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宿屋をやりたかったが、精霊になってた。  作者: 佐の輔
本編 第一部~精霊の宿
39/103

 ウリイとダムダ③

本日より再開致す!!(空元気)

体力的に一話一話を短くするかもしれません。許され与!


「アレ? 今、いまさらって誰か言わなかったか…」

「いえいえいえっ!!皆驚き動揺しているのです! ストロー様のお聞き違いでは?」


 ストローの視界を床を滑るような動きで遮るマリアード司祭。相変わらず節々で常人離れした動きをする彼を見ても、ストローは特に思う事はないようだ。気になるのはむしろ先の声が聞こえた方にいた村人のひとりが周囲の村の住民と獣人達に寄って集って怒られていることのようだ。


「いやぁ~そうだよなあ。そりゃあ混乱させちまうよなあ。…ゴメンな? 俺もついさっき女神様達から聞いたもんだからさ。俺もビックリな訳なんだよね! アハハのハ!」

「め、女神様と申されましたか?」

「うん。話したのは女神マロニー様と女神ウーンド様な。ちなみにウーンド様が俺を精霊としてブルガの森へと召喚した方な?」


 その話を聞いて石化するマリアード。大して周囲は首を傾げている。


「…女神様ってのはわかるけど。あの…女神様だろ? そのこの世界で一番偉いさあ」

「でもマロニー様? それとウーンド様って名前だったんだな。でも女神って何人もいるのか?」

「あ。神様は人じゃあなくて柱って言うらしいぜ?」


 村人達や獣人達は正気を取り戻しつつあるのかにわかに騒がしい。そこへ震えながら膝を静かに床へ突いたマリアードがゴクリと喉を鳴らしてストローに尋ねる。


「では改めて、精霊様。その、女神様についてお聞きしても宜しいでしょうか?」

「ああ。まあ、俺も詳しくはないけどなあ~。女神マロニー様は一番偉い女神様で女神達の長姉らしいんだよ。超絶美女で頭に草の冠を乗っけてたっけ。俺を精霊として世界に降ろした女神様はウーンド様で、えー…なにかと知識を司る?とか言ってたよ。青い短い髪に片眼鏡をしてる。外見はマロニー様と比べると… スリム。 そう、慎ましい感じかなぁ。 あ。そういえば知ってた? 女神様って全部で12柱もいるんだってさ。んで、最後に生まれた神様がヨ…なんちゃらって男の神だったらしいんだけども、なんと中央ルディアを吹っ飛ばしたんだとか。あとは~」

「ちょ!お待ちをっ!? 貴方様が語る言葉はとてもこの世界の核心に触れてしまうものです!どうかそれ以上は! しかし、この北ルディアでは限られた者と精霊所縁の者達しか知らぬ事を仰るのならば、疑う余地もございません」


 マリアードはどうにも口の軽い精霊を何とか押しとどめる為に必死に訴えるのだった。


「そういや、奥の部屋の電話…イヤまあ直接話せるみたいだけど。マリアードも来る?」

「お、どうか!お許しを…!!」


 ストローからの余りな提案に、ついにマリアードは冷静さを失い床に五体投地して動かなくなってしまった。もはや完全に床にへばりついてしまっている。ストローも別に普段から世話になっている彼を虐めたい訳ではないので「そ、そうか? 冗談!冗談だからな!」とやや困り顔でチョンと指で突きながら弁明の言葉を掛けて目下の二人の方へ移動する。


「…はあ、まさかあそこまでとは。ま、信心深い奴に急に神様本人に会わすとか、刺激が強いかな?」


 ストローは不安そうな表情のウリイとダムダの前へとやってくると、自然と彼女らを心配して寄り添っていた女性陣も離れていく。


「あ、あの…ボク達は今後、その…精霊様とお呼びすれば?」

「んっ。やめてくれ…あんまり精霊とか言われても実感がないんだなコレが。できれば、ストローで頼む。それでだ、二人に改めて話がある」


 真面目な表情のストローの言葉に「はい」と返事をして姿勢を正す。


「俺の宿屋の奥…つまりまあ精霊の領域に君達をこれから連れて行って、今後は自由に出入りできるようにしたい。でも、女神様いわくそれには条件があるんだと。勿論、嫌なら断ってくれて構わんからな?」

「条件…? その、俺は難しいことはぁ」


 純朴なダムダが頭の角を揺らす。


「条件は単純だぞ。 俺の家族(・・)になってくれってことらしいな」

「「………家族!?」」


 周囲がザワリとなるが一瞬で静かになった。


「家族って…ボ、ボクと精霊様、あっストロー様とってこと!?」

「うん。俺も良く分らんが女神様は向こうで血の契りってのを交わせばドアの奥とコチラを平気で出入りできるようになるらしいんだよな。まあ、不安はわかるぞ。それにだ…もし、上手く適用できない場合はコチラの世界に帰れないらしいしな。だから、良く考えて欲しいんだよなあ」


「子供の頃に大人達から聞かされた、常世から帰ってこれないって話は本当だったんだね…」 

「……その、もし。もし俺達がストロー様のご期待に応えられなかった場合は…どうなるんです、か?」


 顔を俯けてしまったウリイに代わって恐る恐るダムダがストローに問い掛けた。ウリイも顔を上げてストローを見つめる。


 しかし、この男は何ともないかのように言ってのける。


「うん? 一生面倒見てやるぞ? まあ、住む場所、食い物は言わずもがな。欲しいものややって欲しい事は出来る限り叶えてやる。んで、何がやってきてもお前らを守ってやる!! それはその契りってのが上手くいこうか行くまいが関係なくな! ………どした?」


 ストローは二人の顔を見ると顔を真っ赤に染め上げて口をあうあうとさせながら固まっていた。


 ストローはひとり、(やべぇ…やっぱいきなりこんな身勝手なこと言われたら怒るよなぁ~普通は。女神様も無茶言うよなぁ~。あ~どうしよぉ)っと心の中で溜め息を吐いていた。


 なので、周りの女獣人達が口を押えて跳ね飛び、獣人の男の一部が顔を赤らめていた事にまるで気付かなかった。



 ◆◆◆◆

◤ウリイ◢


 ボクはウリイ。ウリイ・ブラド、17歳の美少女さ! っと言っても虚しいけど死んじゃった父上や兄様は良くボクの顔を褒めてくれたよ。騎士になるのにも傷物になるから最後まで反対されてたしね。

 まあ、その家族はもういないんだ。国すら残ってない、だからボクの騎士爵の家名は意味がないから…今はただのウリイ。 ケンタウルス族の単なる女さ。


 アデクに捕まったボクは奴隷と使い潰されてしまう運命だった。けどボクの妹みたいに思ってるミノタウロス族のダムダには無事に生き残って欲しかった。鉱山送りにされる時に彼女の角がへし折られるのを黙って見てられなくて奴隷商を吹っ飛ばした時は胸がちょっとだけスカっとしたけど、あれがいけなかったなあ~。そこで受けた傷がボクの左後ろの脚に完全にトドメを刺してしまったからマトモに歩けなくなっってしまった。もうそれから生きる気力は正直湧かなかったかな…。


 鉱山から山の中を進む途中で遂に意識が途切れた。ゴメンね…ダムダ。



 気付くと誰かに担がれていた。残った力で眼を開くけど霞んでもう何もわからなかったよ。けど…目の前にダムダが何人かの人間に抱きかかえられているような気がした。


 ボクが助けを求めると、彼はボク達を助けると答えてくれた。ボクが礼を言う前に助ける代わりに何を寄越すと聞いたから、ボクを全部あげると答えたよ。


 そして、ボクとダムダは助かったばかりか、あらゆる傷や病が治っていた。


 首の奴隷紋すら無くなっていたんだから、これはもう奇跡だよ…!


 彼は人間の振りをした別の何か、ボク達はどこか直感で解ったんだと思う。


 彼はボクをこの宿屋で働かしてくれると言う。泣きそうになるほど嬉しかった!


 彼はボクの身体に触ってくれた。人間にはお尻が気持ち悪いってよく言われてるのに…。


 し、しかも!ボクに…乗りたいなんて言い出したんだよ!? そんな事を正面から堂々と言える男はケンタウルス族でもそうはいやしないよ!! それにどうしてそんなにも下心が微塵も感じられない澄んだ瞳でこんなセリフが言えるんだい!? …正直言って、人生で一番興f…ドキドキしてしまったよ? ダムダさえ邪魔をしなければ…ストロー様からお情けが貰えたかもしれないのに…。明日はダムダを他の奴隷だった仲間のとこに預けてこよう。


 ストロー様は不思議な方だった。想像以上だよ。


「うん? 一生面倒見てやるぞ? まあ、住む場所、食い物は言わずもがな。欲しいものややって欲しい事は出来る限り叶えてやる。んで、何がやってきてもお前らを守ってやる。それはその契りってのが上手くいこうか行くまいが関係なくな! ………どした?」



 でも、一番想像以上だったのはイキナリ皆の見ている前でプロポーズされたことだね。



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