ウリイとダムダ④
今日はもう一話書きたいところ。
冒頭のキャラ視点はダムダです。直しました。
あとジアの語尾を動植物に変えます。
◤ダムダ◢
「あわっ あわわわっぁわ!?」
どうしよう!? ウリイが精霊様に、きゅ、求婚されてしまったよう! …ってアレ? 俺も一緒に連れて行きたいって言ってたから…? …お、俺もかぁ!?
どどどどど、どしよ!? お、俺ぃ…里に近い歳した男の人は居なかったしなあ。そういう手の話も母と祖母から少しは聞いてたけど。男の方は父は恥ずかしがってすぐ逃げてたからなあ…。
……母…父……里の皆。あの日、虫も鳴かない夜に襲ってきた獣人狩りに俺以外の殆どが殺されてしまってよう。人間族はとてもおっかないんだよぅ…! 中にはクリーみたいな良い人間だっているんだろうけど、俺はまだ怖いんだよう。
目の前の精霊様、ストロー様にさあ。死に掛けだった俺とウリイを助けた貰ったってのによう。俺ってば最初は人間の男だと思ってあんな態度を……普通なら怒って当然だろうけどさあ、ストロー様はそりゃあ優しい方だったよぅ! あんな御馳走をたらふく食わせてくれたし! 俺達が裸なのが可哀相だと服まで! こんな良い男はテバの山の中をいくら探し回ってもいやしないよぅ!
だからだろうなぁ…隣にいるウリイの気持ちが直ぐにわかった気がしたんだぁ。最初はそりゃあ必死だったんだと思う。けど、惚れずにはいられなかったんだろうなぁ。無理も無いか、亜人を差別しないし、仕事をくれる、そして…あの宿の外に出て皆と無事を確認して、クリーが抱き着いてきた時だなぁ。
一瞬だった。空が砕けたかのような音と共に天の矢が広場に落ちてきたかと思ったんだよぅ!? 俺もウリイもクリーも皆、広場に伏せちゃったよ。まあ、俺も父から山に天の矢が降ってきた時はこうしろって教えられてたしさぁ。俺とウリイは顔を上げてストロー様の方を見たら息が出来なくなったんだぁ。
ストロー様の身体と眼が淡く光ってたんだもんよぉ。騒ぎ過ぎて怒らせてしまったかと思ったけど、俺は違うように感じたんだぁ。 …ストロー様、泣いてる? ってなぁ…。
『ストロー様は彼女の脚の傷を見て憤りを感じられてしまっただけのようですね』
あの司祭様の言葉がまだ耳から離れないんだぁ。そうだんだよなぁ~…後から皆に詳しく聞いたことなんだけど、ストロー様は傷付けられた俺とウリイを見て、あんなもんじゃないくらいに怒ってさぁ。天の矢を何発も振らせて奴隷使い達を追っ払ったんだって言うんだよぅ。
俺達の為にここまで怒ってくれる方の側で暮らせるんだったら。そりゃあ幸せになれるんだろうなぁ…。
……でもぉ、俺ぃお嫁さんなんて上手くやれっかなぁ~。点で不器用だしぃ、その…父と母みたいな男の人と女の人が茂みでやってたこととか…あんまり自身ないんだけどぉ。でも、ウリイはその辺詳しそうだし。一緒に貰ってくれるんなら心強いかなぁ?
よぃしっ!!決めた! 俺もウリイと一緒にお嫁さんになる!! 父!母! 里の皆! 極楽から見ててくれよぅ! 俺ぃこの人と一緒になるよぅ!!
◆◆◆◆
◤ストロー◢
何だ? 二人の様子がおかしいし、周囲の雰囲気もおかしくないか? 妙に興奮しているというか…マリアード! 困った時にはマリアード…だ…って駄目だ。まだ床にへばりついて心を閉ざしている。暫く使い物にならないぞコレ。
顔を真っ赤にした二人にまたまた女性陣が取り囲む。何故か黄色い悲鳴を上げているんだが。ガタイの良い赤毛のイヌ系獣人の女性がウリイの尻を豪快に叩いて笑う。
「シャっきりしなよっ!こんな良い男があんな事をこの面前で言ってくれたんだ。ここが女の見せどころだろ! いやはや、精霊様もお目が高いねえ。この二人とは鉱山からの付き合いだが、そりゃあ良い娘さね! アタシの名前はメレンさ。しがない獣人の女だが、死んじまった夫の間には6人も子供を産んでんだ。何か今後困った事があれば遠慮なく言っておくれ!」
「ウチはリンだニャア! ウリ姉とダム姉はウチの母ちゃんよりもお尻がおっきいし、オッパイもおっきいニャ! きっと、いっぱい赤ん坊を産めるニャア!」
そう言ってダムダの胸を下から好きなように遊ぶネコ系獣人の少女のリン。何故かダムダは抵抗せずより顔をが赤くなる。 …というか赤ん坊? まさか、二人を家畜か何かとして俺の宿屋に雇うとでも? 馬や牛じゃあるまいし、そんな猟奇的な考えはない。従業員を増やすなら産ませるより雇うわい。それともアレか? 奴隷はそういう非人道的な扱いを受けて当然なのか? ちょっと一言、言っておこうか。
「ちょっと待ってくれよ。俺は確かに雇用主…んー二人の主人となる訳だけど、彼女らは奴隷じゃあない、あくまで俺と立場は平等だ。彼女達に酷い真似をする気はないし、良く分らんが、その子供を産むも産まないも含めて常に彼女達は自由だ。好きな時に俺の下を離れ、望めば戻ってくることができるんだからな。変な勘違いはしないでくれよ?」
うん。これで大丈夫だろう。気に入らなかったらいつでも辞められるし、また働きたくなったら雇うよ。ってことを念を押さねばならない。その、血の契りがなんだか知らんが所詮はアルバイトなんだからな。給料なんてろくに払えないもん。
アレ? 今度は皆、ポカンとしてしまったぞ。…何かまた間違ったか?
「……なんと器の大きな男なのだ」
「先の言葉といい。まるで、我らの祖たるかの獣王ボロにすら匹敵するな…!」
男の獣人達は感嘆の声を漏らした。が、問題は目の前から何とか引き留めようとするクリー達を振りほどいて俺に突っ込んできたもの達だった。
「ムギュウゥ~!?」
「ボクはずっとストロー様と一緒に居るよ!!今は亡きブラドの家名に誓ってボクの残りの生涯を貴方に捧げます!もう離さないからね!!」
「お、俺も!! 大して役に立たないかもだけどぉ!! 良い母親になるよう頑張るからぁ!!」
俺は圧倒的な肉質に挟み込まれて潰されてしまった。
何故か感極まってしまった二人を何とか宥めると、二人をドアの前に連れて行く。
「はあ…死ぬかと思った。んじゃ、二人同時に無理だから先にウリイからな? 俺が良いって言うまで手離すなよ?」
俺はウリイの手を握る。少し震えている。
「う、うん」
「んじゃあ恐かったら目を閉じてた方が良いぞ」
俺達がドアを潜ると宿内から歓声と泣き咽ぶ声が聞こえた。リビングを見てポカンとしているウリイを置いて残りのダムダを迎えに行く。まあ、結果は同じ「ナニコレ?」状態である。
「ウーンド様!連れてきたんだけど~?」
俺が電話のある奥の壁の方へ声を掛けると壁が歪んで女神の姿を映す。ウーンド様と…ってアレ? マロニー様じゃあないな。誰だ?
『待っていましたよ。ストロー…そして初めまして。精霊の支族となる乙女達…』
『ほほうサギ。実に興味深いルカ…! 初めての交配相手に亜人種であるケンタウルス族とミノタウロス族を選ぶとはカメ。なかなか見どころが有りそうだなノハナ』
は? 何言ってんだこの真っ黒。というか本当に女神なのか?
「「め、女神様が壁の中に!?」」
正気を取り戻したウリイとダムダが飛び上がると、ローテーブルの上で土下座し始めた。
「えーと…ウーンド様。隣の方は…?」
『ああ。会うのは初めてでしたね。彼女は私の姉で南ルディアを統治する三女神の…』
『お初にシン。最強の精霊シュトロームよモギ。ワタシは混沌と可能性を司る女神ジアですカイフィッシュ』
全身を漆のような漆黒で覆われた女神の光る眼だけが笑っていた。




