第0話 あの時の約束
初めて書き始めた小説なので、文章としておかしな部分が多々あるかと思いますが、ご了承ください。
物語が始まるおよそ150年前の昔。
まだ世界は平和だったと言っても、今の人々は信じはしないだろう――
150年前、突如世界中の国々の至る所に巨大な漆黒の穴が出現し、そこから奴らは現れた。
奴らは空を飛ぶもの、地を這うもの、水中に潜むもの、さまざまな姿をし無差別に人類を喰らい襲い破壊していき、たったの1年で世界の人口は4分の1に減った。
無論人類も手を取り合い、奴らの撃滅を目指し武器を取ったのだが、1つとても大きく、無慈悲な問題があった。
それは奴らに人類の武器は効かないことだった。
重火器に近接武器、そして核兵器を持ってしてもどんな武力を持っても奴らに抗う術を見出せずにいた。
それから10年、人類が終焉を覚悟した時、人類に新たな騒ぎが起きた。
それは1人の民間人の子供が公園で砂遊びしていた時のこと――
「ママ見て、足が……」
子供が親に見せたのはおもちゃのスコップに変化した自分の足。
親は急ぎ病院に連れて行き医者に見せていたがその最中、スコップになった子供の足が元に戻った。
その出来事を知った政府は徹底的に原因を調べた結果、それは奴らと一緒に漆黒の穴から来たある物が原因だった。
それはナノマシン……後にメタモル細胞と呼ばれる物だった。
それに気づいた時にはメタモル細胞は10年をかけ世界中に広がっており、それが体内に入ると自身の身体をどんな物にも変化することが出来ることがわかった。
そして、100年間の研究の果てに人類に希望の光がさしたのだ。
それは身体を変化させた武器ならば奴らを倒せるということに。
それは《パンドラの箱》のように、人類破滅の原因の中に最後の希望があったのだ。
そして150年たった今、奴らに抗うべく長年準備をした人類の成果が遂に実ろうとしている時のこと。
とある民家で7歳の男の子と、女の子が遊んでいる。
「つぎあれであそぼっ!」
「まってよ、いずみちゃん!」
TVを見たりお人形遊びをしたりと、とても仲好さそうに2人の子供は遊んでいた。
2人は赤ん坊の頃から親がご近所付き合いをしており、幼馴染の2人は幼稚園でも一緒にいることが多く、家に帰れば夕方まで一緒に遊ぶほどである。
そんな2人を笑顔でリビングから見ていた子供達の両親は2人が別の部屋に行ったことを確認すると険しい表情になり、リビングに重い空気が広がる。
「そうですか……ではやはり、春季さん達も引っ越しされるのですね」
「はい……。日本ならまだ安全だと思っていたのですが、東京にもパンドラが出現したとニュースで聞いていますし、政府が対策をしている場所が丁度妻の実家なのでひとまずそこへ……。疾瀬さん達は?」
「そうですね……。ここもいつ危なくなるかわかりませんし、私達も時期を見てここを離れようかと思っています」
「しかし、心配な事が1つありまして……」
「……わかります。あの子達が会えなくなるのが心苦しいですよね」
「……はい」
「そういえば、娘さんは確か……」
「はい、その件もあって実家へ。……しかし、何故私達の娘が……――」
親達が話してるのを扉の隙間から聞いていた女の子は扉を静かに閉める。
「どうしたの? いずみちゃん」
「……ううん。……ねぇ、いつもの所に遊びに行こうよ! ゆうちゃん」
「……うん! いいよ!」
2人は親に黙って家を出て近所の町にある小さな山にある丘の公園へ向かった。
そこは2人がよく遊びに行く公園であり、公園の周りは転落等の安全のために高い柵で囲まれている。2人は公園のベンチの裏に回ると柵が壊れて出来た小さな穴へ入って行く。
そこから少し行った所には山から町を一望できる隠れ絶景ポイントがあり、2人はそこで手を繋ぎながら日が沈む町を見ていた。
「……ん?」
「…………」
男の子は女の子の顔を見るととても寂しそうな顔をしていた。
「……どうしたの? いずみちゃん」
「……あのねゆうちゃん。わたし、もうすぐおひっこしするみたいなの……」
「ここもあぶなくなるってパパとママがはなしてた。それにわたし、てきごうしゃっていうのになったみたいなの……。わたし、よくわからないけど……」
「これから、どうなっちゃうのかな……」
「いずみちゃん……。そうだ! これあげるよ!」
男の子が取り出したのは四つ葉のクローバーのペアキーホルダーだった――
「これ……ゆうちゃんのたからものじゃないの?」
「うん。これ、かたほうをいずみちゃんにあげるよ。これを《たいせつなひと》ともってると、どこにいってもぜったいまたあえるんだって。ママがいってた」
少女の手にクローバーの片方をもたせると、自分もクローバーの片方を大事そうに手にもつ。
「……ありがとう。たいせつにするね」
少女は、貰ったキーホルダーを強く握りしめる。
「……ぜったい、またあいにくるね。そのとき|《――》やくそくだよ」
「うん、ぜったいする! やくそくするよ!」
少年は少女の手を握りしめる。
暗くなりつつある空の下、丘の上で手を繋ぐ2人の少年、少女の手の中にはいつか果たす約束の印のクローバーがあった。
それから数十年後――
とある学校で1人の学生が教室で友人と会話をしていた。
「ニュース見たか? また化け物との戦闘があったんだってよ」
「はぁ……。そんな事よりお前、テスト勉強しなくていいのかよ」
「ふっ……そんな物、もう諦めたよ優翔 ……」
「諦めるの早いよ!」
とある施設の広間に整列して立っているメイドと執事姿の彼らの前で1人のメイドが話していた。
「良いですか。私達は人類の為に常日頃から訓練に励み、我々《メタモルフォーゼ》は――」
「……あんなこと言ってるけどメイド長、まだご主人を決めて無いらしいよ」
「えっ!? 泉美様まだお相手がいな――ひっ!」
無駄話をしていたメイドたちに何処からともなく鞭が現れ、メイド達の足元でしなる。
「私語はしない。それにちゃんとご主人様をつけないさい」
鞭は泉美の腕の裾部分に戻ると鞭が姿を変え、腕に戻った。
「は、はい! 泉美様!!」
「よろしい」と反省したことを確認した泉美は朝礼を再開する。
全く違うそれぞれの場所で、違う人生を過ごす2人。
《1人は普通の高校生》《1人は大勢をまとめるメイド》。
しかしその2人の首にはどんな時にも肌身離さず付けているクローバーのネックレスがあった。