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さらば、愛しき豚野郎
……獣子が土間で包丁を研いでいた。俺は動くことができずに、それを横目でジッと見ている。真面な思考もできないので、「シュッ、シュッ」という包丁を研ぐ音を、ただ夢心知のまま聞いていた。
包丁を研ぎ終わったのか、それを持った獣子が側までやってきた。
「キノコの毒が効いてるからたぶん痛くないよ。苦しまない様にもするし」
そう言ったようだが、俺には痺れのせいで言葉の意味が理解できない。ただ彼女の事をジッと見ているだけだ。
獣子が横に座り、俺の胸に包丁を突き立てようとした。




