第3話 正義のヒロイン
初めて書き始めた小説なので、文章としておかしな部分が多々あるかと思いますが、ご了承ください。
甲殻の外装をした巨大ガイアスに襲われそうになった優翔の目の前に現れた1人のメイド。
突然の出来事の連続に優翔の思考は処理が追いつかず、座り込んだまま今目の前に救いに現れたメイドを見つめるだけだった。
「もう大丈夫です。必ず助けますから」
泉美は振り向かず後ろにいる優翔に安心させるように優しく、でもどこか力強さを感じさせるように語りかける。
優翔はその言葉に不思議と安心感を感じ少しずつ落ち着きを取り戻し始め、それを確認すると泉美は目前のガイアスを鋭い眼差しで睨みつけた。
ガイアスは、突如泉美が現れたことで僅かに動きが一瞬止まっていたがすぐに泉美も獲物として認識すると、再び邪悪な笑みを浮かべ拳を頭上より高く振り上げると泉美に目掛けて振るった。
ズドォォォォンン――凄まじい衝撃に優翔は咄嗟に目を閉じるとコンクリートの破壊音がその場に響き、遅れて衝撃による爆風とコンクリートの破片が勢いよく飛んだ。
まだ微かに爆音により身体がピリピリと震える中優翔は目を開けると目の前は砂煙が舞うだけでガイアスや泉美の姿が見えなくなった。
「何も見えない! ……さっきの人は?」
徐々に砂煙が晴れていき目前が明らかになっていった。
「……っ! あれは!?」
そこには、拳を地面に叩きつけているガイアスと、左腕を鉄パイプに変えてガイアスの腕を数センチの間で左に避けている泉美の姿だった。
ガイアスの攻撃が当たる直前に泉美は左腕の肘から手までを鉄パイプにトランスさせ、ガイアスの拳を防ぐとパイプに右手を添え攻撃の流れ逆らわず少しパイプを傾けガイアスの拳を左に受け流し回避していた。
泉美はその場から後ろに飛び優翔の元に立つと、左手を元に戻しそっと体を支えながら優翔を立ち上がらせた。
「お怪我は無いですか?」
「あ、ああ……大丈夫」
優翔に怪我がない事を確認し「それは良かったです」と安堵すると、何が起きたのかわからず不思議そうな顔をしているガイアスに向けて反撃を始めた。
ガイアスは自分に向かって走ってくる泉美に今度こそはと今一度拳を振るう。
同時に泉美の右手が淡い光に包まれ手の形がはっきり見えなくなると、右手は粘土の様に形を変え、細長い形に姿を変える。光が収まると鞭にトランスさせており、近くの電柱に巻きつけガイアスよりも高くに飛び上がり避けた。
一瞬でその場を消えた泉美を探すガイアスの背後にそのまま静かに着地するとトランスを戻す。
それに気づき後ろに振り向いたガイアスの表情は怒り露わにしており、怒りの叫びをあげると泉美に拳の連打を振るう。――がどれも泉美には当たらなかった。
「見たところ下位……。なら、私1人でも行けますね」
泉美はガイアスの攻撃を確実に見極め一発一発を華麗にかわしていく。1分にも満たない時間が過ぎる中ガイアスにも疲労が積もってきたのか、息が荒くなりだんだんとスピードも落ちていった。
丁度同じタイミングでメタモルフォーゼの援軍が泉美達の元に着く。
「御無事ですか泉美様! 早急に援護に入ります!」
「私は必要ありません、1人で対処出来ます。皆さんは他の現場に行き市民の避難と対処の手伝いに行って下さい 」
攻撃を避けながら皆に指示を出すとそれに従い周囲の救済に皆が向かったことを確認すると泉美は攻撃に移った。
泉美は疲労より出来たガイアスの攻撃の隙を突き、両腕の手の先を短剣に変えガイアスの両肩の甲殻の隙間の肉体に刺すとそのまま脇の部分へ切り下げる。するとガイアスの両腕は動かなくなった。
「肩を抑えれば自慢の怪力も発揮できないでしょう」
自分の腕が動かなくなった事に困惑したガイアスの動きが一瞬止まる。
泉美はその僅かに出来た静止の時を狙いガイアスの巨大な脚の間を駆け抜けるとガイアスに向け飛び、その背に乗るとまた蹴り上げ更に高く飛び上がる。
空中へ飛んだ泉美は左手を戻し、右腕を新たな武器へとトランスさせた。
それは2〜3メートルの大きさの先端が尖った槍類の武器ランス。泉美はランスにトランスさせると、そのままガイアスに向けて落下し始める。
鉄の塊であるランスの重量と落下による重力でどんどん加速して近づいてくる泉美に気づいたガイアスだが、先ほどの泉美の攻撃で両腕が使えないガイアスはその場で吠えて立っているだけだった。
「哀れなものですね。所詮本能だけで暴れる獣は逃げることもしないですか……」
泉美は甲殻の無いガイアスの目に向けてランスを構え落下し突き刺した。先端が刺さると勢いに乗せ頭蓋から腹部まで貫通しガイアスは叫び声をあげて苦痛で暴れていると、徐々に動かなくなった。
泉美はランスを抜くと同時にトランスを解除し元の右手に戻すと、巨体のガイアスの亡骸から降り地面に降り立つ。
少しして重力に従い鈍い音と共にガイアスの亡骸は地に倒れると傷口から黒い霧のようなものが吹き出し、しばらくするとガイアスの肉体は徐々に塵と化し消えていき、そしてあたりに静けさが戻った。
「巨体に物を言わせただけの攻撃にやられるほど、私達はやわな訓練はしていませんよ」
ガイアスが完全に消滅した事を確認すると泉美は優翔のもとへ歩み寄る。
「もう大丈夫ですよ」
「あ、はい……」
「……やっぱり、間違いない」
「えっ……?」
優翔の顔を見るとある確信を持ち、決意を持って泉美は優翔にある事を訪ねた。
「あの、覚えていませんか……私のこと」
「えっ? えっと……」
「……覚えていらっしゃらないですか」
「……きみは?」
一連の出来事の衝撃でまだ頭の整理が出来ず、すぐには思い出せずにいる優翔に泉美は顔を俯き、話を続ける。
「……幼い頃、私には仲の良い男の子がいました。それはとても、とても大事に思う人が。ですが事情によりその人と離ればなれになる事になりました」
泉美の話を聞いてる中、優翔は目の前にいる泉美を見ていると、少しずつ昔のある記憶が蘇ってきていた。
「もし……かして」
声にならない掠れたような小さな音が、優翔の口から漏れる。
「その時に男の子は1つの約束と、もう一度出会えるよう願いをかけた、この宝物を私にくれました」
泉美は首に着けたネックレスを取り出し、先に取り付けているペアキーホルダーを見せた。
「 っ!? それは」
「これはその時、男の子にもらった物です」
泉美が取り出したネックレスを見た時、優翔は全てを理解した。
「覚えていないかもしれませんが、私にとって、とても大切な……」
「――覚えてるよ」
「……えっ?」っと泉美は顔を上げると、優翔は自身の首に着けてるネックレスを取り出しそれを泉美の持っているキーホルダーに近づけた。
「覚えてるよ。忘れた事なんて一度もない」
優翔はそのまま泉美の物と重ねるとそれぞれのキーホルダーが1つになり四葉のクローバーとなった。
泉美の両手をそっと握りしめていると一筋の涙が優翔の頬をながれる。
「俺は、ずっとこの時を待っていたんだから……」
「わ……私も――」
泉美の頬に落ちる涙の量が徐々に増えていく。
「 私も、ずっと! ずっと! ……会いたかったよ!!」
十数年の思いが涙と共に溢れ出す泉美を優翔は優しく抱きしめる。
町の片隅で崩落した現場にはしばらく少女の内に潜めていた寂しさと、心からの喜びの声が響き渡る。
「もう大丈夫か?」
「……はい。ありがとうございます」
優翔に礼を言い涙を拭い何時もの落ち着きを取り戻すと、泉美は何かを思い出したように携帯を取り出すとある場所に連絡をいれ始めた。
「私です。……はい、無事ガイアスの排除を完遂致しました。それで1つ報告があるのですが……そうです」
『わかったわ。あと、迎えを送ったからみんなと一緒にその子も連れて戻っていらっしゃい』
「はい、ありがとうございます。失礼致します」
携帯を閉じると泉美は優翔の方へ振り向き、1つのお願いをする。
「今から優翔様に一緒に来ていただきたい所があるのですが、よろしいでしょうか?」
「良いけど……行くって何処に?」
すると突然、2人のいる場に突風が吹きだし視線を風の出所に向けると頭上に一機のヘリが飛んでいた。
「共に私達の、メタモルフォーゼへ!」