第9話 得た物失くした者
初めて書き始めた小説なので、文章としておかしな部分が多々あるかと思いますが、ご了承ください。
ガイアスの振るった鎌を手に持つ日本刀で受け止め、キリキリっと軋む音を立てぶつかり合いながら優翔は次の動きの様子を見ている。
ガイアスは振り下ろした左鎌とは逆に右鎌を瞬時に横向きに振るう。それに気づいた優翔が左鎌を一気に押し上げ、迫ってくる右鎌を刀で弾き返した。
衝撃でガイアスが体勢を崩した隙に、リンクで強化された脚力による跳躍でガイアスとの距離を置く優翔。
「すごい跳んだ!」
『これがリンクよる身体強化です。脚力だけでは無く腕力、さらに知力など全てが現在向上しています』
優翔が今一度刀を握り直しガイアスに向け水平に跳ぶ。一瞬の間に距離を詰めると下から上へ切り上げる。その攻撃に反応したガイアスが左右の鎌で防ぎ、防いだ鎌とは別の左右の鎌を優翔に向け振るった。
優翔は切り上げていた刀を抜き、頭上まで迫っていた鎌を右へ左へと弾くとガイアスの右側に回りガラ空きとなった胴体を切りつける。
しかし攻撃は浅く入り、ガイアスはすぐに反応し反撃をする。それに気づいた優翔は再びガイアスと距離をとる。わずかな時間に攻防を繰り広げた優翔は荒れた呼吸を整えながら次の手を考えている。
「流石に向こうの武器が4つに対して、こっちが一刀っていうのはキツいな……」
『……優翔様、ぶっつけ本番とはなりますが、リンクウェポン を試してみましょう』
策を考えていた優翔に泉美は1つの手を提案する。それが何か優翔は質問をする。
『リンクウェポンとは、リンク時に発動出来る特殊武器、超能力のことです。ガイアスとの戦いで圧倒的に有利に立てる切り札のような物。優翔様、リンクを極限まで集中してみて下さい』
「……わかった」と答え優翔は両目を瞑り、体内から溢れる力の中心に意識を向ける。
――暗く深い渦の中に入っていくかの様な感覚に包まれる優翔。
優翔は気がつくと意思と肉体が切り離されたかの様に外界の感覚が無くなり、内面の世界へと入っていた。その事を不思議と気にもせず渦の中へと優翔は進んでいく。
渦の中には強い逆流が流れている。リンクで得た力の流れに呑まれ中心に向かうことが困難な中、優翔は流れに逆らい力の先にあるさらなる力を求めて前へ進んで行く……。
優翔は一歩ずつゆっくりと遥か遠くに見える、力を具象した光を目指して行く……。
永遠に感じる道程を歩き続けていると、何時しか光の下に着いていた。
優翔は光の下に着くと一驚した表情をする。そこには光を両手で抱える半透明の姿をした泉美に似た女の子がそこにいた。
何者なのか優翔は問い掛けようとするが、その空間では優翔は声を発せず何も話せないでいる。女の子は笑みを浮かべ、両手に抱える光を優翔に差し出すと『力を得たばかりなのに、もう新しい力を求めるんだね。良いよ、貴方と彼女の物だもの、この力も、あげるね』と言い光を優翔の胸に当てる。
光は徐々に体の中に入っていき、優翔は一瞬驚くもすぐに落ち着き視線を女の子に戻す。依然、女の子は優翔を見つめ微笑んでいる。
すると女の子の体が次第に透けて消え始め、周りの空間も白々としていく。
視界から消えていく女の子は最後に『これでしばらくはさよならだね。またね……』と優翔に言い残すと、空間と共に消えた――
優翔が不動のまま立ち尽くしていると、ガイアスは着々と優翔に向け近づいて来ていた。
『優翔様、お早く!』
泉美が切実に優翔の帰還を待つも一向に動かず、遂にガイアスが直ぐ側まで辿り着く。ガイアスは大きく鎌を振りかぶり優翔に斬りかかった。――しかしガイアスの鎌は優翔に届かなかった。残り数センチの距離で刀を持つ手に阻まれたのである。
「あ……っぶなかった! ギリギリセーフだ」
『優翔様! 無事戻られたのですね』
安堵した泉美に「遅くなってごめん」と言うと優翔は防いでいる鎌を刀で弾く。反動で後ろに後退したガイアスは一瞬何が起きたのか分からず不思議そうな仕草をするも、本能で直ぐに戦闘態勢に入る。
『直ぐにガイアスは迫ってきます。どう致しますか?』
「……使い方も分かるし、早速新しい力を使ってみますか!」
刀を構え直した優翔にガイアスが今一度即座に距離を詰め、1つ目の鎌を振るう。――瞬間、優翔とガイアスの鎌の間に1本の剣が空中に現れ、浮いた状態で鎌を受太刀する。
「――1つ」
ガイアスは鎌を押し付けたまま続いて2つ目、3つ目と鎌を振るうと、更に2本の剣が現れそれぞれ受太刀をする。
「――2つ、3つ」
残った最後の鎌を横薙ぎに振るう。――が4本目の剣に防がれた。「――4つ!」と力強く優翔は発し、各剣に全ての鎌を防がれ無防備になったガイアスに刀を一振り切りつける。
切られたガイアスは鎌を引っ込め優翔と距離を取る。
優翔の思うままに周りに浮遊する4つの剣。これこそが優翔の新たな力。
「4本の剣を顕現させる力、それが俺達のリンクウェポン。名付けて――ソードダンサー!」
『数の利もこちらが上、一気に勝負を着けましょう』
優翔はソードダンサーと共にガイアスに突撃をする。ガイアスが1つ鎌を振ると2本の剣を交差して受け止め優翔の刀で鎌の肘部位を切り裂き切断する。
ガイアスの反撃で反対から鎌が迫るが残った2本の剣で受け止める。意識をそちらに向けていると優翔の頭上から鎌が振り下ろされて来ていた。
「泉美、盾!」
泉美が刀から即座に長方盾にトランスすると盾で防ぐ。刀から変わりリンクが解除されソードダンサーが消失する。
盾越しから伝わる鎌を押し付ける重圧を耐える優翔、盾を傾け鎌を斜めに流し回避すると直ちに刀に戻りリンクを発動する。
鎌を1つ切られた事でガイアスは興奮状態となり3本の鎌を振り回してながら暴れている。
「次で行くぞ、泉美」
『はい……。篠明達の仇をとりましょう」
優翔は脚部に力を込めると跳躍した。天井との中間地点まで飛ぶとガイアスに向け一直線に落下する。
頭上にいる優翔に目掛けガイアスが3本の鎌で斬りかかるが、同時に優翔がソードダンサーを発動させ各鎌の手首部位に剣を突き刺し、鎌ごと床に下ろしてガイアスの動きを封じる。
ガイアスは最後に噛み付こうと牙を晒すが残った剣をガイアスの口に目掛け飛ばし下顎を斬り飛ばす。
優翔は刀を握り直しガイアスの元へ着くと力の限り刀を振るいガイアスの首を切り裂いた。
飛躍した身体能力で軽々と着地した優翔。飛んだ頭部が遅れて落下し、その後胴体も前のめりに倒れる。
「か、勝ったぁ……」
『勇猛なお姿でした、優翔様』
披露した表情を浮かべ優翔は泉美の賛辞を受けながらリンクを解除するとガイアスの亡骸に背を向け、刀を杖代わりに休んでいる。
すると広場の入り口から数人の団体が優翔達に向かってくる。メタモルフォーゼの攻撃部隊であることを確認すると安堵する優翔。
――突如、背後の死骸となったはずの頭部の無いガイアスの胴体が起き上がり鎌を振るおうとする。
「――っ!?」
咄嗟の出来事に一驚し動けない優翔を、トランスを解除し庇うように前に立つ泉美。
その時、攻撃部隊の方から見えない空気弾が放たれ、それがガイアスの肉体に命中し振るおうとしていた鎌の肩を打ち抜いた。
直後ガイアスの肉体が今一度倒れ今度こそ動かなくなり塵となり消えていった。
攻撃部隊から放たれた空気弾は部隊リーダーのリンクウェポン――エアショットと言う能力による物であり、手銃の形をさせたリーダーを筆頭に部隊は他にガイアスが居ないか確認をして終えると優翔達を保護する。
優翔は「先ほどはありがとうございました。助かりました」と部隊リーダーにお礼を言うが、部隊リーダーは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
部隊リーダーはブルーシートに被せている西と篠明に視線を向けていた。「救助が早ければ助けられたかもしれなかった。本当にすまない」と深々と優翔に謝罪をする。
部隊リーダーがその場を去ると優翔は西達の元に行き、被せられたシートをめくり西と篠明の顔を見る。共に並べられた2人の表情はどちらも静かに目を瞑った顔をしていた。
その後部隊の者により出口へと運ばれて行く西達の姿を優翔はただ見届けていく……。
「優翔様、屋敷に戻りましょう……」
現場の後処理を部隊の者に任せ、優翔は泉美に連れられて屋敷へ戻って行く。
花見屋デパートの戦いから2日経つ頃、優翔は寮の部屋で何をするでもなく黄昏ていた。
「優翔様。本日、西様と篠明の葬儀が行われますが、如何いたしますか?」
部屋に入って来た泉美が葬儀の誘いをすると「ああ、俺も行くよ」と言い喪服に着替えた優翔と泉美は葬儀場に向かう。
葬儀は進み、家族一行とその関係者は墓石の前にいる。「何故私達の子が!」「何故あなただけ生きている!」と両家両親に罵声を受ける優翔。
「優翔様は、あの時助けようと……」
優翔の弁解をしようとした泉美を制止した優翔。「……申し訳ございません」と頭を下げ謝罪をし、罵声を一身に受け止めた。
――そこから時間が経ち、夕日が沈み始める頃、ほとんどの人が帰宅し、その場には優翔と泉美の2人だけが残っていた。
西と篠明の生前の希望により隣接し作られた墓石の前で黙り続ける優翔。
泉美はそれを静かに見守っている。
「……泉美ちゃん」
口を開いた優翔の呼び掛けに泉美は答える。
「これが現実なんだな……当たり前のように簡単に人が死ぬ。その世界に、オレは今いる。……俺、もう誰も殺させないように強くなる! 着いて来てくれるか?」
泉美の方を振り向いた優翔の目には強い信念と誓いが宿った目をしていた。泉美が「はい」と頷き、優翔の側に寄り優翔の手を握る。
「優翔様と私なら、必ず強くなれます」
新たな約束を誓い合った2人のネックレスを、夕日は照らし続けた。
翌日、リンクを解得した優翔と泉美は神河に正式な実行部隊に任命された。
優翔は意気揚々と「強くなるために鍛錬をするぞ!」 と訓練室に向かおうとするが「その前に座学です、優翔様」と泉美に引っ張られながら優翔は教学室に向かう。
戦いで失ったものと得たものを胸に、優翔は戦い続ける。
「絶対、誓いは守るよ……。西……篠明」
この話でしばらくお休みします。
次話の予定は未定です。