十二話 叶うならばもっと長く、遅く
なんだかんだじっと歩き続けで疲れていたようで、目を開けた時には夕暮れ時だった。
「おはよう。」
どうやらレイルは先に起きていたようだ。
私が起きるよりも先に起きていたようで、保存食を食べていた。
「私にもちょうだい。」
「あとでね、そろそろ人が来てもおかしくない時間だから外にでてからにしよう。」
「?わかった。」
よくわからないけど手早く準備を済ませて外へ出る。
「それでなんでそんなに早く出たがってたの?」
「歩きながらはなそうか。僕らはっていうか叶は一応追われる身なんだよ?基本的に兵士は僕らみたいに昼夜逆転してないからそろそろここみたいな休憩所で休み始めるからね。できるだけ鉢合わせにならないようにこのくらいの時間から移動を開始しようかなって。見つかるにしても部屋のなかに押し込まれてしまうような不利な状況は避けられるでしょ?」
「どっちにしろ撃つんでしょ?なら待ち構えて撃っちゃえばいいじゃないの?」
「えっと、気づいてないの?僕らの魔法は外じゃないと威力とか効果下がるんだよ?」
「ほえ?」
「まぁあんまり理由は分からないけどとにかくそうなんだよ。」
「時間に余裕ができたら調べてみる?」
「それもいいかもね。」
こんな追われてる状態で不謹慎かも知れないけれどワクワクしてきてしまった。
と考えていると体に力が沸き上がり始めた。
「なんかウズウズしてきちゃった♪ねぇねぇ、競争しない?」
「ええぇ僕走るのあんまり好きじゃないんだけど…」
「そんなのは聞いてませ~ん。よーいどん!」
「あ、ちょっと!?」
叶が駆け出し、遅れてレイルも続く。
最初こそレイルも嫌そうな顔をしていたが、途中からは叶につられて楽しそうな顔になっていた。
「待てー!」
「あはは~、待たないよ~っだ。」
子供の頃に戻ったように走っている間にも更に体に力が沸き上がっていき、どんどん加速していく。そして叶が調子に乗り後ろを向いてレイルを煽ろうとして口を開いたその瞬間、
「ふぎゅっ!?」
足元の小さなでこぼこに引っ掛かり盛大に転んだ。それをみたレイルは
「あ…ぐえぇ!?」
ちょっと酔っていた。
叶の視界が視えてしまうせいで、高速で転がっている視界が視えてしまったからだ。もっとも途中から叶が目を瞑っていたからマシではあるが。
そして酔ったせいで足元がおぼつかなくなり、同じ場所で転ぶと言う結果になってしまった。
「「痛い…」」
二人で顔を見合わせると、どちらともなく苦笑いをする。
「あはは、痛かったね。」
「ほんとにね、 空にに瞬く星の光 降り注ぐは願いの光 我が体を癒やし給え」
レイルの体が淡く光り始め、体についた無数の擦り傷が治っていく
「あ、ずるい私にもやってよ。」
「自分でやってください~。」
「けち~。せめてやり方教えてよ。」
「ん~っと、とりあえず夜魔法は一気に回復する魔法は使えないよ。そういう魔法は聖属性にしかないからね。あとは自分の感覚で詠唱すれば良いよ。」
「わかった~、 ん~ 星に願う 傷が治りますように 傷が治りますように 傷が治りますように 」
詠唱?が終わるとレイルと同じように体を光が包み込む。
「…なんというか、凄いね。」
「でしょ~?」
そう言いながら叶は脇の草むらで横になり空を見上げる。
「楽しかったね。」
レイルもそれにならい横になり、見上げる。
「そうだね。楽しかった。」
「これからきっと、もっともっと楽しいことがいっぱいしようね。」
「今回みたいに痛かったりしないならね。」
「あはは、それはちょっと分からないかもね。」
「もう少ししたら移動する?」
「まだみてたいかも。」
「知ってる。聞いただけだよ。」
二人はしばらくの間夜空を見上げ続けた。