表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

偏り

作者: Mery

 今にして思えば、はじまりは弟が生まれてからずっと続いていたのだ。家族という1番身近な単位の中で感じた不平等感。弟が生まれてからというもの、認めたくなかったが、もやもやと感じていたものが今日、はっきりとした。

 5歳の頃、4月に弟が生まれた。私は純粋に嬉しかったが、初めての幼稚園で入園式は父とともに参加した。ワンピースに身を包み、二つ結びの髪を揺らして。髪は朝、不器用ながらに父が頑張って結ってくれた。そんな父と手を繋ぎながら、幼稚園までの道すがらに母が来られないのは出産のため、しょうがないのだと考えていた。寂しかったが、我慢をした。今までずっと母と離れず過ごしてきた。いつも母からは、精一杯の愛情を受けて育ってきた。一人娘だからかもしれないが、心配性の母から大事に大事に家の中で一番に育てられた。だから、母が大好きだった。幼稚園の入園式には父親が来てくれたが、やはり私にとって母が良かったのだ。


 入園式が終わり、帰り道。母と弟がいる病院へ向かった。ベットには母がいて、小さなベットには弟がいてすやすや寝ていた。

「お母さん、あのね、今日入園式でね」

と今日会った出来事を昨日ぶりの母に話そうとした。そこで母が

「今眠ったばかりだから、静かにしてあげてね」

と母が言った。私は(あれ、いつもなら話を聞いてくれるのに)と思いつつも、我慢をした。

すると、今度は父と母が弟のことについて、楽しそうに話している。私の入園式の話は一度たりとも出てこない。2人の会話を聞きつつも、弟のことをもう一度見た。正直、可愛いかどうかはわからない。だけど小さい体を見ると、私の方が大きくて姉なのだと実感した。赤っぽい肌の弟の顔をなんとなく触ってみたいと思ったので、ほっぺたを人差し指でつんと押してみた。とてもふわふわしているなあと、その感覚が楽しくてつい、何度か触っていると、

「おぎゃあ」

と弟が泣き出してしまった。

「有沙、何してるの」

と母が怒ったような表情でこちらをみている。

「だって、触ってみたくて。。」

「お姉ちゃんなんだから弟に優しくしないとダメでしょう」

と、出産の疲れもあるのだろうが母の言葉でピリピリとした空気になっている。そこで赤ちゃんのそばに寄っていた父が、

「優斗はもう泣き止んでいて、いい子だな」

と言った。確かに、いつの間にか静かになっている。弟は何を考えているのかわからないがぼーっとした表情でこちらを見つめている。すると今度は母が

「優斗は昨日の夜も少し泣いても、泣き止んで。気づいたらすぐ寝てくれて、手がかからなくて助かってるの」

(みんなして、優斗優斗って。私からすると、泣き止んだり寝るのって当然じゃないの、そんなことで褒められるなんてずるい。)と思っていた。もともと、弟か妹が欲しいと思っていたはずなのに、いざ弟が生まれて両親が弟ばかりの話をしているのはあまりいい気がしなかった。

 この時から、弟中心の生活がはじまった。私(姉)は二の次となるが、今までの人生(5年間)家族の中心として大事に一番にと育てられた中、いきなり弟が一番になり、その次になることに適応することはひどく難しく感じた。そして、家族という身近な環境でそのような優劣が当たり前に肯定されていると、おかしいと気づくまでに相当な時間がかかるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ