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さよなら、○ケモンマスター

 だいたいの事情がわかった所で、俺は男をやんわりと諭してみる事にした。「そんな事をしてはいけないよ」と、優しい笑顔で言ってみようと思う。俺と同じでなにかを拗らして、こうなってしまったのかもしれない。穏やかに言えば、きっとわかってくれるはずだ。

「俺はバケモン勝負を挑んだだけだ!悪いことなど何もしていない!」

 男は強気に言い張って、俺の話をまったく聞き入れようとはしない。

「こんなイカれた奴、早く捕まえて王都の警備兵に引き渡しましょうよ!」

 痺れを切らした女が、男に向かってそう言うった。

「このザドジには夢がある!(バァ~ン)」

 男は謎のポーズを取って(服の前を左手でちょっとだけ開き、右手は服の裾を掴み下に引っ張っている)、自分の事を語り始めた。

 ザドジは普通の村で、農民である普通の両親の元に産まれ、普通に育っていたらしい。ザドジはどちらかと言えば陰気な少年だったが、当時世間で流行りだしていた、『バケットモンスター』にド嵌まりする。村の中ではバケモンが一番上手かったザドジ少年は、バケモンマスター(バケモンプレイヤー達の頂点に立つトッププレイヤーの事)になる事をみんなに宣言し、村を飛び出していた。

 こうしてザドジは徴税人に憧れるよりも、『バケモンマスター』に憧れるようになったのだった(ザドジの目立つ服装は、バケモンを世の中に広めた人がしていた服装らしい)。

 

 そのまま、バケモンプレイヤーとして大した結果を残す事もなく、あの年になるまで各地を放浪していたという。その間にバケモンブームも終わってしまい、引っ込みがつかなくなったザドジは、ペットを連れている人を見付けると無理矢理にバケモン勝負を挑み、戦利品として金品をゲットするという、追い剥ぎのような事を繰り返していたのだった。その事が女の追求に明らかになった。どうしようもない奴だ。

 事がバレてしまっては仕方がないと、ザドジが不敵な笑みを浮かべた。

「可哀相だが貴様達の口を封じさせてもらう……。やれっ!ビガジュウ!10万ボルトだ!」

 ザドジが開き直って、足元にいた小さくて黄色い自分の持ちバケモンをけ仕掛けてきた。だが、ビガジュウと呼ばれたモンスターは、攻撃をしてこようとはしなかった。

「なにしてんだよ、ビガジュウ!やれっ!」

 ザドジが何度も命令をするが、ビカジュウはまったく言うことを聞こうとはしない。命令のし過ぎでザドジの息も上がってきていた。

「ハァハァハァ……、なんで言うことを聞かないんだよ!」

「ビガ!ビガビガ!ビガー!」

 ビガジュウがなにかを訴えかけている。しかし、俺達にはビガジュウの言葉がわからない。

「『もうこんな事は止めて村に帰ろう』って言ってるみたいよ」

 女がビガジュウの言葉を通訳した。驚いた事に女には、『動物の言葉がわかるスキル』が備わっていたようだ。幸運のラッキーだった。

「嘘だっ!お、俺のビガジュウがそんな事を言うはずがない!一緒にバケモンマスターを目指そうと誓いあった仲だからだ!」

「ビガ!ビガビガ!ビガー!」

「『あの時は洗脳されていたらしいから……。でも、洗脳なんかもうとっくに解けてるよ』」

 ザドジが驚いている。

「ビガ!ビガビガ!ビガー!」

「『みんなお前が可哀想だから付き合ってあげていただけだよ。お前は村に全然帰らないから知らないだろうけど、お前の初恋相手のガズミは、お前をイジメていたジゲルと結婚してるし、お前の兄弟もみんな結婚して子供もいるよ。お前の両親も、お前はもう死んだものだと思って諦めているらしいよ』」

 ザドジの顔面が蒼白になった。変な汗もかいてブルブル震えている。

「そ、それでも俺は……、バケモンマスターになるしかないんだ!今更諦めて実家に戻ったって、ビカジュウが言ってたように居場所なんかない!こうして旅を続けていれば、またいつかの日かバケモンが流行りだす日が来るかもしれない!ビガジュウ!お前だって長い付き合いだし、もういい年だろう?旅を止めて俺の実家の村の近くの平原に戻ったって、居場所がないんじゃあないのか!?」

 激しく唾を飛ばしながら喚き散らした。

「『あぁ……、お前はずっと同じビガジュウを連れてると思ってたのかもしれないけど、実は僕はもう三代目のビカジュウで、初代のビカジュウは奥さんも子供も作って平原で幸せに暮らしているよ』」

 ザドジが口を開けて、ポカ~ンとしている。

 どうやらビガジュウは旅を何年か続けた後、別のビガジュウに引き継ぎをして故郷の平原へと帰っていたらしい。そして、そのビガジュウはすでに三代目になっているという事だった。ザドジはまったく気が付いてはいなかったようだ。

 ザドジの表情がどんどんと冷めていく。急に被っていたキャップを取り地面に叩きつけた。ザドジはハゲていた。

「や~めたやめた♪バケモンマスターになるのなんてや~めた♪なんか冷めちゃったし、これからはバケモンを使った見世物芸人として暮らしていこうかな♪」

「いや、アンタは追い剥ぎの罪で王都の警備兵に引き渡すから」

「やれっ!ビガジュウ!アイツ等をやらないと俺達は捕まってしまうぞ!」

「捕まるのはアンタだけよ」

 やはりビガジュウは、ザドジの言う事を聞こうとはしない。

「チッキショウ!こうなったらまた魔法で、ビガジュウを洗脳してやる!」

 ザドジは「ハッ!」と気合いを入れ、突き出した両の掌から、紅白の丸い(かたまり)のような物を作り出し、それをビガジュウに向かって飛ばした。ビガジュウはその塊を「ヒョイッ」と(かわ)すと、ザドジに向かって電撃を放った。ザドジはちょっとだけ焦げ、気を失ってしまった。

 

 こうしてザドジは、王都の警備兵に引き渡される事になった。ザドジが放った魔法を避けたときのビガジュウの動きは素早く、その後の攻撃も鋭いものだった。あれがザドジとの旅の成果だというのならば、ザドジは本当にバケモンの才能はあったのかもしれない。

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