五話 歴史のおべんきょー
宿に入り、ご飯を食べたら私はすぐに寝た。
これは多分半分くらいは現実逃避だ。
目が覚め外をみると、どうやら朝のようだ。
昼から行動すると言っていたが、なんで昼なんだろう?夕暮れの方がよくない?と思いながら朝食を食べに宿の食堂に行く。
「おはよう。」
レイルは先に起きて既に朝食を食べ始めていた。
まぁ視えるから知ってたけど。なんでちょっとぎょっとしてるの?
「おはよう。それで昼からなにするの?」
「ま、まぁ簡単に言うとね、君の準備をするんだよ。それよりその髪。色変わってない?」
レイルの目を通して視てみると、私の髪の色は、元の黒でもなく月のような金色でもなく、茶色に近い色になっていた。
「あ~多分月の力が弱まってるからかな?この調子だと太陽が上りきっちゃうと黒に戻っちゃうかもしれないな~。」
「う~ん。ならちょっと予定を遅らせておこうか。色変えた意味無くなるし。あとわかってると思うけど君の分の服と移動のための食料を買いに行こうと思ってたんだよ。」
「どこに移動するの?」
私としてはまぁ、あいつらに会わないのであれば特に文句はないけど。
「とりあえずこの国からこっそり抜け出そうと思ってるよ。抜けさえすれば魔物の領域だからそう簡単には追跡されないだろうし。そのあとは、とりあえず聖国にでも行ってみようかなと思ってるよ。」
「なんで?」
「もしかしたらなにかわかるかもしれないと思ってね。もしかしたら聖国にある予言書にそういう予言があるのかもしれないし。」
「予言書?」
ご飯を食べながらそう聞き返す
「予言書、前の文明の人が書いたとされるこれから起こる災厄を書き記した、とされるものだよ。」
「なんかすごくふわっとした言い方だね。」
「なんというか素養があるものにしか読めない…らしいんだよね。でも一応実際に起こったものもあるんだって。」
そう言うと、レイルは自信なさげに語り出す。
この王国の先々代王が読み解いた魔法を使う狼達とそれをまとめる化け物のような大きさの狼王と王国の大規模戦争の記された ≪狼王の宴≫
昔の帝国のある貴族の嫡男が読み解いた存在する全ての古龍達と自分の死闘が記された≪英雄への一歩≫
獣王国の姫が読み解いた終わりを迎えても止むことの無い怨嗟と悲鳴によって世界が彩られた正体不明のナニカとの戦いの記された≪止まずの声≫
ある冒険者が読み解いたあらゆるものを食らいながら大きくなり続ける赤色の魔物達が記された≪暴食の赤≫
英雄王の息子が読み解いた神同士が自分の代理として神力を与えたもの同士の戦いが記された
≪神の代理戦争≫
「これ以外でもまだ予言の内容とされているものもあるらしいけど実際に起こったのかは怪しいんだって。」
「英雄の一歩?と神の代理戦争はなんかかっこよさそうだよね。」
なぜか災厄というよりは英雄譚みたいな感じがする。
「まぁ聞こえは良いよね。内容はどっちもなかなかひどいけど。」
なんでも≪英雄への一歩≫を読み解いたはいいが、周りの誰も信じてくれず、ほぼ監禁状態にされてしまい、いざ本当に古龍が来たらおまえのせいだ!と犠牲にされてしまいキレた古龍に結局国ごと滅ぼされてしまっていたり、≪神の代理戦争≫では地形が変わる程の戦闘を色々な場所で起こしたらしく、新しく山ができたり海が広がったり森が湖になったりとめちゃくちゃだったらしい。
「……なんか全然英雄じゃなくてかわいそうだし神様は何がしたかったんだろうね。」
「謎だよね。一応魔法や歴史の研究をしている学術都市で研究されてるらしいけどね。まぁ神の代理戦争は仮説すらもないけど英雄への一歩は古龍達が新しいナワバリを求めて移動したとされているよ。」
「ほーん。ちなみに予言書って誰でも見れるの?いろんな人が読んでるっぽいけど。」
「誰でもじゃないけど全ての国の伯爵以上の爵位を持った子供か、一億ゴールドの寄付。」
「ゲフッ!」
あまりの金額にビックリしてしまった。絶対そんな無理でしょ!?
「一応見る方法はあるよ。まぁその方法はさっき言ったやつとは違うし確率は低いけど。」
「脅迫するとか?」
「いやちがうよ、僕をなんだと思ってるんだよ。まぁユニークを持ってるからそれを言えば可能性はあるんだよ、暴食の赤を読み解いた冒険者はユニークを持ってたから読ませてもらえたらしいし。」
「なるほど~、じゃあ行ってみる価値はありそうだね。」
ご飯を食べ終わったのでごちそうさまと言いながら席を立つ。するとそれを見ていたレイルが、
それは異世界人の習慣かな?と言ってきた。そうだというと、この世界の人はそんなことしないらしく、念のため止めた方がいいと言われた。なんでこれまで言わなかったのかと聞くと、いきなり見知らぬ人の視界が視えるようになってビックリしてる人がそんなことに気がつくとでも?と言われてしまった。まぁそうですよね。
「まぁ今後の予定はそんな感じで。」
「了解です。あ、それと今更だけどさ、なんか口調昨日とちがくない?」
「あ~それはどうせこれから一緒に行動するんだしわざわざずっと敬語でいるのもめんどくさいからだよ。」
まぁわたしのことを少しは信用してくれたってことかな。
ちょっと機嫌がよくなった私は、ニヤニヤしながらレイルにこれからよろしくね。と言って部屋に戻った。
予定より物語が進まない…