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用心棒
家老がアーリエに妾になるようにとしつこく食い下がっていたが、将軍はその間顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。そして、遂に将軍は怒って段の上手の方に引き下がってしまった。会見はそれでお開きとなった。
魔王に対する手立ての話はまったく出ないままだったのだが、これでいいのだろうか?
次の日、また宿に誰かが訪ねてきた。今度は俺とワタナベさんが寝泊まりしている部屋に、直接客を通してきた。
訪ねてきたのは大柄の男性で、城からの用事があって来たのだと言っている。俺は昨日の件もあり、将軍が仕返しに刺客でも差し向けて来たんじゃないかとビクビクしていた。
「お初にお目にかかります。拙者、名を徳田新次郎と申します。今回、貴殿等と供に妖達の大将である魔王退治に加勢をするよう、将軍家より言われて参いりました」
男性はそう語った。どうやら将軍家からの助っ人らしい。
男性の格好はただの着流しで、頭も伸ばした髪を後ろで無雑作に括っているだけだ。顎には無精髭を生やしており、酒の匂いまで少し漂っている。顔は精悍で男前だが、町のゴロツキのようにも見える。




