第1話 出会いの予感
初めて書き始めた小説なので、文章としておかしな部分が多々あるかと思いますが、ご了承ください。
薄暗い空が太陽の光で徐々に明るくなり、朝がやってきた――
――ピ、ピピピ! ピピピ!
「うっ――う〜〜ん! ……もう朝か」
ある朝、いつもと同じ時間に目覚ましが鳴り1人の少年が起きた。
少年の名は疾瀬優翔
日本の高校に通うごく普通の17歳の少年。
優翔は目覚ましを止めベッドから出て立ち上がると、おもむろにカーテンで閉まっている窓に歩み寄る。
優翔はカーテンをあけ窓を開き顔を窓の外に出す。晴れ渡る空から注がれる日差しが起きたての体を温め、新鮮な空気が部屋へ流れ込み、締め切った部屋に爽やかな風が入る。
普段の優翔は起きてすぐはゆっくりするスタイルなのだが、この日はなぜかいつもとは違い、晴れ空を見たい気分であった。
「うーん! ……はぁ。今日は良い天気だな」
――――今日は何か良いことがありそうな気がする――――
優翔はそう思いながら、食卓へと向かうと既に母親が作ってくれた朝食が机に並べられており食パンにサラダ、目玉焼きなどがいい匂いをさせている。優翔は椅子に座り「いただきます」と言い朝食を取る。
「モグモグ……」
「あら? ちょっと、首のそれ絡まって危ないわよ」
母親に言われた優翔は「あ、本当だ」と笑いながら首元で捻れて絡まっているネックレスを解いた。このネックレスは優翔が小さい時から大事にしている物。
約10年前に住んでいた街から引越しをした優翔にとって昔の思い出の品である大事なもので常に肌身離さず身につけている。
高校の制服に着替えると学校行きのバスが来る時刻となり家の玄関で靴を履き「いってきます」とドアを開き家を出た。
「おっ! おはよう優翔、今日はいつもより来るの早いじゃないか。どうした?」
「別に大したことじゃないよ。今朝は少し気分が良くて早く家を出ただけだよ」
友人との朝のやりとりを終えホームルームから始まり時間割り表通りに午前の授業が進み、昼休みの時間へと至り友人と昼食をとったり、
先生に荷物持ちの頼まれごとを受けたりしながら早々と午後の最後の授業の時間になった。
「今日の授業は歴史か……」
優翔がそう呟いていると授業が始まった。
「それじゃあ、今日はみんなも知っていると思うけど、30年前に起きたあの災害について勉強します」
女教師は教科書を開くと、そのページ書かれている文書を読み始める。
その内容は30年前、最初に起きた場所、外国の小さな国とそこから始まる世界の歴史の話。
とある小国の空に突然、小さな穴が現れ拡大していった。
その穴はとても黒くまるで闇のように真っ暗であった。
この穴が後にパンドラと呼ばれるもので、パンドラは不定期に出現と消失を繰り返した。
次に起きた事はパンドラからやってきた奴のこと。
奴らはガイアスと呼ばれパンドラから様々な形で現れ、人々を襲い始めた。
何が目的なのか、何故このような事が起きたのか、それは現在でも解明されていない。
その国はあらゆる他国から援軍を頼みガイアスとの戦争を始めたが、ガイアスの肉体は特殊な細胞で守られており人類の兵器は全て効かず、その国は滅んだ。
そしてパンドラはその国だけで終わらず、全世界で発生しガイアスにより次々と壊滅に追いやられ人々は絶望に屈していった。
「しかしその時、人類に希望の光がさしました」
女教師が教科書の文を読み授業を進めていると、1人の生徒が意気揚々とその場に立ち上がり口を開く。
「出た! メタモル細胞でしょ!」
「よく覚えてたね、偉い」
「えへへっ……」と嬉しそうに照れながら生徒はそのまま席に座ると、授業が再開する。
人類の希望の光――それはパンドラから来たナノマシン、メタモル細胞と呼ばれるもの。
それが人間の体内に入ると人体を様々な物に変化させる事が出来る変幻者となることが出来た。
メタモルが変化した武器のみがガイアスの特殊細胞を無効化し、攻撃が出来る唯一の兵器となった。
人間たちはメタモルによりガイアスに抵抗することができ、現代まで生き残ることが出来た。
その後メタモルを増員させようと研究をしたが、メタモル細胞が入った人間全てがメタモルになるので無い事がわかった。
メタモル細胞に適合した人のみが変幻適合者――メタモルになる事が出来たのである。
教科書を読み終えると、女教師は生徒の方に顔を向ける。
「これが150年前のパンドラの話です。そして今はメタモルによる戦闘施設があり、ガイアスと戦ってくれています」
女教師の話が終わり質問がないか尋ねる。
すると1人の生徒が手をあげる。
「先生! その施設にはメイドや執事が沢山いるって聞きましたけど、本当ですか!」
「ええそう聞いています。メタモルが変化するには実際にその物を知る事と、変化するために精神力が必要になります。その両方を鍛えるのにメイドや執事は最適と言う理由から、施設の人はみんな執事やメイドの仕事も兼ね備えているらしいです」
教員のその言葉に生徒たちは一斉に騒ぎ始める。
「おいおい、本物のメイドだって!? 会ってみてぇ!」
「執事ってやっぱりお嬢様とか言ってくれのかな! 憧れるなぁ」
「……夢だなぁ……」
期待と興奮で授業そっちのけになってしまい、その光景を見ていた女教師はため息を吐くと、腕を組み笑顔を浮かべる。
「……そうかそうか、そんなに良い勉強になったか。なら来週テストに出すから満点期待してるよ!」
「……えぇーーー!!!?」
生徒達の叫び声と共に終了のチャイムが鳴った。
本日の最後の授業である世界歴史の勉強が終了し、普段の同じく生徒による校内清掃を行う。
淡々と掃除をする生徒の中には先ほどの歴史の授業で告げられたテスト予告にブツブツと文句を言う生徒もおり、
近くを通りかかりその生徒の話を聞いた先生は「文句を言う前にちゃんと掃除をしなさい」と丸めて筒状にした教科書で生徒の頭を叩いて注意をした。
「ちぇ、聞かれちゃったか」
先生に注意され苦笑いをする生徒。
そのやりとりを見ていたクラスの生徒による笑い声が教室に響く。
世界の何処かでは、先ほどの授業に出たように今でもパンドラから現れるガイアスによる災害が起きている。
しかし、今の自分たちには関係のない、他人事なのだとその場にいる皆がそう思っている。
掃除の時間が終わり皆が帰路に向かっている中、優翔は最後に掃除道具の片付けが終わると友人と帰る支度をしていた。
「やっと終わった。優翔、一緒に帰ろうぜ」
「おう、帰るか」
校舎を出て校門へと向かう優翔と友人。
「それにしても優翔、おまえまだそんなもん首に付けてんのか?」
「そんなもんとは失礼だな! 大事な思い出の物なんだよ!」
優翔が首に付けているのは四葉のクローバーのペアキーホルダーを改造したネックレス。昔から肌身離さず身に付けている物である。
「大事そうにいつも身につけてるけど、もう何年も前の物だろ? 今流行りのアクセサリーに変えたらどうだ?」
「良いんだよこれで、ほっとけ。」
校門を抜け、バス停へ向かおうとした時――
「うん? 何だあれ?」
「ん? どうした……?」
友人が急に空を見上げだし、優翔は不思議に思い友人の視線を追うと空中に黒い何かがあった。
「うそ……だろ……」
「あ……あれって……――」
見ていた黒い何かはだんだんと拡大していきそれは漆黒の巨大な穴となった。
「ぱ、パンドラ……!?」
それがパンドラであることを優翔が認識すると同時にパンドラの中から、ズンッ――と巨大な怪物が3体現れた。
全身を薄灰色の甲殻に覆われ甲殻の間にある関節部分は赤黒い肉体で出来ており、例えるならオーガの様な巨体に装甲を纏わせたような見た目のガイアスである。
「う、うわぁーーー!!」
友人は急ぎ学校側へ走り逃げて行った。
「…………っ」
優翔は体が動かず、その場に座り込んでいた。
3体の内2体はそれぞれ別の方向へと向かった。だが、1体のガイアスはしばらく周りをキョロキョロと見ていると優翔の存在に気付き、とても不敵な笑みを浮かべ巨大な拳を振り上げる。
――――あ、死ぬ――――
「くっ!!」
優翔が死を覚悟した瞬間。
「――…………?」
ガイアスの動きが止まると同時に、優翔の目の前に1人の黒い長髪のメイド姿の女性が現れ、呟いた。
「……やっと、会えた」