でてやるし、俺はお前を置いて死にゃあしない。お前とずっと一緒にいるから。だから、もう泣くな」
「……う゛ん゛…!」
俺は軽く背中をポンポンと叩いてやる。まるで小さな子供をあやすように。するとだ、不思議な事にウリイの身体が光り始めたので焦る。
「何事っ!?」
「うわあ!ボ、ボクの身体から変な光が出てきてるよ!?」
(:対象名・ウリイと精霊・シュトロームとの交接条件をクリア。:対象名・ウリイの精霊支族への適応を開始します。対象は一時的な休眠状態に移行します。)
ん? 久しぶりに出たな。条件をクリア…ってことは例の血の契りってのは成功したらしいな。と言ってもウリイが光り出すとかまでは聞いてないんだが?
「大丈夫だ。血の契りとやらが成功したらしいぞ。ちょいと体が慣れるまで時間が掛かるらしいが、その間はこの部屋で休んでくれ。なに、この部屋はもうお前のもんだしな」
「ボクにこんなすごく立派な部屋をくれるの?…嬉しいよ! 安心したら、ちょっと眠くなってきちゃっ た… ゴメンね ストロ …様」
俺は立ち上がるとウリイに布団を掛けてから彼女の前髪をクシャクシャしてやる。
「起きたら、晴れて俺とお前は、そのえーと…家族!そう家族だな」
「フフフ…ボクの旦那様になってくれるんだよね? 嬉しいなあ…ストロー様、じゃあお言葉に甘えてボクは少しだけ寝かせて貰うよ。あと…ダムダを早く迎えに行ってあげて。きっと、不安だと思うから、ボクよりも うんと 優し くして あげ よ…」
俺は目を閉じてしまった彼女の頬を軽く手の甲で触る。
「わかってるよ…また後でな」
俺は着替えると部屋を出る。部屋を出た途端、ウリイの居る部屋のドアが閃光を放ったかと思うと完全にロックされてしまう。
「チクショウめ。これじゃあ様子を見にこれないんじゃあねえか。仕方ない、詳しくはウーンド様かジア様に聞くとするか…ウリイの奴、大丈夫なんだろうな?」
俺はダムダの待つリビングへと向かうことにした。




