さらば、愛しき豚野郎②
獣子が俺の胸に包丁を突き刺す為に力を入れようとした瞬間、彼女の後ろに何者かが忍びより首筋に刃物を当てた。
「……包丁を横に置きなさい」
後ろにいたのはカリンだった。獣子は言われた通りにする。
「お前はキノコを食べなかったのか?」
「少しだけいただきましたよ。でも私は忍なので、毒が効きにくいんですよ……」
カリンは獣子を組み伏せ、自分の服の帯で獣子の身体を縛り上げた。そのまま土間に彼女を転がして見張りをしている。朝になると、俺達の身体からもすっかり毒が抜けていたので、カリンから全ての事情を聞いた。
土間の獣子を見て驚いたのは、頭に変な物が付いている事だった。頭巾が脱げていたので、それが見えていたのだが、丸い獣のような耳が左右に一つずつ付いている。獣子は、「これはワタシの耳だ」と言った。
カリンにも聞いてみたが、獣が混ざったような姿の人間が、たまに産まれるとらしいという話は聞いた事があるが、自分も初めて見たと語った。
もしかして獣子も妖しなのだろうか?獣子は、「あんな奴等と一緒にするな」と言っている。じゃあ何故、俺を殺そうとしたのかについて尋ねると、「ただ美味しそうな匂いがしていたからだ」と言った。俺を食べようと狙っていたらしい。他の者は要らないので、殺して捨てようと思ったと言っている。この娘、凄い怖い……。美味しそうに思われたのは、俺の能力のせいなのかな?
獣子の事をどうするか、みんなで話し合ってみる。またこんな事を仕出かすとあれなので、近くの町の人に引き渡すのが良いと思われるのだが、獣子は今回のような事をしたのは、これが初めてだと言った。
カリンが、「この娘を連れていく事はできませんか?」と何故か言っている。何か気になる事があるらしい。
俺は獣子に食われかけた身なので、連れていくの嫌なのだが、カリンを除くみんなは『別に構いませよ』と言った空気を出していた。
獣子にも一応、伺ってみると、
「ワタシも一緒に行きたい」
と、言った。
結局は多数決で獣子を連れていく事になってしまっていた。




