獣爪
獣道のような細い山道を通り、その人の家へとやって来た。
家は見窄らしい山小屋にしか見えない。彼はここに一人で暮らしているらしい。家の隣にも何かよくわからない小屋がある。
馬はどこから現れたのかわからないミツハが、先に連れていっている。一人で山道を行くのは危ないのではないかと思ったが、ミツハは先行して先を観てきたから大丈夫だと言った。先行していたなら、さっきの妖し達が待ち受けているのもわかったんじゃないかと思ったが、よくわからない。
彼に家の中に入れてもらうと、中は日本昔話に出てきそうな造りになっている。真ん中に囲炉裏を切っている、板間が一部屋しかない八畳程の間取りだ。家の中に入ると彼は首に巻いてあった布を取った。顔は少年にしては可愛いような気がする。気になるので性別を伺うと、自分は女だと言った。名前は『獣子』というらしい。
山の夜は早く、食事などの準備をしていると、すぐに日が陰ってきた。夕食は誘ってくれた彼女が、猪の肉と山菜と茸を煮込んだ鍋をご馳走してくれた。
食事中、獣子にいつからここで一人で住んでいるのかなどを尋ねてみる。彼女は指折り数えながら、だいたい一年ぐらい前からだと言った。前は自分を育ててくれたお爺さんと一緒に暮らしていたらしいが、そのお爺さんは山で事故に遭い亡くなってしまったんだそうな。
特に気になる事でもないが、獣子は何故か食事中でも、頭の頭巾を取る事がなかった。
食事が終わり一息つく。しばらくすると、自分の手足が少し痺れている事に気が付いた。その痺れは徐々に身体の隅々へと広がっていく。とうとう舌まで縺れだしてきている。この身体の異変を訴えようと回りを見てみたが、みんなの様子もなんだかおかしい。俺と似たような状態になっているようだ。
何も出来ずにいると、目の前がグルグルと回りだした。身体を支える事もできなくなり、いつの間にか崩れるようにして横に倒れていた……。




