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九話 月の家

「と言ってもただ着替えて貰うだけなんだけどね。このまま居場所がバレっぱなしも嫌でしょ?」


ちょっとビックリしたけどまぁそんなことだろうとは思ってた。


「でも女物の服なんてあるの?」


もしやそっち系の趣味を…などとふざけて考えながら聞くと


「お母様の着てた服があるんだよ。こっちにあるからついてきて。」


「は~い。」


そのまま少し歩くと、遠くにとても目立つ石造りの家が見えた。何故その家が目立っているのかと言うと、この世界においてひとつだけ美しくなく、とてもボロボロだったからだ。


「あはは、これ凄いボロボロだよね。逆によく残ってると思わない?」


レイルが苦笑いしながらそう言ってくる。


「そう…だね。それでここに服があるの?」


「うん。じゃあちょっと取ってくるね。」


レイルはそう言うと家の中へと入っていった。

そして一分程経ち、布で出来た袋を持ってくると


「とりあえず服一式持ってきたよ。ぼくは寝てるから終わったら起こして。」


と言って叶に渡し、また家の中へと戻っていく。


叶は、レイルが家に入ってから五分程度経ってから着替えを始めた。


「はぁ~。どこの世界でも男の子は男の子なんだなぁ。やっぱり人の前では弱いところを見せたくないんだね。」


そう言いながら、私は涙を流してしまう。


お互いに見たくなくても視えてしまうから。

想い出の品も、目からこぼれ落ちる涙も、そして

あの家の窓から見える不格好な十字架とそこに書いてある文字も。


それらを見た時、私は察してしまった。

彼の母は、服を取りに行ったときに握っていたあのロケットペンダントの持ち主は…


この事に触れるのは無粋だろう。視えているから、と言うだけで相手の大切なものに触れるべきではない。だけど…


「いつかは、教えてくれるかな…」


私たちがお互いのことを深く知り、心から信頼しあえるようになった時、改めて教えてもらえるかな、

その人との大切な想い出の話を。


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