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一話

「はあっ、逃げきれた、かな?」


仲間達に襲われ、私は逃げ出した。襲ってきた理由はわかってる。私が欲しかったからだ。不幸なことに見た目だけは良く、力はそこまで無かったから。だから私を自分の物にしようとした。


幸いなことに今は夜。弱い私でも今は、今だけは彼らから逃げることができる。


一ヶ月前、放課後に教室にいた私たち20名はこの世界に飛ばされた。城の中で、王様が話した内容はありきたりで、魔王を倒して欲しいというものだった。そのときの私は状況が全く理解できず、隅で縮こまっていた。

この世界に飛ばされた時、皆強くなった。鑑定という魔法をしてもらった結果私は魔眼と言うものを手に入れたらしい。しかし、他の人達ほど強い効果はなく、精々夜目が利くようになったのと、夜しか使えない魔法、夜だけ少し身体能力が上がるくらいだった。 それに加え、他の魔眼の子は魔眼の名前もわかったらしいが、私の魔眼は名前がわからないらしい上に、目の色が金色に変わってしまった。


その後、皆訓練させられ、今日の昼頃。私がトイレから私の部屋に戻ろうとした時、男用トイレから、私を捕まえて犯そうと喋っている声が聞こえてきた。身の危険を感じた私は、友達に相談したいと思った。しかし、この1ヶ月の間で皆変わってしまっていた。力がない私の事を腫れ物扱いするようになったのだ。夜ならまだましなのだが、基本的に朝昼しか戦闘訓練をしないので、ほぼ元の力のままなので弱いと認識されている。彼女らはおそらく元々私のことが気に食わなかったのだろう。見た目以外に秀でるものが無いくせにそこそこ男子から人気があったから。

本当はそんなものいらないのに。


男子に対抗しようにも、力がないから私はこっそりと逃げることにした。自分の部屋ではなく、城の庭園の隅っこにある物置きの中に隠れ、黄昏時を待った。黄昏時から少しずつ力が強くなっていくからだ。周りに人がいないことを確認し、外に出ると、目立たない場所まで隠れて動き、全力で塀を乗り越えた。守りがどうたらこうたら言ってたけど内側から出る分にはガバガバらしい。

そうやって外に出て、逃げ出したまでは良かった。しかし、乗り越えるときに見つかってしまっていたようで、城下町をこっそりと抜け、森に走って逃げていると、後ろから気配が追ってきた。私の名前を叫んでいるから多分クラスメイトだろう。


「暗い闇よ阻み、拒め、我が身を守れ」


私が使える魔法 夜魔法 夜にまつわることであれば何でも使えるらしいが、夜以外だと効果が薄く、とても使いにくい魔法だ。

今のは夜の暗闇の持つイメージ。路地裏の怖い暗闇が持つイメージによって相手に恐れを抱かせ通さないようにする魔法だ。

ちなみに決まった詠唱などはない。そう言う意味では魔法は万能だと思う。


「チッ、炎よ燃やし尽くせ」


炎が折角張った暗い防御膜を消してしまった。暗闇のイメージだから光を浴びると消えちゃうのが難点。そう言う意味ではこの相手は最悪の敵だ。しかし、今のでなんとか森の中まで逃げることができた。私は勢い良く入ると、迷いなく奥へ奥へと走っていった。


「糞が!おとなしく捕まりやがれ!」


後ろから声が聞こえた。チラッと後ろを向くと、三人追いかけてきていた。


「星の光よ、彼らを照らせ!」


星の神秘的な光で後ろの男子の目潰しをする。

光をもろに食らった男子の目がまた暗闇になれる前に全速で逃げる。


そして話は冒頭に戻る。


「これからどうしよう。」


私、姫路叶(ひめじかなえ)はそう呟いた。

特に行き場があるわけでもなく、やりたいことがあるわけでもない。

幸い、夜の間だけならこの夜魔法は気配を消すことができるので、魔物にも見つからないですむ。なので魔法を使って反対側まで突っ切って、クラスメイトから完全に逃げることにした。


「我が身を覆い、我が身を隠せ。夜の静寂よこの身を包め。」


闇で体を覆い隠し、夜の静けさで自分の音をも消す。

正直これらの魔法が朝も昼も使えるならば十分な戦力になるというのに。


「とりあえず魔力に余裕があるうちに森の深部を抜けなきゃ。」


また私は森の中を走り出した。





僕は何故毎日怒られているのだろう。そう考えるのもこれで多分千回目か。僕は父とも母とも目の色が違い、金色である。一応僕は貴族…だった。だが、母の浮気によって生まれた子であると言われ、家から追い出された。

幸運なことに僕は魔法が使えたので、なんとかそれで生きてきた。知識は、追い出される前までに少しだけ勉強していたので、平民に比べれば少しはある。なのでそれを生かし、代筆や魔物を狩り素材を売ることでなんとか生計を立てていた。

そして今日は僕の誕生日だ。今日で15歳になり、僕は成人として認定される。なのでギルドに登録することができるようになり、街道沿いに出るような弱い魔物だけでなく、森や洞窟にも自己責任で入れるようになった。


「よし、ちょっとだけ森に入ってみるか。」


そう呟くと、彼、レイルは勢い良く町を飛び出した。

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