火事と喧嘩はオエドの花
建物の窓からは、モクモクと煙が出ている。火もすでにチラチラと見えていた。
火が出たのは、街道の脇にある商店の一つで、二階建て三十坪程の広さがある。
建物の前では、何故か揉めているような人達がいた。
「止めないで!早く赤ん坊を助けにいかないと!」
その揉めている人達の中心にいる女性が、大声で叫んだ。どうやら彼女の赤児が、店内に取り残されているらしい。彼女はそれを助けにいこうとしているが、回りの人達に止められている様だった。
正面の玄関からも、中の火がかなり燃え広がっているのがわかる。この中に飛び込んでいくのは、流石に自殺行為かもしれない。
「私が助けに行きます!」
周囲の人の目線が俺の方に集まる。俺の方から、その声が聞こえてきたからだ。俺はすぐに真後ろを見た。そこにはニヤリと笑っているミツハが立っている。ミツハが出した声は、俺の声にそっくりだった。
回りの人達の期待の視線が俺に集まっていた。どうやらミツハに嵌められたようだ。なんでそんな事をしたのかわからないが、これで行かない訳には行かなくなった。
回りの人達も気を使ってか、水を持ってきて俺にバシャバシャと掛けてくれている。
サーカスの火の輪潜りのライオンの気持ちになりながら、俺は気合を入れる為に自分の顔を両手で思いっ切り引っ張ったく。そして、手抜いを口元に巻き、店の中へと飛び込んでいった。




