十三話 とりあえず疑問が増えました
しばらく夜空を見つめ、どちらともなく二人は立ち上がり、また歩き出した。
その頃には見上げても月はどこにも見当たらなくなっていた。
「今日はどこまで行くの?レイル。」
「ごめん。今の場所がどこだかわかんない。」
「もしかして…昨日本気で走りまくったせい?」
「大当たり、そのせいで地図のどのあたりだか全くわかんないや。」
二人は苦笑いを浮かべながら道を歩く。
「とりあえず人に会ったら場所を聞こうか。もしくは休憩所に現在地がかいてあるはずだからそれを見よう。」
「りょーかい。あと思ったんだけどさ、なんかこれまでよりまわりの草の高さが高くなってない?」
これまで通ってきた道にあった草は高くても10センチ程度しかなかったのに対して今通っている道は短くても30センチ以上。長いものは1メートルに達するほどのススキのような草が生えている。
「たしかにそうだね、生息している動植物が変わるってことは…もうすぐ聖国の領域に着くってことだ。」
「え?もう?」
「一体僕たちはどんなスピードで走ったんだ?想定の何倍も早くここまできたぞ?」
頭を抱え始めるレイル
それもそのはずだろう、何日もかけて進む予定だったところを一晩走るだけで全て踏破してしまったのだから。
「僕たちの身体能力はどうなってるんだ?」
約300キロ程の距離を一晩で走り切り、更にそれでも息が切れなかったのだから異常としか言いようがない。
「あはは、私もよくわからないや。」
叶は苦笑いしながらそう答えた。
実際、全くわからないのだ。走っていたらだんだん楽しくなっていき、最終的にこのような結果になってしまっただけなのだから。
「とりあえず後で考えよ?」
「はぁ…そうするしか無いみたいだね。じゃあ説明するけどこの先の曲がりくねった道を通り越すと森があるんだ。その森が国境の役目を果たす魔物の森なんだ。僕も話でしか聞いたことはないけどね。そしてそこを抜けるとすぐそこに聖国があるらしいよ。」
そこで注意点、絶対に道を外れちゃダメだよ。