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ゴブリン退治

 アーリエはあれから椅子に座って長い間、考え事をしていた。考え事が終わると普段と同じように家事や日常の作業をこなし始める。それらが済むとさっそく、ゴブリンの巣へ行く為の準備を始めた。俺もできるだけミスをしないようにその手伝いをしていたが、その最中にもある事について悶々と悩んでいる。だが意を決っして、

「俺もゴブリンの住処に連れて行って欲しい」

と、アーリエにお願いした。

「それはできません」

 アーリエにキッパリと断られたのだが、俺は何度もしつこく同行の許可を求めた。アーリエには助けてもらった恩があるし、もし彼女に何かあれば俺は路頭に迷ってしまう。

 何度も何度もお願いをして、遂には土下座までしてみると、アーリエは根負けをして同行する事を許可してくれた。


 アーリエの行動は早く、次の日にはもうゴブリンの巣へと行く事になった。朝も早い内から出発した。そのまま直接ゴブリン達が住み着いているという洞窟へ行く訳ではなく、一度近くにある村へ寄って行く予定になっている。

 俺は主に荷物持ちとして同行している訳だが、その為にリュックを背負っていた。中には今回の作戦に必要な道具が入っている。腰には短剣も携えていた。アーリエが渡してくれた物だ。この短剣は戦う以外の()()()()()()にも使用する事になっている(ヒェ~)。

 アーリエはいつも着ているワンピースの上に、ケープのような物を羽織っていた。斜めに肩紐を掛けてバッグを下げ、そのバッグに短い杖を刺している(杖は先端が純金で、その部分は算盤の球が長くなったような形状をしており長さは15cmぐらいある。そこからは下は細い木の棒で長さは約40cm。杖の分類的にはワンドと呼ばれている物だ)。


 村に到着する頃には、俺は半分死にかけていた。アーリエの家から村までは、徒歩で30分ぐらいかかる距離なのだが、俺はその距離を歩くだけでも汗ビッショリになっていた。やはり長期間の引きこもりによる体力の低下は深刻なものである。

 俺はこちらの世界で観る初めての村に少し興奮をしていたが、疲れていたのでゆったりと眺め回すような余裕はない。村は(のどか)閑な普通の農村で、風景のあちらこちらに民家が点在している。その民間の側のほとんどに畑があった。村の道を歩いていき民家の横を通っていくと、だいたいの家が柵で囲った庭で家畜飼っている。家畜の種類は豚、牛、山羊、鶏などが主だ。家屋はほとんどで木造が、たまに石を組んだ建物も中にはあった(とにかくある歩くのに必死で、なんの建物かアーリエに聞く余裕はなかったが)。

 たまに村人達とすれ違うと、アーリエは必ず挨拶をした。向こうもちゃんと挨拶を返してくれている。だが側にいる俺を見ると一瞬だけだが、(いぶか)しむような表情を見せる。二人組の年配の女性とすれ違った時などは、後でヒソヒソと話をしているようだった(なんとなく雰囲気で俺の事を話しているなとわかる)。怪しい風体の男が妙齢の女性の側に付き添っていれば当たり前の事なのだろうが、俺の気持ちはその度に少しだけ沈んでいく。

 村の子供達が俺を囲んで、「変な格好!」「変な顔!」と騒ぎ出したのには、別の意味で困惑していたが(アーリエは微笑ましそうに笑って観ていた)。


 俺たちは村の中心付近にある、村長の家へとやって来た。村長の家に来たのには挨拶をする為以外にも、ある目的があったからだ。

 村長は丁度在宅しており、アーリエがすでにゴブリン達をなんとかする為の行動を起こしている事に、また新たに感謝の言葉を述べた。

 俺はこの村長にあまり良い感情を抱いてはいない。いくらアーリエが魔法を使えるからといって、こんな若い女性一人にモンスターの対処を頼むなど、非常識だと思っていたからだ。最近、頭がハゲている老人に、トラウマを植え付けられたせいもあるかもしれない。アーリエはそんな事を気にしているような風もなく、

「ゴブリン達に襲われたという若者に、直接話しを聞かせていただいても構いませんか?」

と、村長に頼んでいた。

 村長はすぐ様了承し、その若者の家へと一緒に付いていき頼んでみようと言ってくれた。

 その若者の家に着くと村長が中にいた家の人に事情を話した。どうやら話を聞いても大丈夫らしく、家の中へ招き入れてくれる。

 家の間取りはアーリエの家よりも少し広い。居間に当たる大き目の部屋の奥に寝室があり、そのベッドの一つに当事者と思われる若者が寝ていた。若者は金髪で角刈りみたいなヘアスタイルをしており、頬や鼻の上辺りにはソバカスがあった。口の中でクチャクチャと何かを噛んでおり、かなりチャラついてそうに見える。

 襲われたと聞いていたので、酷い怪我でもしているのかと思っていたが、右足首に包帯を巻いているだけで、後は顔や素肌の見えている部分に擦り傷が少しあるだけだった(若者は当然服を着ているので、見えない部分にも酷い傷があるのかもしれないが、そんな風には見えなかった)。

 玄関で応対をしてくれたたぶん若者の母親らしき人が、ベッドの側に椅子を置いてくれたので、アーリエはその椅子に腰掛け、若者に襲われた時の状況を尋ねた。若者が口に入っていた物を床に吐きだし(何かの草かなんかだった)、その時の状況を語り始めた。

 襲われた場所は村の近くの森の中で、若者はそこを丁度散歩していた所だったらしい。急に沢山のゴブリンが若者の前に現れ、いきなり襲ってきたという。

「俺はただ森を散歩していただけなのに、奴等はいきなり襲ってきやがった!だが俺もちょうど剣を持っていたし、腕もけっこう立つ方だから、奴等にかなり手傷を負わせてやったぜ!」

 しかし、流石に多勢に無勢であり、最後には倒されて傷を負わされてしまったのだと話した。


 アーリエが若者に、「ゴブリン達は何匹ぐらいいたのか?」、「武器は手にしていたのか?」などの情報を詳しく聞いている。若者は何故か話に詰まりながら、細部は濁すような感じで話をしていた。若者が内容を思い出す為なのか、俺の方に顔を背けた時いきなり、

「ウワアアアアアアアアアアッ!!」

と、叫び声を上げた。

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