表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他所の世、語り  作者: 寝癖
6/7

幸せのメッキ

「パパー」

「どうしたニコ?」

「見てみてー、綺麗なお花!」

「おぉ、綺麗だなぁ」

「はい!おひとつどうぞ!」

「ありがとう」

「それでねそれでね、こっちはお母さんにあげてね、こっちの青いお花はミカにあげるの!わたし、お姉ちゃんだもん」

「ふふ、そうか

そろそろお昼ご飯の時間だよ、さぁうちに戻ろう」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

夕暮れの森の中で少女が一人

(あれ?こんな森に人がいるなんて珍しい

迷っているのかな?)


「おーーい」

少女が声を上げると、迷い人は少し驚きながらもこちらに近づいてきた


「ねえねえ、あなた迷子なの?」

少女がそう尋ねると、旅人の格好をした青年は

「あぁ、この森に少し事情があって入ってみたんだがね、君は誰だい?」


「私はニコって言うの!」

「ニコか、良い名前だね」

青年はニコの名前を聞くと微笑みながらそう答えた


「そうでしょ!ねえあなた、名前は?」

「私はかい?名乗る名前は持ってないんだ、ごめんね、私のことは旅人さんとでも呼んでくれ」

「うん!わかった!ところで旅人さん、迷子なら私の家に寄って行く?もう日も暮れてるし」

ニコがそう提案すると

「あぁ、ではそうしよう、ありがとうねニコちゃん」

少女は自分の家へ、旅人を案内してあげました


すっかり日も暮れた頃

「着いた!ここが私のおうちなの!」

旅人はニコの家を見上げると、自分の持っていたバッグから一枚の紙を取り出した

「なにその紙?もしかして用事って私の家にあったの?」


ニコが真っ直ぐな瞳で旅人を見つめそう尋ねると

「あぁ、だけれど私の勘違いだったようだ」

「そうなんだ!良かった、さぁ入って!」

家の扉を頑張って開ける


「ただいま〜!」

少女が家に入る、少し戸惑いながらも旅人もそれに続いて玄関に入る

「お母さん!今日はお客さんが居るの!

さぁ、上がって!」

奥からは、綺麗なニコの母親が出てきた


「おかえりなさい、あら?そちらの方は?」

「こっちはね森で迷っていた旅人さん!」

ニコが母親に旅人を紹介すると、旅人はどこか母親の方を見ながら挨拶をした


「こんにちは旅の者です、こちらのお嬢さんに森で迷っていたところを見つかってしまいまして」

「あら、そうなんですかこの森は入り組んでいますからねどうぞ上がってください」


靴を脱ぎニコは家の中へ歩いていく

「ほら、旅人さんも早く上がって」

「あぁ、ありがとう」

旅人は少し何か周りを見渡しながら廊下を歩く

(やはり森の中にこんなしっかりした家がぽつんとあるのは珍しいのかな?)


居間へ着くとソファに座ってとニコが旅人に勧める

「いや、すまないね」

「別に大丈夫だよ!今お菓子とお茶を持ってくるね!」


ニコが台所へ行くと、既に母がお湯を沸かしていた

茶葉と茶菓子を下の戸棚から探していると

「お姉ちゃん!あのひとだぁれ?」

幼い女の子がニコに話しかける

「あ、ミカ!あの人はね、旅人さん!森で迷っていたから連れてきてあげたのよ」


茶を淹れ、菓子を旅人に出すと旅人は何故か出された茶と菓子を見つめたまま固まっていた

「旅人さん?どうかしたの?食べたくないの?」

「いや、そう言うわけでは無いんだ

ただ少し驚いてしまってね、それよりお嬢さん?君に兄弟は居るのかい?」

不思議な質問をする旅人

「うん!ニコは、お姉ちゃんだからね!妹の名前はミカって言うの、ほらあそこに居る子が私の妹なの!」


そう言いながら隣の居間を指さすニコ

ニコが見たときにはミカが居間で人形遊びをしているところだった

「ミカが遊んでるお人形さんはね、お父さんが買ってきてくれたのよ!私のお人形さんもあるの、ミカのお人形さんは猫さんで私のお人形さんはお馬さんなの!」


嬉しそうに話すニコ

旅人はそんなニコに質問する

「そうか良かったね、ところでそのお父さんはなんの仕事をしているのかな?」

またしても不思議な質問をする旅人

しかし純粋なニコは自慢するように答える

「お父さんはね、商人って言うんだって。

時々街へ出て物を売るおしごとをしてるんだよ!」


それを聴くと何か納得した様子の旅人

「じゃあ、そろそろ私はお暇するよ

また来るからね」

そう言い立ち上がる旅人をニコは引き止める

「待って!もう日も暮れちゃったよ?今日はおうちに泊まって行けば?」

それを聞いた母親もそれに同意するかのように

「ええ、もう遅いわ、泊まって行ったら?」


旅人は少し躊躇した様子だったが、少し考えた後に

「じゃあ、お言葉に甘えて泊まらせていただくよ」

「やったぁ!」

旅人に懐いたらしいニコは、とても喜んだ


そして夜になり、母親と共に台所で夕飯を作るニコ

ニコが作っているのは、野菜スープだ

「ねえ!これは上手くできたよね?」

「ええ、とっても美味しそうだわ。旅人さんもきっと喜んでくれるわよ」

作り終わったスープをニコは食卓に出す

「どう?旅人さん、このスープニコが作ったの!」

旅人は、スープを見ると

「そうか!すごいね、とても美味しそうだよ」


そして夕飯も食べ終わり、夜になった

旅人には余っている部屋を貸して

ニコは、自分の部屋のベットで寝始めた


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(あれ?ここは、どこ?)

ニコの視界には、古くなった自宅があった

(お母さん?ミカ?お父さん?)


一人では怖くなり家族を探し始めるも

周りには誰もいない

(どうして?どこに行ってしまったの?)


ニコは周囲を見渡した

しかし誰もいない、悲しいほどに誰も


カツカツカツカツ

不意に後ろから聞こえた足跡に少し驚くも家族の誰かかもしれない


後ろを振り向くとそこには旅人が居た

ニコは旅人に家族を聞く


「旅人さん、私の家族はどこに行ったの?」

旅人はニコの目を少し見つめると何かを言おうとした


「お母さん…ミカ…お父さん…」

ベットで悲しそうに呟くニコ

朝日が窓からさしてようやく意識が起き上がる


「…夢?」

(夢、とっても怖かった、誰もいないなんて)


少し泣きそうになりながら朝食の準備をしようとするも何故か食材は無く、かろうじて戸棚の奥には、保存食が合ったためそれを朝食にする


貸していた部屋に行き、旅人を起こす

「旅人さん、朝だよ朝!起きて」

旅人の体を揺さぶると、少し眠そうに起き上がった


食卓に並ぶ保存食を難なく食べた旅人は、旅支度をする


玄関まで見送るニコに旅人は礼を言う

「それじゃ、お世話になったよお嬢さん

お嬢さん、いやニコちゃん

これだけは覚えておいて欲しいんだ、過去っていうのはね、絶対に戻れない

振り返ることしか出来ないんだ、そしてニコちゃんには色々な未来がある、そしてその未来は過去に囚われていると、手に入れることは出来ないんだ、きっと今は難しいかもしれないけれど、この言葉を理解出来たときには、また会おうね」


「うん!わかったよ!今はまだなんだかわからないけど、きっとわかってまた会ってみせるよ!」

少女のその言葉を聞いた旅人は、少し安堵した様子で森の中を歩き出した


「旅人さん!バイバイ‼︎」

別れの言葉をニコが言うと、旅人は静かに手を振った


旅人を見送ったニコの目には、涙が少し浮かんでいた



ーーー

「そういえば、あの子は元気かな」

森を眺めながら昼食をとっていた旅人は呟く

「あの子って誰ですか?」

旅人の側にいた少女は、旅人尋ねる


「いや、前に少し森で出会った少女が居たんだけどね

少し、可哀想な事があった子だったから

その子が、良い将来を、歩めてるといいなって、森を見てたら思い出したから」


「そうでしたか、その女の子が良い将来を歩めてると良いですね」


旅人が二人、昼食を取り終わり

また歩き始めた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ