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魔剣使いと七人の花嫁  作者: 獅猫
2/3

2-始まり-

第二話。少々ゆっくりですね。

「ルミナ!そっちに二匹行った!」

「了解です!」


俺の指示に反応したルミナが的確に氷属性の魔法を浴びせる。まだまだ狼の数は多いが、この程度の強さなら何とかなりそうだ。


俺とルミナは今、【フォレストウルフ】という狂暴な狼の群れと戦っている。


王都を出た俺たちは、「人工遺物アーティファクトというからには人間がいた形跡のある場所にあるんじゃね?」という俺の安易な考えから、王都からだいぶ離れた森の中にあるとある文明の遺跡に来ていた。


しかしその遺跡は、今や狼の住処となっていた…。というのが今までの経緯いきさつだ。最初は苦戦するかと思われたフォレストウルフだったが、今では順調に戦闘を進めている。


その理由の一つ。ルミナは、王女とは思えない程戦闘慣れしていた。恐らく王宮での英才教育で学んだのであろうルミナの魔術は本当に強力だった。


先程から見ているだけでも、火・氷・風・光などのあらゆる属性を使いこなしている。その属性ごとに分けても、その魔法は本当に多彩だ。例えば氷魔法では、純粋に相手を凍らせる魔法や氷の形を変形させる魔法を使い分けていた。


「白夜さん!そっちの狼をお願いします!」


俺はルミナに言われた通り、こちらに向かって駆けてくる三匹のフォレストウルフを倒すべく剣を向けた。


この神様に貰った神剣【アポカリプス】だが、抜群の切れ味だけでなく膨大な魔力を持ち、俺自身が解放した魔力によって、剣戟の属性も変わるという能力を持つ。


俺は目の前に迫る狼に向けて、神剣を横一線に薙ぎ払った。狼は何が起きたのかさっぱりわからないようだったが、一瞬の間の後、狼の体から鮮血が迸る。


「トドメ頼む!」

「はい!」


俺の攻撃を喰らった狼たちに向けて、ルミナは風属性の魔力で創造した鋭い刃を放った。勢いよく飛翔するその刃は、瀕死だった狼を的確に屠った。


俺たちは狼がいなくなったのを確認すると、自然とハイタッチを交わした。


「お疲れ様です、白夜さん」

「ルミナも後方支援、ナイスだったよ」

「白夜さんこそ…これほど凄い剣士は王宮にもいませんよ!!」

「そうかな?…まあいいか、とりあえずはその探し物らしきものを探してみよう」

「はい!そうですね」



♢♦♢♦



「白夜さん、ありましたかー?」

「んー…、普通の武器とか防具とかなら腐るほど見つけられるんだけど、どうにも貴重そうなのは見つからないな。魔力の感じもないし」

「やっぱりですか…、街中のありそうな亜署はかなり探したんですけどね…、」


遺跡に来てから、もう4時間ほどが経過している。


かなり広いこの遺跡を、二人でくまなく探索したが、それらしきものは一切見つからなかった。ルミナ曰く「探している人工遺物アーティファクトなら凄い魔力を持つらしいので、触ればすぐ分かるはずなんですけど…、」と言っていたので、今のところは見つかっていないのだろう。


もう太陽が西に傾いてから久しい。体内時計を信用すれば、恐らく現在午後三時頃か。王都に帰るのでも一時間ほどかかるので、そろそろ帰り始めたほうが良いかもしれない。


「…仕方ない、今日のところは帰るか。あんまり王様とかにも迷惑かけちゃ悪いだろうし」

「…そうするしかないですね…えと、白夜さん!」

「な、なに?」

「今日は私の探し物を一緒に探してくれてありがとうございました!私は王女なのであんまり白夜さんとは会えないかもしれませんけど…、また会えた時はよろしくお願いしますね!」

「ああ、こちらこそよろしく。探し物、見つかると良いな。…でもその前に…、」

「え?何かあったんですか?」


ルミナは首を傾げている。どうやら忘れているようだ。


「ルミナ、俺たちはどうにかして王宮の兵士たちの監視を潜り抜け、ルミナは無事王宮まで帰り着かないといけない」

「あ…!そうでしたね」

「やっぱり忘れてたんだ…」



♢♦♢♦



と、言っていたのだが。


結局捕まった。


ケープをかぶって街中を歩いていたのだが、兵士たちにあっさりバレた。ルミナは何でバレたのか不思議そうな顔をしていたけど、そりゃあバレるよ。こんなきれいな金髪した人、街中見回してみても一人もいないし。


俺たちは抵抗する間もなく連行されたのだった。現在は玉座の間にて、ルミナの父、すなわちエルブルク王国の国王からお説教を喰らっている。


「ルミナ…何度かこんなことは今までにもあったが…、お前は王女なんだぞ?もう少し自分の立場を考えてだな…」

「申し訳ございません父上…」


ルミナは返す言葉もないという風に頭を下げて謝罪した。もう慣れたのか、呆れた様子のエルブルク国王は更に言葉を続ける。


「大体王女ともあろう者が街を出て、狂暴な魔物と戦うなどという危険なことを…これからは王宮の中で静かに暮らすようにしなさい」

「しかしお父様…!…私はもっと外の世界を知りたいのです!…できれば冒険者として働きたいと、前々から思っていたのです!」

「…何か仕事をしてみるのは良いことだ…私もやらせてやりたいとは思うが…、冒険者などという危険な仕事を一人でやるのはルミナには早すぎる。お前には冒険者として頼れる者などいないだろう?」

「…私は今日、ただの好奇心で王宮を抜け出しました…。…しかし、私はそこで白夜さんに出会うことが出来ました」


ルミナは俺を指して王様に、実の父に言う。異世界に転生して最初に知り合ったのがこの国の第一王女だとは。


「彼は私が王女だと知っても優しく、普通に接してくれて…、私は彼の優しさを知りました…」


目の前でこんなに自分のことを言われると恥ずかしいものだ。王女に、それも国王に向かってそんな熱烈な演説されては一般男子高校生たる俺ももちろん困る。どこぞの馬の骨とも知れぬ俺をそこまで言うとは。


「…そして私は、ある考えを持ちました」

「何だね?その考えを言ってみると良い」


次の瞬間、ルミナはさらに衝撃的なことを言った。



ー私は、これからの冒険者稼業を彼と共にやっていきたいと、本気でそう思っているのです!!ー



「(はいいぃぃぃぃ!?ちょい待ちルミナ!ウェイトウェイト!)」


その言葉は驚愕のせいで音にならず、俺は数秒間固まったまま静止した。


そうは言ってもさすがに国王様も反対するだろう。どこの誰かも知れない初対面の男子高校生(この世界ではただの少年か青年か)だし。さすがに国王として…ね。


「そうか。探索している時ずっとルミナを守ってくれた彼が一緒なら心強いし、良いかもしれないな。ルミナがそこまで言うなら大丈夫なのだろう」


予想外の答えが返って来た。気変わり早すぎない!?この世界の人ってみんなこうなのか?これはさすがに黙ってられない。


「ちょっと待った!国王陛下!」

「ん?どうかしたのかね?」

「異議アリ!アリアリです!本当に大丈夫なんですか?大事な王女様を俺なんかと一緒にして!?」

「そこは大丈夫だろう。ルミナの話を聞くと、どうやら君は誠実な人間らしい。いつかはルミナもこうして経験を積ませようと思っていたのだ。それにルミナを誘ったのは君だろう?」

「そ、それはそうですけど…、」


俺はそう言葉に詰まると、隣にいたルミナは不安そうな顔で俺の目を見つめてくる。


「白夜さんは私と一緒に冒険するの…いやですか…?」

「そんなことないよ!全然いやじゃないんだけど…」

「じゃあ何も問題ありませんね!」


もはや俺に拒否権は無かった。国王陛下が大きく咳払いして、再び威厳たっぷりに言った。


「それでは八剱白夜殿、我が娘、ルミナを頼みますぞ」

「白夜さん、これからよろしくお願いしますね!」


ルミナは輝く様に明るい笑顔を浮かべて俺に言った。俺はもう観念して、ため息をつき、苦笑するしかなかったのだった。これはこれでまあ、ね。


次回はいつでしょう?未定ですが、黒白と共によろしくお願いします。

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