ウリイとダムダ②
最近MMDに手を出してます。
目標は好きな紳士向け動画を再現することです(純粋な少年の目で)
あと、この小説は健全です(余所見)
◤ストロー◢
「ははは。どうやらやっとこさ満足したようだな?」
俺はテーブルで皿を山のように積んで腹をさすって呆ける二人を見て思わず笑ってしまったぞ。なんせ、前に来た冒険者パーティの3倍の量をだ、たった二人の若い娘さんがペロリと平らげてしまったんだからな。…まあ、同じ亜人であってもローズと比較して身体の大きなのもあるんだろうが、それだけ空腹感を抱くだけの回復量…つまり二人が瀕死の、それこそ酷いダメージを負っていたとも考えられるんだが…。
そんな事をふと考えて少し機嫌が悪くなってしまい、俺の顔に出てしまったのだろうか? 急に二人が椅子から飛び上がる…というか吹き飛ばして俺の前でまたスライディング土下座してきた。ちうかあんだけ喰った後に良くそんな激しく動けるもんだなあ。
「も、申し訳ありませんッ!若旦那、様!!」
「俺もウリイも遠慮なくあんなに…一杯…」
そんなに目をウルウルさせて貰っても困るんだが? 俺は溜め息をつくと二人の前にしゃがみ込んで目線を合わせる。俺の行動が理解できないのか二人がビクリと身を僅かに強張らせる。
「…美味かった?」
「「……え」」
「俺の宿の飯は美味かったか?」
再度俺が問いかけると、二人は驚愕と笑顔が入り混じった表情でズイと顔を寄せて口を開いた。
「美味しいなんて言葉じゃ表現できやしないよ!? ボクはあんなに素晴らしい料理を故郷でも王城の調理場でも口にした事がないよぉ~!!」
「俺も!俺もです!!というか俺は肉なんて初めて食ったかもしれませんよ!」
その後も暫く「ありがとうございます!ありがとうございました!」の二人からの嵐のような言葉に圧されて、終いには俺が尻もちをついてしまったぞ。
「「す、すいませんでした…」」
「いいってことよ。さあて、落ち着いたところで改めて自己紹介といこうか? 俺の名前はストローだ。その若旦那とかは~正直言われてむず痒いんだな。好きに呼んでくれって言った手前、村人達には悪いんだが。だから俺のことは普通にこれからストローでいい。特にだ、ウリイ。お前は暫く俺の側にいて貰うからな」
「は、はい!…ストロー、様…!」
「ウ、ウリィ…?」
真剣な表情で佇まいを直したウリイを怪訝な目でダムダが見ている。
「んで、お前らのことを少しばかり聞きたいんだが? 二人とも奴隷だって聞いてるが、ウリイは前に城の近くに住んでたのか?」
「あ、はい!ボクは…いいえ私、ウリイは」
「堅苦しいのは無しだ。普通に喋っていいから」
「あ…うん。じゃあお言葉に甘えて。ボクはウリイ・ブラド。東の王家クーに仕えし近衛騎士がひとり、"一騎当千"と呼ばれた筆頭デオ・ブラドの末娘さ」
ほお。まさかの騎士の娘とはなぁ…。
「ブラド…家名持ちって事は貴族、いや騎士爵ってヤツか? それにしてもその娘さんが何で奴隷なんかに」
「…もう、仕えてたその王家ってのも滅んじゃったんだけどね。…多分、生き延びられたとすればあの護衛の息子が姫様を連れて中央か南に逃げてくれていたら…。あ、ゴメン。 …ボクが奴隷になったのは戦に負けたからだよ。まあ、周辺国内でクーデーターが起きたんだ。まあ、十中八九アデクの連中の差し金だけどね!クー王家は獣人亜人に差別なく重鎮として取り立ててくれたから。何でも王族が"七勇者"の末裔だから、種族で差別はしないって聞いたけど…」
七勇者? また知らない言葉が出てきたな。
「…あれ、知らないの? 七勇者の伝説」
「俺はウリイと違ってそりゃあ田舎の出ですけど、それでも七勇者の話は知ってますよ?」
簡潔に言えば何でも七勇者ってのは、あの悪神エイリスを倒したという正義のヒーローなんだそうな。その筆頭の"聖戦士アンダイン"が中央ルディアを治める最初の王になったんだそうだ。だが、その話を広めたのはアデク教とされているから…いかにも胡散臭い。しかも、何故か獣人が悪神の手先となっており、それをアデク教の祖である聖人アデクが助力したと締めくくられている。それにそんな英雄の名が一人しか判明してないのも…。どうにも何というかアデク教による対獣人達へのプロパガンダっぽいものを感じてならない。
「でもおかしいんだよねぇ~。村のじっちゃが言ってたんだけど、そもそも獣人が世界そのものを壊そうとした悪神に味方するはずがないっていつも言ってたし…」
「そういえば…ボクも御庭番の時に王家筋のご家老様からそんな事聞いたかも。現在説はアデクの広めた間違いだって。 でも確か"八勇者"とか言ってたから別の伝説だったりしてね…」
ふうむ。まあ七勇者が実在したかは知らないが、その2百年以上前の世界崩壊を何とか食い止めた連中がいたのは事実なんだろう。それをどうにかアデク教が利用したんだろうな。
「おっとと、話が逸れちったね。ボクは女だから正式じゃあなかったけど、東の王族の下で騎士をしてたんだよ。2年前の戦で父も兄も皆死んでしまって、ボクだけがなんとか逃げ延びたけど。この中央に向かう道中で直ぐに獣人狩りに遭ってね。そこで押し込められた柵の中でダムダに出会ったんだ。その後はご想像通りさ…」
「そりゃあ苦労したなあ、お前も。んじゃあ次は…」
俺がうつむくウリイから隣へと視線を移す。俺に見られて緊張したのか激しく動揺するダムダ。身体のアチコチが連動してユサユサと揺れている。俺も動揺しちまうからなるだけやめてくれ…。
「お、俺は!ダっ、ダムダです!! テバの山出身! 歳は15です!!」
「お、おう。 って15!? …マジか。その体付きで…ゲフンゲフンッ! …ち、ちなみにウリイは?」
15て。あ、でもこの世界の成人年齢ってたしか15だっけか? なら色々とセーフなのかもな。俺は恐る恐るウリイにも年齢を尋ねる。亜人だからもしかすると見た目と実年齢に差があるかもだからな。
「ボクですか? ボクは先日で17になったよ、ストロー様。亜人は人間と比べて端的に成長が早かったり遅かったりするけど大抵は人間と同じ15歳だと教わったよ。 まあ、獣人は種族差がかなりあるみたいだけどね。ねえ、ダムダ?」
「はいさぁ。俺も聞いただけですけど、確か獣人のネズミ人だと5歳で一人前だとか聞きました」
「すげえな獣人(リレミッタの歳を聞くのが怖くなってきたな…) …ところで、ふと思ったんだが。ダムダは俺俺言ってるけど…オレっ子なのか? それともまさか…」
俺の言葉に二人は顔を見合わせる。そして、ダムダは顔を赤くしてたじろいで口をあうあうと開閉させる。それを見てウリイは対照的に悪戯っぽく微笑んだ。
「お、俺の村では皆が俺なんですぅ…! その、テバの山では、え~とえ~っと…」
「ププッ。ストロー様、多分なんだけどね? ダムダの村には彼女と同じミノタウロス族しかいなかったらしいから、語彙が少なかったんだと思うよ。テバは土地名だよ。中央ルディアと東方の境を総称してそう呼んでるとこが多いんだよ。後、ダムダは女の子さ!鉱山行きになった時に角を折られて綺麗な髪を刈られちゃったけど。それに…ボクも羨ましくなるほどのものをぶら下げてるし、ね…ね・ね・ネッ!」
「やめっ、くすぐったいよ!」
そう言ってウリイがダムダの胸を執拗に指で突くのでダムダが暴れる。そんな事を言うウリイだが彼女のも相当立派なんだがな? 下手な謙遜は持たざる者を傷付けてしまうんだぞ。特にエイとか。恐らく彼女らの服を着させるのを手伝ってくれたシスター・ベスも相当な精神的苦痛を受けた可能性が…ああそれで、あんまり元気なかったのか。…今度、甘い菓子でも食わせてやろう。
「あんまり暴れないでくれよ。ところでダムダはミノタウロス族なのか…そいでウリイが…」
「…ケンタウルス族だよ。単純に多脚亜人とかウマ人間とか四本足とか呼ばれてるけどね」
なるほどね。やはり、あのローズが俺に助けてくれと願った二人に間違いないな。
「お前ら、ローズって知ってる?」
「え。ローズってあのスケイルフォークの?」
「そうだぞ。たしか"暖かい色彩"って冒険者パーティがこの宿屋に来てな。そんでお前らの話を聞いてたんだ」
「けぇ!? ローズ姐がここに来たの!?」
俺に飛びついてきたのはダムダだった。俺が彼女の肢体で押し潰される寸前でウリイによって引き剥がされた。
「ごめんなさい…ローズ姐の話を聞いて、俺つい…」
「ダムダを許してあげてよ。無理も無いんだ…村をアデクの獣人狩りに襲われて、奴隷にされてしまった彼女にとってローズは姉同然なんだよ。ボク達よりも年上だし、とても親身になって世話を焼いてくれたからね」
「おん。ローズ姐は戦うことも知らなかった俺に色々と教えてくれたし。何より優しくしてくれたから…」
「へえ。しかしなあ、騎士だったウリイは分かるが。ダムダも決して弱そうには見えないけどな?」
なにより色々とデカイからな!
「割と勘違いされてるんだけど、自治区を持つようなボクの戦闘向きの種族と比較してダムダの種族は体は大きいけど温厚で戦士向きじゃあないんだよ。まあ、だから狙われる事も多いんだろうけど。そもそも訓練用の模擬武器を持つことさえ怖がったくらいだしね…」
「俺はウリイと一緒にアチコチの冒険者ギルドをタライ回しにされたんですが、西方で1年近くの間ローズ姐の世話になってたんです」
更に聞けばローズの居る冒険者パーティ"暖かな色彩"のメンバーであるワイン達は彼女達の扱いにも気を掛けていたらしいのだが、既にローズを連れていたが故に誰も耳を貸さなかったという。特にアデクの影響力が強いという要因もあったものとも推察できるな。きっと、この二人の無事を知ればローズだけじゃあくワインやキャロット、そしてサンドも喜んでくれるだろうな。どうにかして伝えられる手段があればなぁ…。まあ、それはいったん置いといて話を進めるか。俺は胡坐をかき直して背筋を伸ばす。
「ところで、お前達の今後なんだが…」
「ボクをストロー様の奴隷として好きにして下さい!」
ウリイが感極まった表情で俺の両手を掴む。俺は宿屋でほんの少しバイトして貰うつもりだったんだが? どうしてそれが奴隷になるんだ。
「……はあ?」
「ウリイ!」
「…ダムダ、ごめんね。君とはここでお別れだ。ボクはストロー様に助命を請う引き換えに自身を差し出すと約束したんだ。そして、ストロー様はそれ以上に約束を果たして下さったんだ!今や亡き国であろうとも、ボクも騎士の娘!誓いは必ず果たす! ダムダ。これからはきっとあの司祭様やガイアの徒が君や鉱山から生き残った仲間達をアデクから守ってくれるはずだ。助かった命…どうか悔いが無いように生きて欲しいんだ」
「嫌だよ!! ウリイに全部押し付けて俺だけどこか遠くに逃げろって? 俺も奴隷になる!!」
興奮したダムダが急に立ち上がり、ウリイに手を掴まれて身動きできない俺と彼女の間に強引に割り込んできた。俺は逃げられずにダムダの尻に轢かれた。言葉にすればボムン!だろうか? 凄まじい弾力と衝撃に俺は吹き飛ばされる。
「おぶ!?」
「あっ」
「ストロー様!? ダムダ!ボクのご主人様に何て事をするんだ!! 危うく君の尻で首が飛んでしまうところだったじゃないか!」
ウリイが俺を抱っこして激怒する。だがそもそも俺はお前を奴隷になんかしないし、逃げられなかったのはお前のせいだがな。だが、あのダムダの尻は…凶器だな、人が死ぬぞ。
「待て待て待て!俺はお前らを奴隷にする気なんてないぞ。ちうかお前らはもう奴隷じゃあないしな」
「…へ?」
「ご主人様、いったい何を言って…!? ダムダ!! 君の首の奴隷紋が!?」
「ウリイ…ってウリイの首の黒い輪っかも消えてるよ!?」
二人は暫しお互いの首を触り合った後に泣きながら抱き合った。俺はやっとこさ解放され、二人が泣き終わるのをテーブルに座って眺めていた。まあ、こういう悲しくない涙なら、いくらでも見てられるんだがな…。
「落ち着いたか? ホラ」
俺はレモン水の入ったデキャンタ―からグラスふたつに注ぐと、まだ若干鼻声の残る二人に渡す。
「ありがとう、ストロー様」
「…ありがとうございます」
「これで二人が自由な身になったのは分かったな? これから好きに生きれば良いさ。何をしても構わない。身体の調子ももう問題ないはずだ。ちょっと二人とも立ってみな」
俺に飲み干したグラスを返した二人が俺の前におずおずと立ち上がる。デカイ。まあダムダに関してはあらゆるパーツを含むが、ウリイは俺より頭ひとつ分背が高い。ダムダは俺よりひとまわり大きいな。背はウリイより少し高いが…コレで本当に15なのか。
「女相手にこんなことを言うと失礼だろうが、二人とも体が大きいな…」
「うっ。ボクは仕方ないよ!何せケンタウルス族だからね。ダムダはミノタウロス族だから体が大きいってだけで足も膝の下と頭の角以外は人間と変わらない…けどボクは腰から下の造りがだいぶ、その違うからさ…それにボクもダムダも女だし、恐らく種族的には小柄な方だよ!」
…小柄ねえ。まあ比較は男のケンタウルス族とミノタウロス族がいないから無理として。確かに、ダムダは背が高いがそれだけ…ではないけどなあの破壊神ボディは!ただ頭の角と足の脛辺りから先までが牛のような蹄になっていること以外は人間と同じ体のつくりだ。尻尾も無かったしな。
それと比べてウリイは先ず左右に飛び出した長い毛に覆われた耳が目立つ。それと上半身は人間そのものだが下半身は異形だな。足が4本…なるほど馬か。
「ちょっと悪いがウリイ、お前の脚を少し見せて貰ってもいいか? ケンタウルス族とミノタウロス族を見るのは初めてでな。嫌だったら断っていいから」
「えっ! う、うん。ストロー様なら、いいよ…」
ウリイが自身の腰からシュルリと巻いていた布を取り去ると両手で前を隠した。顔が赤い。
「俺は別に布を取れとは言ってないんだが…」
「うぅ…いいから早くしてよ!そりゃあ奴隷になってからは武器を隠せないようにってずっと裸だったけど…ボクだって恥ずかしいものは恥ずかしいんだよぅ!」
俺は「お、おう」と何とか答えてから彼女に近づく。うん確かにこう見れば上半身は普通の女性だな。足が4本…胴から下が馬のようにも見える。が、俺がゲームとか漫画とかで知ってるケンタウルスとはちょっと違うな。まず足のつま先が蹄じゃあなくて人間の足と同じか近い。ちゃんと五本指だ。ただ甲高で大きい。足のサイズは多分35以上は確実だな。何せ筋肉モリモリで長く逞しいこの脚を支えているのだから当然か。ふむ、横から見る限りは馬の前脚・後ろ脚に酷似してる。でも胴がないって感じだ。だから端的に言えば彼女の後ろ腰に馬のお尻がくっついたってイメージだ。何せ馬の尻尾のようなフサフサした毛が尻の先端部でしきりに揺れている。実際に尻を触ると人間の肌に近いし、毛が一本も生えてない。
「うひゃあ!? も、もうそれ以上は…尻尾は触っちゃダメだよ!!」
「なんだ。やっぱり獣人と一緒で弱点なのか?」
「……お尻の、穴が見えちゃうぅ…うぅ…」
「ゴメン…」
ちょっと遠慮が無さ過ぎた。いかに相手が異世界女子だと言っても触れてはいけないことなどいくらでもあるだろう。…だがもうちょっとだけ話を聞きたい。
「ところで、ウリイは立派な足が4本もある訳だが。これって上手く走れるのか?」
「そりゃあ走れなくなったケンタウルス族は生きてはいけないよ。…少し前に左の後ろ脚をダメにしちゃってね。それから生きる気力が湧かなかったけど…本当にストロー様には感謝しかないよ…!」
感謝なのかそれとも羞恥からなのか目元を拭ったウリイが今度は4本の足を放射状に開いてペタンと床に開脚してみせる。
「うお!柔らかいな!?」
「まあね。この柔軟さがケンタウルス族のウリなんだよ!この脚の柔らかさで平地じゃなくても走り抜けることができるんだ」
そう言ってバレエダンサーのように立ち上がった。なるほどね。どうやら根本的に馬とか牛とか四足獣の類とは違うようだ。馬のように見える部分は言わば尻でしかないのだ。骨盤に当たる腰の部分が大きくした変化した人間とも言える種族なのかもしれない。つまり下半身に馬がくっ付いてるんじゃあなくて腰から足が2本多く生えてるんだな。良く見れば馬の背にあたる部分が殆どない、筋肉に覆われてる感じだ。まあ、抱き着けば何とか乗れるかもしれないが。
「うーむ。俺の知ってる話、というかウリイと似た種族の話なんだが、背に人を乗せて走るらしいんだ。ウリイにも乗れるのか?」
「ええっ!? ぼ、ボクに…ボクに、乗りたいの?」
何故か背越しに振り返って殊更に顔を赤くしたウリイが俺の顔をジッっと見た後、前に顔を向けてうつむく。
「ボクだってこれでも乙女なんだ…せ、せめて二人の時にしてくれないかな。あ、後はできるだけ優しく…」
「…なにか、とんでもなく勘違いされてる気がする」
モジモジしたウリイをどうしようと思っていると、急に後ろからガバリと誰かに襲われてしまった。まあ、現在この宿の中には3人しかいないから俺の推理は必ず当たるだろう。犯人はダムダ、お前だ!
「うわあああぁん! ウリイに酷いことしないでぇ~!! するなら俺にしてよ!ウリイが守ってくれたけど散々人間達に身体を触られたし、今度は俺がウリイを助けるんだぁ~!!」
「ちょ!? ムギュウ~!」
「ダムダ!何して ぁんッ!駄目だよ!ご主人様…そ、そんなとこ、グリグリ…んぅ!し、したら…!」
前門の尻。後門の乳。俺はウリイとダムダに挟み込まれてしまった。俺の頭上を激しくフサフサの尻尾が暴れ回り、顔面が物凄い圧に挟み込まれ、何か柔らかいものが鼻先にグニグニと当たる。ダムダの凶器が俺の後頭部と背中をスライムのように包み込み完全にロックしている。しかもダムダの奴…感触からして服を勝手に脱いでやがるな! というか今現在、俺はとんでもない絵面になってるんじゃあなかろうか…? こういう時に限って…
(カランカランカラン♪カラン…♪)
ほらな?
「…申し訳ありません。ストロー様、マリアードでございます。明日改めて出直すと申し上げた手前、恐縮の至りなのですが…どうしても彼女らの無事を確認したいと必死に訴える彼らの願いを押さえつけるのも心苦しく、ストロー様の御許しを得ずに連れて参った次第で…あ……」
宿屋の中で沈黙が場を支配すると共に宿屋のドアだけが妙に大きな音を立てて内側から閉じられる。俺はやっと身動きを止めてくれた二人を確認すると顔を前のものからスポンと抜いた。
「んあっ!?」
「……よく来てくれた、マリアード。お陰で命拾いしたよ」
ウリイのどこか嬌声めいた悲鳴が宿屋に響いた。マジでもうコイツの尻には近づかないことにしよう。




