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空飛ぶキモオタ

 翌日、俺達は山の頂上付近で、源安さん達と落ちあった。それはある作戦の為だ。山の中なので、正確な場所までは指定しにくかったが、カリンとミツハが目印を付けながら来ていたので、ここまで来るのに迷う事はなかったみたいだ。

 源安さんは、何人かの屈強な男達を引き連れている。あの火消しの親分である、大門の子分の人達だ。その男達の一人の背に居座を付けて座れるようにし、担がれながら源安さんはここまでやって来ている。十人はいる大所帯で、背中に大きな箱を担いでいる者がほとんどだった。

「いやぁ、背に担がれていただけじゃったが、この年でマウンテンを登るのはキツかったわい。作戦に必要なブツはちゃんと持ってきてやったぞい」

 源安さんが後ろにいる男達を、親指でクイッと指した。

 男達が荷を降ろし、中に入っている物を取り出し始める。荷の中には細かく分解された、様々な何か部品が入っている。

 源安さんは、それらを男達に指示を出しながら要領よく組んでいく。完成したのは、席が複数ある自転車のような物だった。違っているのは真上に大きなプロペラが、前から三つ上向きに並んで付いている事だった(後部にも左サイドに、横向きのプロペラが一つ付いている)。

「さぁ、完成したぞい!これがワシのシィクレットウェポン、『ふぁいなる・ぺがさす・ふらいんぐ・さ〜かす号』じゃ!」

 これは源安さんが開発したという、空を飛ぶ為の発明品だ。見た目通り、これは足でペダルを漕ぐ事により、真上のプロペラが回転して空を飛んでいくという代物だった。理屈はヘリコプターとほぼ一緒だ。元々、源安さんが作ったプロペラ式の空中に浮かぶ発明品を、俺がヘリコプターの原理を伝えて改良してもらった。回転式の発明は、天才にしか思い付けないと聞いた事があるが、源安さんはまさしく天才なのかもしれない。前のバージョンの発明品を試運転した時は、ちゃんと飛ぶ事はできたが、ある程度の高さまで飛ぶと機体が分解し始め、乗っていた者は下に落ちて怪我をしたという話だ(源安さんが乗っていた訳ではないらしい)。今回はぶっつけ本番で乗る事になるのでかなり不安だが、ちゃんと改良はしてきた源安さんは言っている。制作期間が短いのと、ヘリコプターのように改造。多人数で乗る為や、分解して持ってこれる様にする為に、大変苦労をしたそうだ。

 これで魔王の拠点近くまで飛んでいき、奇襲をかけるというのか今回の作戦の主旨だ。


 俺達がここまで妖し達とほぼ出会(でくわ)さなかったのは、実は新次郎さんに頼んで将軍家に軍勢を出してもらい、山の麓で妖し達を引き付けてもらっているからだ。別に戦闘はしなくてもいいと伝えておいたので、将軍家も渋々だが了承してくれている。 


 機体の座席は七つあり、乗り方は自転車と変わらない。

 みんなで『ペガサスなんとか号』の座席に順番に座った。座席はちゃんと七つあり、乗り方は自転車とほぼ変わらない。一番後ろに座った者が、ヘリコプターではテイルローターに当たる部分を操作して、進行方向を決める仕組みになっている。

 体力がありなんとなく頼れそうな徳田さんが先頭、舵取り役の最後尾にはカリンに座ってもらう。進行方向に少しズレがある場合は、徳田さんが前からハンドサインを出して、カリンに伝えるという段取りになっている。徳田さんの次から順に俺、ワタナベさん、アーリエ、プロヴダ、獣子、ミツハ、そしてカリンといった感じで座っている。

 みんなで一勢にペダルを漕ぎ出す。勢いよく漕いでいると、少しずつ機体が浮き始めた。

「もっと必死に漕ぐんじゃあ!ソウルがファイヤァじゃ!」

 源安さんが側でうるさく叫んでいる。

 やがて、機体は周りの木の高さぐらいまで浮いていた。

「イエス!前に試した時よりも高く上がったぞい!」

 そして、木々の向こう側が、だいぶ見渡せるぐらいの高さまで機体は浮き上がる。俺とプロヴダが、自分の真上にあるプロペラの軸に付いてあるハンドルをグルグルと回した。するとプロペラの角度が変わり、機体は前へと進み始めた。

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