都へ
オザカから二日程歩いて、神国の国主たる皇ノ命が住まう『都』までやってきた。
都は碁盤目のように区画が整理され、道沿いに建物が整然と建ち並んでいる。港町のオザカとは違い、町はかなり落ち着いた雰囲気がしていた。ここの町の人達の格好は、ニニギ達と同じような飛鳥人っぽい格好がほとんで、着物姿の人達の数はかなり少ない。
都の門を過ぎ真っ直ぐ進んでいく。そのうち正面に、国主が住んでいるという皇宮が見えてきた。道を進んでいる際に都の人達からかなり注目されていたが、特にアーリエがに注目する人が多い様だった。金髪碧眼で耳の長いエルフのアーリエは、こちらでも珍しいのかもしれない。
皇宮を囲っている塀の真ん中にある大きな門を、馬を下り潜ってみると、すぐに大きな前庭に出た。その向こうには横に広い、大きな建物がある。
馬を一緒に来た使者一行の一人に預けた後、建物の正面まで続く石畳を渡り、小さな木製の階段を上って建物の中へと入った(高床式なので、建物は地面から少し高くなっている)。
建物にはいくつもの棟があり、それを渡り廊下で繋ぐ構造になっている。ニニギは中に入ると、すぐに到着した事を上の者に報告しに行くと言い、玄関まで迎えに来てくれていた使用人のような人に向かって、「俺達を控えの間へ案内をするように」と指示をしていた。
廊下をくねくねと渡り歩き、どこかの部屋まで案内される。そこで皇ノ命との対面まで待たされる事になった。部屋の中の床には畳が敷き詰められており、その上に直に座って寛ぐというスタイルのようだった(要はただの和室だ)。
待っている間、給仕の女性がお茶を運んできてくれたりしていたが、けっこう長い間待たされているので、プロヴダが目に見えてイライラしてきている。大人しくジッとしているのが苦手な娘だった。アーリエとワタナベさんは落ち着き払い、出されたお茶を静かに喫していた(たまに厠へは行っているが)。
二時間ぐらいしてから、やっと案内役の女性が、俺達を呼びにやって来た。女性の後ろかゾロゾロと付いていく。やがて、皇宮でも奥まった所にある、大きな板間の部屋まで案内された。板間の床には円座が置かれており、入ってきた出入り口から正面に見て左から、俺、アーリエ、プロヴダ、ワタナベさんの順に座る。
前方には少しだけ高くなった段があり、その下の右脇にニニギ、左脇には老人が座っていた。